「いざ、日本の祭りへ」(1) 三社祭と浅草ガイド

“江戸っ子”気分でぶらり浅草

江戸庶民の義理人情が今も残る浅草。江戸随一のハイカラな街として、当時最先端の食文化や流行グッズを発信する粋なお洒落スポットでもあった。いざ、江戸っ子が大好きだった“浅草ワールド”へタイムスリップ!

前川:200年の歴史を継ぐ、江戸スタイルのうなぎ料理

うなぎ「前川」の創業は19世紀初頭。川魚問屋を営んでいた勇右衛門という人が、屋台スタイルの店を隅田川沿いに構え、うなぎ料理と酒を出したことに始まる。

「かつては船で訪れるお客様が多かったそうです。特に花見の季節は、隅田川を見ながら前川のうなぎで一杯、というのがこの界隈の定番コースで、男女の逢瀬の場所としても人気だったと聞いています。川の景色が美しく、ロマンチックな場所だったからでしょう」とは六代目ご主人の大橋一馬さん。

現在のようなうなぎの蒲焼が食べられるようになったのは、江戸時代中期。西日本に比べて関東のうなぎは皮が厚いため、江戸ではそのまま焼かず、やわらかく蒸してからタレをつけて焼く調理法が一般的になった。もちろん前川もこの江戸スタイル。天然ものに近い環境で育てた「坂東太郎」という上質な養殖うなぎを使っているが、5〜11月は天然ものも入る。味の決め手は、代々継ぎ足しながら熟成させてきたタレ。1923年の関東大震災の際には、四代目がタレつぼを大切に抱えて逃げたという逸話も残る。

大橋さんは「隅田川越しに見えるのは、2012年6月に開業した電波塔の東京スカイツリー。文化も風景も、古いものと新しいものが一体となっているのが浅草の魅力だと思います」と語る。

江戸時代から受け継がれたうなぎ料理とともに、新旧融合したユニークな浅草の風景を楽しめる。

六代目ご主人の大橋一馬さん。客席の窓の外には隅田川越しに東京スカイツリーを望める。

「うな重」4095円から。うなぎは坂東太郎を丸ごと1匹分使用。注文後蒸し始めるので、料理が出るまで30分ほどかかる。「キモ焼き」1260円などを肴(さかな)に、酒を飲みながら待つのもよい。

3回タレにくぐらせて焼く。串を打たれたうなぎから、軽く焦がした香ばしさが漂う。

代々継ぎ足し熟成させたうなぎのタレ。焼いたうなぎの旨みが溶け込んでいる。

前川 住所/東京都台東区駒形2-1-29 TEL/03-3841-6314 営業時間/11:30~21:00 定休日/無休・予約可 英語のメニュー/あり 平均予算/5000円(コース料理は9450円~) http://www.unagi-maekawa.com/

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