法人税減税、2015年度から実施へ
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改定成長戦略の重要な柱
わが国の法人税率は、主要国に比べて高い水準にある。安倍首相は今年1月、スイスで開かれたダボス会議(世界経済フォーラム)で講演した際、「企業が蓄えた資金を設備投資や研究開発、賃上げなどに振り向けられるようにするため、今年はさらなる法人税改革に着手する」と述べ、法人税減税を“国際公約”した。
一方、法人税減税を慎重に検討してきた自民党の税制調査会(野田毅会長)は6月3日、安倍晋三首相に法人税改革案を提出。この中で、「法人税減税に見合う代替財源の確保」を前提に、法人実効税率引き下げを容認する姿勢を示した。
主要国で極めて高い日本の法人税
財務省が作成した「法人所得税の実効税率の国際比較」によると、わが国の法人税は35・64%(東京都の場合=国税23・71%、地方税11・93%の合計)である。これは主要国の中では、米国の40・75%(カリフォルニア州の場合)に次いで高水準。フランスの33・33%(国税のみ)、ドイツの29・55%(全ドイツ平均=国税15・83%、地方税13・72%)などに比べても高い。シンガポールは17・00%である。
経済界は3年で20%台への引き下げ要望
各国の法人税率は近年、低下傾向にある。日本も1980年代半ばをピークに徐々に引き下げてきた。経済のグローバル化に伴い、企業がより税率の低い国に移動しコストを抑える動きを見せているためだ。国によっては法人税率の引き下げで企業誘致を目指す「タックスヘブン政策」を採用するところがある。先進国でも自国企業が国外流出するのを避けるため法人税を引き下げるなど、世界的な法人税引き下げ競争が展開されている。
経団連の榊原定征会長は、6月3日の就任記者会見で、法人税減税について「来年度から減税を始め、向こう3年かけてまず20%台を実現してほしい」と述べ、将来的には経済協力開発機構(OECD)諸国並みの25%を目指すよう求めている。
恒久財源の確保が前提
しかし、法人税減税の最大の課題は、代替財源をどう確保するかだ。法人税引き下げ分だけ財源が減るため、財政健全化が至上命題の日本ではとりわけ財源確保が不可欠だ。麻生太郎財務相は、財源なき法人税引き下げに難色を示してきたが、自民党税調の提案を受けて、「税収増分を財源に充当するのではなく、法人税引き下げ分を賄える代替財源(恒久財源)が確保されるなら、来年度からの実施を容認する」との考えを示した。
自民党税調は、恒久的な財源確保のため、課税範囲の拡大など制度的に担保された方策を探っており、例えば赤字企業も税金を負担する「外形標準課税」の拡大や、特定業種向けに税負担を軽減している租税特別措置の縮小、などを検討していく。
カバー写真は、東京・丸の内のオフィス街(提供=時事)