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夏の東京襲う「ゲリラ豪雨」

社会 暮らし

日本では近年、6月から8月にかけ、突発的に起こる局地的な大雨が多発し、事故や災害が相次いでいる。事前の発生予測が困難なことから「ゲリラ豪雨」とも呼ばれる。特に都市部で増えているといわれ、ヒートアイランド現象との関連も指摘されている。

6月の東京に“氷河”

2014年6月24日午後、東京都三鷹市と調布市の狭い地域で、大量の雹(ひょう)が住民を襲った。短時間の間に一部では数10センチも降り積もり、三鷹市では約40世帯が浸水。気象庁によると、まとまった雹が降るのは2007年以来のことで、夏にもかかわらず道路が“氷河”のようになったテレビ映像の光景が大きな関心を呼んだ。

翌25日には東京都北部で1時間あたり110ミリを超す大雨が降り、各地の道路が冠水。29日にも短時間だが東京都心が激しい雨に見舞われ、下水道のマンホールから雨水が高く吹き上がったり、落雷や冠水で一部私鉄がストップしたりするなど混乱が相次いだ。

発生は関東、東京周辺に集中

「ゲリラ豪雨」という言葉が日本で広まったのは2008年。この年は全国各地で局地的大雨による被害が特に多かった。7月28日には神戸市で都賀川の水位がわずか10分で1メートル30センチも上昇し、流された子どもら5人が死亡するという痛ましい事故が発生。8月5日に東京都豊島区の下水管内で、工事中の作業員5人が急な増水で亡くなったが、大雨・洪水警報が発令されたのは事故の起きた後だった。

普通の夕立と違うのは、その雨の強さと規模の大きさ。夕立は数10分ほどでやむ場合が多いが、ゲリラ豪雨は場合によっては時間雨量100ミリ近くの猛烈な雨が1時間以上も続く。都市部の下水道は一般的に最大毎時50-60ミリの雨量を想定してつくられているため、すぐに都市型洪水が発生することになる。

民間気象予報会社「ウェザーニューズ」によると、このような事前の発見・予測が難しい局地的な雷雨は、2013年夏(7月23日から9月30日)に日本全国で2923回も発生。地域別では面積の広い北海道の200回が最多だったが、その他では茨城県173回、埼玉県163回、千葉県158回など東京周辺の自治体が軒並み上位を占めた。(東京都は116回)

また、気象庁の研究チームが過去118年間の観測データを使い、東京における夏の夜(6-8月の午後5時から11時)の短時間降水量を調べたところ、①期間全体で100年あたり約50%の割合で増加している、②他の時間帯や季節では同様の傾向はみられなかった——ことが分かった。最近30年間のデータ分析によると、東京都心の夏の夕方における降水量は周辺地域より30%以上多いという。

ヒートアイランド現象が関連との見方も

これらの研究結果や各種データから、東京周辺でのゲリラ豪雨多発はヒートアイランド現象が主因との見方が出ている。

ヒートアイランド現象は①エアコン、自動車などによる人工排熱量の増加、②人工物や道路の舗装面増加と、それに伴う地表面からの水分蒸発量の減少、③高層ビルの林立による海風流入の遮断——などにより、大都市中心部の気温が周辺より際だって高くなる現象。東京では夏の熱帯夜日数の増加や、熱中症による搬送患者数増などが大きな問題としてクローズアップされている。

都心の空気が温まって急激な上昇気流が生じ、そこに鹿島灘(東京の東側)東京湾(南側)や相模湾(南西側)から湿った空気が引き寄せられ、積乱雲が発達してゲリラ豪雨を引き起こす——。こんなメカニズムに加え「東から吹く海風が高層ビルをう回してぶつかる都心西側の地域で局地的豪雨が発生しやすくなっている」と考える研究者もいる。

気象庁によると、2013年にアメダス(国内約1300カ所ある無人観測施設)が観測した1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の発生回数(1000地点あたり)は237回。この値は10年あたり21.5回増えており、「統計期間1976-2013年で増加傾向が明瞭に現れている」という。一方、地球温暖化との関連については、気象庁は「統計期間が短いため、影響の有無については現時点では明らかではない」としている。

タイトル写真:雹(ひょう)が降り積もった東京都調布市の住宅地の道路=2014年6月24日(時事)

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