【Photos】池波正太郎が愛でたおせち

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鵜澤 昭彦 (撮影) 【Profile】

希代の美食家として知られる池波正太郎がこよなく愛した料理人がいる。「てんぷら近藤」を切り盛りする近藤文夫。彼は今も、料理人としての技を注ぎ、感謝の心とともに池波宅へおせちを届け続けている。

「てんぷら近藤」の「おせち」

一の重 祝肴と口取り

1. 紅白なます<千切りにした大根と人参、刻んだ干し柿を甘酢に漬け込む>
2. 葉つき金柑(きんかん)
3. 伊達巻き<白身魚のミンチに卵と砂糖を混ぜて焼いた卵焼きをすだれで巻く>
4. 黒豆
5. 百合根(ゆりね)の梅肉和え
6. 栗きんとん<裏ごししたサツマイモに蜜と水あめを入れて弱火で煮込み、甘く煮た栗を入れて混ぜ合わせる>
7. かまぼこ
8. 梅干しの甘露煮
9. 柚子の甘露煮
10. 菜の花の麹漬け(こうじづけ)<菜の花を酒粕に3、4日漬け込む>
11. 菊花蕪(きくかかぶ)

二の重 焼きもの 酢のもの

1. 昆布巻
2. 海老の具足煮(ぐそくに)<具足煮とは甲殻類を殻つきのまま煮る料理。「てんぷら近藤」では砂糖に濃口醤油を合わせて煮汁を作る>
3. かずのこ二種
4. 小肌(こはだ)の卯の花漬
5. 茗荷(みょうが)の甘酢漬
6. 小鯛の南蛮漬
7. 合鴨(あいがも)の治部煮(じぶに)<治部煮は石川県金沢市の伝統料理。焼き目をつけた鴨肉を水、酒、みりん、砂糖、濃口醤油を合わせたタレで煮込む>
8. ちしゃとうの白味噌漬<ちしゃとうとは球形のレタスの原生種。日本では京都で味噌漬けにされる>
9. 鰻(うなぎ)の山椒煮(さんしょうに)
10. あわびの旨煮
11. すけこの生姜煮(しょうがに)<すけことはすけとうだらの子。千切りにした生姜とともに煮込む>
12. ハマグリのしぐれ煮
13. ハゼの甘露煮
14. 子持ち鮎の煮びたし<煮びたしとは川魚を薄味の煮汁でゆっくりと煮詰めた料理。「てんぷら近藤」では子持ち鮎を煮びたしにする>
15. 鰆(さわら)の西京焼き<「てんぷら近藤」では京都産の白味噌にみりんを合わせたものに鰆を1週間ほど漬け込んでから焼く>
16. 川海老の旨煮

三の重 煮もの

1. 八つ頭の旨煮
2. 慈姑(くわい)の煮つけ
3. 黒皮かぼちゃの甘煮
4. 竹の子の土佐煮<かつおぶしを強めにきかせた出汁に薄口醤油を合わせた汁で竹の子を煮る>
5. 蕗(ふき)の煮もの
6. 京人参の煮もの
7. 百合根の甘露煮
8. 蕗の薹(とう)の揚げ煮<蕗の薹を油で揚げてから、酒、薄口醤油、みりんで煮汁がなくなるまで煮込む>
9. 煮しめ<ごぼう・こんにゃく・椎茸・れんこん・鶏肉・人参・さといもを、日本酒を入れた出汁で煮汁がなくなるまで煮込む>

正月の日本の食卓を彩るおせち料理。「おせちには何十品目の料理が入る。そのどれか一つをほめられると作り手は『他の料理は駄目だったのか』と思ってしまうんです。池波先生は、いつも『おいしかったよ、ありがとう』とだけ、言って下さいました」。

参考文献=『池波正太郎に届ける「おせち」』(筑摩書房)

 

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写真家。1962年生まれ、東京都出身。料理写真を中心に雑誌、広告で活躍中。

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