「いざ、日本の祭りへ」(1) 三社祭と浅草ガイド

“江戸っ子”気分でぶらり浅草

江戸庶民の義理人情が今も残る浅草。江戸随一のハイカラな街として、当時最先端の食文化や流行グッズを発信する粋なお洒落スポットでもあった。いざ、江戸っ子が大好きだった“浅草ワールド”へタイムスリップ!

荒井文扇堂:余白を大胆に生かした江戸のデザイン

あおげば涼しい風を送ってくれる扇子。普段使いはもちろん、歌舞伎や舞踊、落語など伝統芸能の小道具としても欠かせず、古来より日本人に親しまれてきた。

120年余りの歴史をもつ扇子専門店「荒井文扇堂」は、歌舞伎役者や舞踊家、落語家などに多くのご贔屓をもつ扇子専門店。扇子職人としてデザインを手がけ、その技術を伝えている四代目ご主人、荒井修さんはこう語る。

「扇子には、もともと”結界(けっかい)”の意味があります。茶席で正座をし、自分の膝前にたたんだ扇子を置くのは、扇子を境に上座と下座を隔てるということ。扇子は涼をとるだけではなく、日本文化にも深く浸透しているんです」

江戸の扇子は、大胆な余白の生かし方などデザインが秀逸。龍の頭と尾だけを扇子の両端に描き、胴体を隠すことでその巨大さを表現したりする。ゴチャゴチャ描かずに、楽しませることが肝心、と続ける荒井さん。歌舞伎をモチーフにした絵柄も人気で、観に行く芝居の内容に合わせて扇子を誂える人もいる。

「浅草は、昔から江戸で一番の盛り場。浅草寺や浅草神社に全国から参拝客が集まったのもにぎわいの理由です」。下町の洒落文化とともに、荒井文扇堂の扇子も愛されてきた。

柿渋で幾度も繰り返し染めて強度を増した「渋扇」。昔は侍が使用するものだった。つややかで美しい。小3040円(女性用)、大3460円(男性用)。

歌舞伎をモチーフにした「持扇」(普段使い用の扇子)。左は中村勘三郎が演じた「法界坊」10300円、右は「弁天小僧菊之助」9500円。

オリジナル版画の「江戸一文字うちわ」550円。うちわは扇子と違い、コンパクトにたたむことができない。

四代目ご主人、荒井修さん。独創的なデザインも手がける扇子職人だ。

幾本もの骨でできた扇子を「要」と呼ばれる金具で1点に留める。熱した道具ではさんで調整。

扇子づくりに使う道具。左から折り型紙、紙断ち包丁、親摘(おやつみ)、平口あけ、拍子木(ひょうしぎ)。

荒井文扇堂 住所/雷門店:東京都台東区浅草1-20-2 TEL/03-3841-0088 営業時間/10:30~18:00 定休日/毎月20日過ぎの月曜・1点からオーダーメイド可能 英語の解説/なし 価格/「持扇」1100円~(手描きは女性用8200円~、男性用8900円~)

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