変貌し続ける大都市、TOKYO

森ビルに見る東京再生の試み

経済・ビジネス

東京は常に変貌し続ける街だ。高層ビルが林立する都心部の景観は数十年前の東京と同じとは思えないほど変化している。東京の中心エリアで都市改造プロジェクトを手掛けてきた森ビルの歴史を踏まえ、その変貌ぶりを紹介する。

森ビルの方向性を変えたアークヒルズ

赤坂と六本木の間にある「アークヒルズ」は、森ビルのヒルズ・シリーズの第一弾であり、最初の立体緑園都市だ。アーク(ARK)は「赤坂」と「六本木」の「KNOT(結び目)」という意味を込めて、それぞれの頭文字を取ったネーミングだ。1986年に完成したこのプロジェクトは、東京に海外投資を呼び込む目的で建設された、立体緑園都市構想の東京における最初の試みだった。

メインビルは中間で折れ曲がった四角いタワーで、敷地内には「アークタワー」という豪華マンション、オフィス、商業施設、レストラン、テレビスタジオ、コンサートホール、屋上庭園がある。「ANAインターコンチネンタルホテル東京」の入る三角形のタワーもこの一角をなしている。これは、ニューヨークのロックフェラーセンターと同じパターンであり、民間企業の開発にもかかわらず、敷地内には広い公共スペースがあり、生活、仕事、レジャーという多方面にわたる機能を提供している。

左:アークヒルズのメインビル。右:シンボルマークのついたアークヒルズの入り口

アークヒルズは、森ビルの方向性を決定的に変えたプロジェクトだった。これを機に、同社は単なる不動産会社から、「都市ディベロッパー」にビジネスの重心を移していく。

アークヒルズは着想から83年11月の着工まで14年、竣工まで実に17年の歳月を費やしたプロジェクトだった。この間、森ビルは第15森ビルまで建設し、不動産業を継続していた。この事業収益が、アークヒルズ・プロジェクトを支えた。同社は14年をかけて、近隣の地権者や住民を説得した。最終的には全権利者が所有していた土地の80%を、「地価は上がり続けるものだ」というバブル崩壊前の土地神話がまだ生きている時期に高値で取得する結果となった。幸運なことにこの地域の土地価格は、その後の経済停滞にもかかわらず上がり続けた。

左:アークヒルズ中央広場。右:居住ゾーン「アークタワー」への入り口

□アークヒルズ

  • 建設年:1986年
  • 住所:〒107-6001 東京都港区赤坂一丁目12-32
  • 最寄り駅:地下鉄南北線溜池山王駅または六本木一丁目駅

新たなシンボル「六本木ヒルズ」

アークヒルズで方向転換を図った森ビルは、「六本木ヒルズ」で立体緑園都市構想を一歩押し進めた。大型複合施設の建設を通じて、低下の一途をたどる東京の国際競争力を向上させようという狙いがあった。同施設の面積は11.6ヘクタールで、当時国内では最大の市街地再開発プロジェクトだった。

六本木ヒルズ建設のために、森ビルは近隣の地権者や住民、計400人との交渉を経て、共同開発への同意を取り付ける必要があった。ここでもアークヒルズと同様、その交渉に14年、竣工までに17年の歳月を要した。

六本木ヒルズの一般公開は2003年4月25日。敷地内では高さ238メートル、54階建ての「森タワー」が際立った存在感を示している。同タワーの後方には「グランドハイアット東京ホテル」。両側からホテルを挟むようにして「けやき坂コンプレックス」と「六本木ヒルズクロスポイント」を配する。1階下はエンターテインメントゾーンである「六本木ヒルズアリーナ」で、その向かいにはテレビ朝日の本社と池を擁した「毛利庭園」がある。けやき坂通りに沿って立つ合計6本の超高層ビルは居住用で、とりわけ背の高いツインタワーが際立っている。

左:地下鉄(左の建物)から六本木ヒルズ「ノースタワー」(右)へのアクセス「メトロハット」。右:居住用ツインタワー

平日の六本木ヒルズ訪問者数は、施設内で働く人を含めて11万人にも上る。六本木ヒルズのコンセプトは、「東京の中でレジャーと文化生活を推進する中心となること」。その思想に沿って、森タワー内には、「森美術館」が設けられ、今日では「国立新美術館」や「サントリー美術館」(東京ミッドタウン内)とともに、六本木エリアにおける美術トライアングルの一角を占めている。六本木ヒルズはまた、毎年夜通しで開催される現代アートの一大イベントである六本木アートナイトの主要会場にもなっている。

左:毛利庭園とテレビ朝日本社ビル。右:けやき坂通り

□六本木ヒルズ

  • 建設年:2003年
  • 住所:〒106-6108 東京都港区六本木6-10-1
  • 最寄り駅:地下鉄日比谷線または地下鉄大江戸線の六本木駅

グローバルビジネスの中核を目指す虎ノ門ヒルズ

国会通りから見た虎ノ門ヒルズの森タワー

2014年、虎ノ門一丁目に「虎ノ門ヒルズ森タワー」が完成した。六本木ヒルズが文化発信に重点を置いているのに対し、虎ノ門ヒルズは国際ビジネス都市・東京の中核を担う存在となることを目指している。

虎ノ門ヒルズは、複合施設を構成する4つの建物(うち3棟は建設中)と地下鉄新駅を合わせた総面積が7.5ヘクタールの大型プロジェクトだ。高さ247メートル、52階の威容が、ニッポンドットコムのオフィスからすぐ近くの場所にそびえ立っている。東京で最も注目されているこのエリアは、約60年前に森ビルが産声を上げた場所のすぐ近くだ。

□虎ノ門ヒルズ森タワー

  • 建設年:2014年
  • 住所:〒105-6301 東京都港区虎ノ門一丁目23番1号-4号
  • 最寄り駅:地下鉄銀座線虎ノ門駅

取材・文・写真=ダニエル・ルビオ(ニッポンドットコム多言語部)原文スペイン語

バナー写真=東京タワーから見た六本木ヒルズ

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