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『画本 宮澤賢治』フォトギャラリー

文化 Books

イラストレーターの小林敏也さんが描く独創的な宮沢賢治の世界を一部紹介する。

「永遠に未完成」

岩手県生まれの童話作家・詩人の宮沢賢治が、その37年間の生涯で発表したのは、1924年、28歳の時に自費出版した童話集『注文の多い料理店』と詩集『春と修羅』の2冊のみ。その没後に膨大な未発表原稿が見つかり、『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『セロ弾きのゴーシュ』といった代表作の多くが出版された。見つかった原稿には、何度も加筆修正が加えられていた。貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って夜空の旅をする幻想的な『銀河鉄道の夜』は、死の直前まで手直しをしていたとみられ、「未完成」とされる。

賢治の最も有名な詩「雨ニモマケズ」は、亡くなる2年前の1931年11月、病床で手帳に鉛筆書きされたもので、後に字句を修正した痕跡もはっきりと残っている。生前「永久の未完成これ完成である」(農民芸術概論綱要)という言葉を残した賢治。その求道的な精神の軌跡と、豊かで幻想的なイメージに満ちた作品世界は、多くの研究者やアーティストを引きつけてやまない。

賢治と小林敏也の“コラボレーション”

小林敏也さんも賢治の世界に魅了された1人。賢治の精神世界や生き方よりも、まずその作品の面白さを伝えたい、という思いで取り組んできたのが、1979年にスタートした『画本(えほん)宮澤賢治』シリーズだ。以下に紹介する「画本」に興味を持ったら、ぜひ一度、実際の本を手に取って、紙の感触や装丁まで含めて楽しんでほしい。さまざまな楽しみ方ができるシリーズだ。

『どんぐりと山猫』

『どんぐりと山猫』の表紙

一郎は、山猫から届いたはがきに誘われてどんぐりたちの裁判に出席することになる。どんぐりたちは誰が一番偉いかで言い争っており・・・

『銀河鉄道の夜』

『銀河鉄道の夜』の表紙

終点サウザンクロス駅に向かう銀河鉄道の乗客の中には、氷山にぶつかって沈んだ客船に乗っていた人たちも・・・

『注文の多い料理店』

『注文の多い料理店』の表紙

鉄砲を担いで、白熊のような犬を2匹連れた2人の紳士が山の中でたどり着いたのは一軒の西洋料理店「山猫軒」。その扉には「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」と黄色い字で書かれていた・・・

『雪わたり』

『雪わたり』の表紙

四郎とかん子はきつねの幻燈会に招待され雪の野原を渡って森の中に入って行く・・・

『雨ニモマケズ』

『雨ニモマケズ』の表紙

雨にもまけず 風にもまけず 雪にも夏の暑さにもまけぬ 丈夫なからだをもち 欲はなく 決して怒らず いつもしずかにわらっている…

東に病気のこどもあれば 行って看病してやり 西につかれた母あれば 行ってその稲の束を負い 南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくてもいいといい
北にけんかやそしょうがあれば つまらないからやめろといい・・・

そしてシリーズは続く

小林さんの「画本」シリーズは1979年から2000年まで、パロル舎から15冊刊行されたが、同出版社が倒産、2013年から好学社がシリーズの復刊を続けている。賢治の生誕120周年に当たる今年7月、16 年ぶりの新作『ざしき童子(ぼっこ)のはなし』が好学社から刊行された。

『やまなし』 『土神と狐』の表紙

『セロ弾きのゴーシュ』 『オッベルと象』の表紙

『シグナルとシグナレス』 『かしわばやしの夜』の表紙

『蛙の消滅』 『ざしき童子のはなし』の表紙

構成・文=ニッポンドットコム編集部 写真提供=好学社

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