行ってみたい12のトイレ
Guideto Japan
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日本のトイレには“おもてなし”が詰まっている
土産物としても人気のハイテク温水洗浄便座を代表に、行き届いた清掃、替えペーパーや便座クリーナの常備など、訪れた外国人の多くに絶賛されている「日本のトイレ」。日本人の細やかな心遣いと技術力の高さが、快適な空間を生み出し、今や観光の目玉の一つとも言われている。今回は、日本ならではの突出した個性を放ち、一度は実際に利用してみたくなる「変わり種トイレ」を紹介していく。
選者のマリトモさんは、10年以上にわたり、日本各地のトイレを300カ所以上も取材している。「トイレハンター」の異名も持ち、249のトイレを紹介した『ニッポンのトイレほか』(アスペクト刊)を出版し、雑誌やテレビ、webサイトなどでも活躍中だ。
「トイレは、老若男女の誰もが、1日に何回も利用する必要不可欠なものです。また、唯一ひとりきりになれるプライベートな空間であり、貴重な場所ともいえるでしょう。そうしたトイレを進化させたのは、日本人の“おもてなし”の心だと思います」(マリトモさん)
例えば、レストランなら当然料理に力を入れ、次に食器や内装、外装となる。よほどの高級店以外、トイレに細心の注意を払っている国は少ない。しかし、日本では、いくら味が良くても、トイレが汚い店ははやらない。
「飲食店のトイレは、そのお店のモチベーションが反映されています。食事の時間を楽しんでいても、合間に行くトイレが汚くては、せっかくの雰囲気を台無しにしてしまうと日本人は考えるからです。そうした細部までこだわる考え方は、飲食店以外でも同じです。世界に誇るべき“おもてなし精神”が、トイレ空間にも詰まっているのです」(マリトモさん)
1.「金ぴかトイレ」
店のコンセプトを大切にし、トイレまで徹底した雰囲気作りをしているのが、極彩色のデカダンな空間で話題の東京都新宿区歌舞伎町「ロボットレストラン」。
「この『金ぴかトイレ』は何度も改装され、進化を続けているようです。この写真は開店当初のもので、今や貴重な資料となっています。お店の総工費はなんと100億円にも上り、トイレにもかなりの金額を費やしているそうです。妥協のない空間作りには脱帽ですね」(マリトモさん)
2.「庭園トイレ」
和食料理店ということで、トイレまで和風の庭園にしてしまったのが、福井県越前海岸の「レスト有情(うじょう)」。
「このトイレは『日本庭園で用が足せる』と大人気。自慢の魚料理だけでなく、トイレの素晴らしさも集客につながってるそうです。七つあるトイレには、それぞれのコンセプトに沿った名前まで付けられています」(マリトモさん)
3.「水族館トイレ」
トイレがまるで水族館のような兵庫県明石市の林崎松江(はやしさきまつえ)海岸前にある「ヒポポパパ」(旧「ムーミンパパ」)。こちらは海が見えるレストランということで、トイレでも海の中にいる気分を提供している。
「シチュエーションに圧倒されて、思わず鍵を掛け忘れる方が多いらしく、鍵付きの扉が二重に設置されています。このトイレは、水圧でガラスが割れたり、泳いでいる魚が死んでしまったりと、何度も失敗を繰り返した末に完成しました。工費とメンテナンス費を合わせると、総額2000万円以上になるそうです」(マリトモさん)
4.「滑空トイレ」
スキージャンプ台に腰かけているようなスリルを味わえるのが、長野県斑尾高原のゲレンデに建つ「レストランハイジ」のトイレ。
「長野オリンピックのジャンプ台からの景色を印刷したステッカーが、壁一面に貼ってあります。さらに、足下にはスキー板の写真があって、標高差136メートル、最大斜度37.5度をリアルに体感できるのです。ゲレンデにあるレストランで、冬はスキーウェアのまま腰かけられるため、よりジャンパー気分が味わえます」(マリトモさん)
5.「海上トイレ」
東京湾横断道路「東京アクアライン」にあるパーキングエリア「海ほたる」のトイレは、その立地条件を存分に生かした設計。
「日本唯一の海上パーキングエリアにあるトイレだけに、まるで大海原に向かって用を足しているような開放感が味わえるでしょう。女性用は、小便器部分が手洗い場となっています」
6.「ガーデントイレ」
千葉県市原市の無人駅「飯給駅」にある「ガーデントイレ」は、200平方メートルと個室では「世界一大きいトイレ」をコンセプトに作られた。
「正式名称は『Toilet in Nature』で、市原市の豊かな自然を感じながら用を足せるようにと、こうした設計になったそうです。女性用だけなので、残念ながら男性は使用できません。一応、カーテンが閉められるようになっていますが、屋外ということもあり開放感がありすぎて、用を足すのに躊躇(ちゅうちょ)してしまいます(笑)。治安の良い日本だからこそ実現できたトイレなのかもしれません」(マリトモさん)
7.「ペーパートイレ」
壁一面にトイレットペーパーが並ぶのは、京都市左京区にある「ももじろう今出川百万遍店」。予備ペーパーが大量に常備されることで有名な日本のトイレでも、別格の数だ。
「女性用トイレは全部で81個が、きれいに三角折りされて並んでいます。実は、発注ミスでこんなにホルダーが届いてしまったそうですが、それを返品せずに並べてしまうという発想が粋ですよね。ただ、業務以外にも頻繁にトイレをチェックしては三角折りをする店員さんは大変そうです(笑)」(マリトモさん)
8.「ニッポン最古トイレ」
現存する日本最古のトイレが、京都市東山区にある東福寺の「百雪隠(ひゃくせっちん)」。幅14メートル×長さ35メートルと巨大で、重要文化財に指定されている。そのため、現在は見学のみで、残念ながら使用はできない。
「100人が一度に用を足せるという東司(とうす、トイレの意)です。昔は、ふん尿を肥料として売ることができたので、寺院にとっては大切な収入源でした。そのため、使用時には多くの作法が決まっていて、『禅僧には用便も修行の一つ』と言われていたそうです」(マリトモさん)
9.「修行トイレ」
静岡県袋井市にある禅の修行道場「可睡斎(かすいさい)」のトイレには、便所を清める功徳を持つ烏芻沙摩明王(うすさまみょうおう)が祀(まつ)られている。
「ここは珍しい男女兼用のトイレです。仏像だけでなく、さい銭箱も置かれています。海外では、チップが必要なトイレも多くあります。その感覚でおさい銭を納めれば、ご利益があるかもしれないのです」(マリトモさん)
10.「ご当地トイレ」
海外にも展開する人気ラーメン店「一風堂」では、地域の特色をトイレに盛り込んでいる店舗がある。愛知県名古屋市の「本町通り店」では、愛知を本拠地とするトヨタ自動車に敬意を表した内装となっている。
「単純に自動車関連グッズを並べるのではなく、本物のエンジンをぶった切り、オブジェとして壁一面に美しくディスプレイする発想は素晴らしいです。また、日本産ジーンズ発祥の地・倉敷店は壁紙がデニムになっているなど、一風堂さんはトイレにも妥協がない。『トイレぴかぴか掃除術』と題して、スタッフ一同でトイレ掃除を徹底しているそうです」(マリトモさん)
11.「お部屋トイレ」
岡山県岡山市にある豆腐チゲ専門店「スンドゥブ・トーフハウス」には、「シアトル出身の80年代が大好きなピーター(27歳)の部屋がトイレになった」というコンセプトの下に作られた、店主の遊び心が詰まったトイレがある。
「おいしいだけの店でなく、客さんにお土産話も持ち帰ってほしいと考えたそうです。細部に至るまで徹底した作り込みで、逆に『部屋ではなく、本当にトイレなの!?』という違和感とともに、トイレの概念が覆される感じが面白いですね」(マリトモさん)
12.「銭湯トイレ」
大分県大分市の名物料理「琉球丼(りゅうきゅうどん)」を生み出したことで有名な「二代目与一」。ここのトイレには富士山を中心にした風景が、まるで銭湯画のように描かれている。
「こちらは、トイレとアートの融合で町おこしを図ったアートフェスティバル『おおいたトイレンナーレ2015』の出展作です。トイレと同じ水廻りである銭湯で富士山の絵を眺めながらお湯に浸かるように、リラックスして用が足せそうですね」(マリトモさん)
【書籍情報】
『ニッポンのトイレほか』著者=マリトモ
出版社: アスペクト
価格:¥1000(税別)
言語: 日本語
写真:マリトモ『ニッポンのトイレほか』(アスペクト/2013年)
(バナー写真は「ガーデントイレ」)
文:ニッポンドットコム編集部
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