日本初の国際防衛会議・機器展示会が横浜で開催 武器輸出3原則改変で本格的な動き始まる

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海上防衛関連の会議と装備・機器展示会が5月13日から3日間の日程でコンベンションセンター「パシフィコ横浜」で開催された。「The MAST Asia 2015」と銘打ったイベントを企画した英国の民間団体MASTコミュニケーションズによると、防衛関係の国際会議・展示会が日本で開催されるのは初めてだという。

基調講演を行うトーマス米第7艦隊司令官

政府関係者や軍人を含む代表団の総数は1000人、来訪者は2000人規模になると見込まれる一方、3000平方メートルの展示スペースには100あまりの民間会社や政府機関などが展示に参加した。安倍晋三政権の「積極的平和主義」推進などの動きを反映し、内外の日本の防衛産業・技術への関心の高さを示した。

MAST代表のウォーレン・エッジ氏は会議の前日ニッポンドットコムに対し「この実績のあるイベントをついに日本に持ち込めたことについて興奮しています」などと緊張気味に語っていた。

森本敏元防衛大臣が議長として会議の開幕を宣言。続くあいさつでは海洋資源と海上貿易の重要性を強調した上で「大規模な埋め立てなど現状を変え、緊張を高める一方的な行動を懸念している」と述べ、中国が南シナ海で行っている岩礁の埋め立て工事に対して懸念を表明した。「武力による威嚇、強制、行使を通じた領有権の主張に対しては強く反対する」とも述べた。

自衛隊の武居智久・海上幕僚長や米国のロバート・トーマス第7艦隊司令官らがアジア・太平洋地域の軍事情勢などについて基調講演を行い、その後、海上、海中、航空・宇宙分野など各部門に分かれた専門家によるプレゼンテーションに入り、展示ブースも公開された。

日本の救難飛行艇や「そうりゅう」型潜水艦も披露

MASTによると、出展者には日本の主要防衛産業関連会社13社すべてが含まれている。

このうち新明和工業は3メートルクラスの波高での離着水も可能と世界最高水準の性能を有しているといわれる救難飛行艇「US-2」を模型やビデオで紹介。インドがこの飛行艇に関心を示している。同国政府と新明和との調整に当たっている在日インド商業会議所のタルミンダー・シング事務局長も展示場を訪れ、この飛行艇は「信頼性が高い」などと指摘、評価していた。

オーストラリアが導入に意欲を示している海上自衛隊の最新鋭通常動力型潜水艦である「そうりゅう」型の模型も展示された。水中排水量4200トンの大型潜水艦は三菱重工業と川崎重工業が交互にほぼ毎年建造、海自に納入している。

安倍政権は2014年4月、それまでの実質的に武器の輸出を米国などに限定した「武器輸出3原則」に代わる「防衛装備移転3原則」を閣議決定、一定の条件下で武器輸出を解禁する方針に大きく舵を切った。この潜水艦や飛行艇が輸出案件の第1号になる可能性がある。

中国の台頭で期待される日本の役割

中国は、東シナ海の尖閣諸島をめぐり日本とにらみ合いを続ける一方、南シナ海の90%近くの領有権を主張、同海域にある岩礁の埋め立て作業を急ピッチに進めている。岩礁に軍用滑走路を建設中であるともいわれ、中国は急速に同海域での潜在的軍事力を向上させており同じく領有権を主張するフィリピンなど近隣諸国との緊張が高まっている。

この中国の動きをにらみながら、日本と同じく同盟関係にある米国とフィリピンはこのほど、大規模な合同軍事演習を実施。日本も今月に入って、フィリピンとマニラ西方海域で海自の護衛艦2艇、フィリピンのフリゲート艦1隻が参加する初の合同訓練を行った。

新しい安保法制が国会で議論される中、日本の安保体制が「周辺事態」への対処から地理的制限を外した「重要影響事態」への対応を重視する方向へと大きく変化しようとしている。日米両国は先月、新たな「日米防衛協力のための指針」に合意した。両国はこの指針の下に「平時から緊急事態までのあらゆる段階における切れ目のない対応を可能とする、平時から利用可能な、政府全体にわたる同盟内の調整のメカニズムを設置する」(外務、防衛相による共同発表)と宣言。また、「平和維持活動、海洋安全保障及び後方支援等の国際的な安全保障上の取組に対して一層大きな貢献を行う」とも強調している。

このため、中国と近隣諸国との衝突など万一の緊急事態の発生に際して米国の後方支援などの分野で日本に対して何らかの役割が期待される可能性も高まりそうだ。

執筆=nippon.com編集部・杉本 等

カバー写真=インドが導入を検討している救難飛行艇「US-2」の展示ブース