「いざ、日本の祭りへ」(1) 三社祭と浅草ガイド

“江戸っ子”気分でぶらり浅草

江戸庶民の義理人情が今も残る浅草。江戸随一のハイカラな街として、当時最先端の食文化や流行グッズを発信する粋なお洒落スポットでもあった。いざ、江戸っ子が大好きだった“浅草ワールド”へタイムスリップ!

浅草今半:最高の黒毛和牛を、正統のすき焼きで

すき焼きの名店として知られる「浅草今半」。1895年、当時まだ珍しかった牛肉を鍋に仕立てて商売を始めたところ、たちまち人気店となった。その創業者のひとり、岡山県出身の髙岡伴太郎という人が1928年に独立し、国際通り沿いに出したのれん分けの店が現在の「浅草今半」。五代目ご主人の髙岡修一さんはこう語る。

「創業当時、政府公認の食肉処理場が芝区白金今里町にあり、ここから牛肉を仕入れていたことから、”今里町”の”今”をとって店名につけたそうです。つまり、信頼できる上等な肉だけを扱っています、という誇りが店名に込められています」

上質な素材を追い求める姿勢は、今も変わらない。牛肉は、神戸牛をはじめ、厳しい目で選び抜かれた黒毛和牛のメス牛の肉のみを使用。職人の手により製造されているつややかな南部鉄器の鍋に、割下を流し、牛肉を焼き始めると、ジュジューッという音とともに香ばしさが室内に立ち込める。仲居さんが目の前ですき焼きをつくり、最も美味しい焼き加減のところを取り分けてくれるのもうれしい。

「浅草は、現在の東京で最も江戸を感じることができる土地。観音信仰の寺町文化が色濃く伝えられています。祭りの日にはオーダーメイドの半纏(はんてん)や和服を着るなど、江戸スタイルのお洒落をして歩くのも楽しいですよ」

江戸のにぎわいを体感できる下町で、特別な美食を楽しみたい。

五代目ご主人の髙岡修一さん。「浅草今半の名物土産となっている牛肉の佃煮(つくだに)は、祖父(三代目)が考案したんです。祖父はフードジャーナリストとしても活動していました」。

「極上霜降りすき焼御膳」1人10500円(写真は2人分)。細やかに入った霜(脂)は、芸術品のような美しさ。先付、5点盛りの前菜、ご飯、赤出汁、香の物がつく。

1.熱した南部鉄鍋に割下(醤油、みりん、砂糖を合わせたもの)を少し流す。鉄鍋が半分見えなくなるぐらいの量が目安。 2.割下が熱される間に、生玉子をはしで混ぜる。円を描くように軽く混ぜ、けっして泡立ててはいけない。 3.熱い鍋肌(割下のない部分)に肉を2枚置き、ある程度焼いてから、その旨みを割下に移すように絡めて引き上げる。 4.肉の旨みが溶け込んだ割下に野菜や豆腐を並べる。太く甘みの強いネギ、もっちりとした食感の丁子麩など、1品ずつ厳選された素材。

さらに肉も入れ、ほどよく火が通るように煮ていただく。煮過ぎず、ほんのり肉にピンク色が残る程度でよい。

仲居さんがちょうどいい焼き加減のところを、一人ずつ取り分けてくれる。

浅草今半 住所/国際通り本店:東京都台東区西浅草3-1-12 TEL/03-3841-1114 営業時間/11:30~21:30(LO20:30) 定休日/無休・予約あり 英語のメニュー/あり 平均予算/昼3000~4000円、夜1万円 http://www.asakusaimahan.co.jp

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