「いざ、日本の祭りへ」(1) 三社祭と浅草ガイド

“江戸っ子”気分でぶらり浅草

江戸庶民の義理人情が今も残る浅草。江戸随一のハイカラな街として、当時最先端の食文化や流行グッズを発信する粋なお洒落スポットでもあった。いざ、江戸っ子が大好きだった“浅草ワールド”へタイムスリップ!

駒形どぜう:せっかちな江戸っ子が好んだスタミナ食

江戸庶民に親しまれていた食材の一つが「どじょう」。頭から尾まで丸ごと食べるどぜう鍋は、栄養豊富なスタミナ源として食されてきた。

1801年創業の「駒形どぜう」は、そんな江戸の料理と雰囲気を楽しめる貴重な名店。越後屋助七が浅草寺の参拝客でにぎわう駒形にめし屋を開き、「どぜうなべ(どじょう鍋)」を出したところ、その美味しさから大人気となった。初代がどじょうを「どぜう」と表記したのは、4文字よりも3文字のほうが縁起がよいとされたため。七代目ご主人の渡辺隆史さんはこう語る。

「生きたどじょうに酒をかけ、酔ったところを甘味噌に入れてやわらかく煮込みます。骨までやわらかいんですよ。江戸時代のレシピをそのまま守っています」

1964年に建て替えられた現在の建物は、江戸時代の姿をそのまま再現。店の前の旧日光街道は、かつて江戸幕府に出仕する地方の大名が往来した道。そのため、覗き見できないように、前面を黒漆喰(しっくい)で塗り固めた窓のない建築物となっている。

「浅草はにぎやかな土地ですが、夜はとても静か。昔からの馴染みの人が多く、地域のつながりの強さを感じるのが魅力です。三社祭の日は特別で、朝から晩まで街全体がうきうきとした空気に包まれます」と渡辺さん。江戸っ子に愛された栄養満点のどぜう鍋こそ、エネルギーあふれる下町文化の名物料理だ。

1階の座敷は、江戸の雰囲気を色濃くとどめる。

1907年当時の店舗。現在の建物とほぼ変わらない造りで、店の前には荷運び用の牛をつなぐ場所があった。

「どぜうなべ」1750円。火鉢に鉄鍋をかけると、よい香りが立ち上る。たっぷりのネギとともにいただく。鉄鍋が浅いのは「江戸っ子はせっかちなので、すぐ温まって食べられるように」とのこと。

七代目ご主人の渡辺隆史さん。「どぜうなべは江戸のファストフード。昔は行商の人が早朝、市場で儲けたお金で食べに来ることも多かったそうです」。

どじょうは大分県の静謐な地下水で養殖。生きたまま店に届けられるので、新鮮そのもので風味も満点。

駒形どぜう 住所/東京都台東区駒形1-7-12 TEL/03-3842-4001 営業時間/11:00~21:00LO 定休日/無休・予約可(4名~)英語のメニュー/あり 平均予算/昼3000円、夜5000円 http://www.dozeu.com/

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