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世界で最も有名な忍者:初見良昭氏が現代に伝える「武道の極意」

文化

技の伝承を求め、入門する外国人が後を絶たない「武神館」。世界各地から千葉県野田市の道場に足を運び、「戸隠流忍法」宗家・初見良昭(まさあき)氏(86)に教えを仰ぐ。そこで目にしたものは、忍者映画や忍者アニメで知るのとは一味も二味も違う、奥深い世界だった。

本当の忍術、本当の武術の極意を伝える

稽古の合間の休憩時間になると、何やら楽しそうな雰囲気で、弟子たちが初見氏の前に列を作り始めた。すると初見氏は、一人ひとりに言葉をかけながら、差し出された掛け軸や色紙に、なめらかな手つきで次々と書画を描いていく。弟子たちはとても大事そうに持ち帰っていく。

武神館の最高段位は十五段であり、この日は五段昇級をかけたテストも行われた。竹の棒の周りにクッションを巻いて皮で覆った「棒剣」と呼ばれる稽古用具を持った試験官に背を向けて正座し、いつ振り下ろされるか分からない棒剣を、感覚だけで避けることができるかを試す。避けられれば合格だ。五段を取ると、道場を開くための免状が得られるとあって、合格した弟子からは満面の笑みがこぼれていた。

五段の昇進試験。後ろから振り下ろされる棒剣をよけることができれば合格

初見氏は、これまでの自らの歩みを振り返りながらこう語る。

「武道を究めるのは甘いことではなく、一生懸命修行しないとだめですし、それに心がきれいじゃないといけない。本当の忍術、本当の武道を知ってもらいたいという一心でここまで来ました。道場を開いて約50年が経ち、ようやく後継者が世界中に育ちました。武道の極意を伝えることができて良かった。世界中の弟子たちには、尊敬される立派な人になるよう、これからもどんどん成長してもらいたいと思っています」

取材・文:大西 由花(POWER NEWS)
写真:横山 健

バナー写真:稽古の始めに神棚に手を合わせる初見良昭氏と弟子たち

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