「いざ、日本の祭りへ」(1) 三社祭と浅草ガイド

氏子、宮頭、宮出し……9つのキーワードで見る三社祭2012

社会 文化

三社祭を9つのキーワードで見ると、祭りの楽しみ方が違ってくる。浅草に生まれ育った氏子の心境、浅草に魅了されて移り住んだ人の想い、神輿を復活させ継承する技、本社神輿を陰で支える人の想いなど。そこに見えるのはただ一つ「祭りをいいものにしたい」。三社祭はそんな一人ひとりが物語の「主人公」なのだ。

宮頭:義理と人情にやせ我慢

「新門」代表取締役で浅草神社宮頭(みやがしら)・杉林仁一(すぎばやし・じんいち)さん。

神社に出入りするさまざまな人をまとめあげるのが宮頭。浅草神社では、土木・建築設計施工を行う株式会社新門の杉林仁一氏が務める。小説やテレビ、映画のモデルとしても知られる江戸時代の火消し、新門辰五郎から数えて七代目だ。

「宮頭に必要なのは義理と人情、それにやせ我慢。いつだって周囲とのつながりを大事にしながらみんなを見守る。頼まれればイヤとは言わないし、人の言うことはなるべく受け入れる。それが宮頭の器量です」

華やかに見える宮頭だが、三社祭における役割はまさに裏方。本社神輿を浅草寺の境内から各町会へと時間通りに送り出すため幾度もリハーサルを繰り返す。祭りの期間中は町会や浅草神社奉賛会と連携を密にして、3基の本社神輿を30分間隔で宮入りできるようにする。

初代新門辰五郎。杉林さんは新門辰五郎の名跡を継いで七代目。

「各町会すべて同じ条件で進めていかないと、『お前たちだけいい思いするのかよ!』となってしまう。みんなで時間を分け合うことが大切。誰かが損したり得したりといったことがあってはならない。

以前、神輿に乗って担ぎ棒が折れた事件があった。それで2008年の祭りが中止になったが、あれは効きました。みんな祭り好きだから、できなくなるのはさみしい。一般の担ぎ手や同好会に最低限の決めごとを守らせるのが私たちの役目です。安全対策としてバリケードを作っているのもそのひとつ」

一年中祭りのことで頭の中がいっぱいになってしまうという杉林さんは、ダイビングでリフレッシュしているという。

「海では無になれますからね。でも、死にかけたとき、頭に浮かんだのはやっぱり祭りのことでした(笑)。ダイビングも祭りも一人じゃできない。協力し合ってこそ、みんなが主役になれる。普段できないことができる祭りだからこそ、ルールを守って続けていくことが大事だね。

火消しに欠かせない纏(まとい)。各組によりさまざまな意匠が凝らしてある。月ごとに一番から十番(八番は除く)の担当が替わる。

九代目のお孫さんとともに。

 

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