梅の魅力② 梅干しづくりフォトギャラリー
Guideto Japan
文化- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
自然落果した完熟梅を収穫
日本の梅干しの中で最も有名な「南高梅」は、全国の梅収穫量の65%を占める和歌山県で、明治時代から長い時間をかけて研究・改良を重ねて作り出された品種だ。特徴は粒が大きい上に、皮が薄くて種が小さいために果肉が厚く、しかも柔らかいこと。そのため、梅干しに適しており、紀州南高梅といえば味の良い梅干しの代名詞となっている。
南高梅の主な産地は、和歌山県の西南部にあるみなべ町と田辺市だ。平地が少なく、多くの梅農園は山の傾斜地を利用している。崩れやすい斜面を梅林にすることで、山の水源を保ち、崩落を防ぐことにもつながっている。里山を守るこの自然保全システムは、2015年に世界農業遺産(GIAHS)にも認定された。
6月初旬から7月上旬にかけて、南高梅収穫の最盛期となる。梅酒や梅ジュースに使われる青梅は手でもいで収穫するが、梅干し用の実は6月中旬以降に完熟して自然落果するのを待つ。
そのため梅農園では、収穫期前に地面をネットで覆い、落下で実が傷付くことや汚れることを防ぐ。傾斜地では、転がった梅の実が集まるようにネットの設置を工夫することで、網ですくいやすくしている。
関連記事:梅の魅力① 梅干しが持つ健康パワー
梅干しの「しょっぱさ」には理由がある
収穫された梅の実はビニールハウスに運ばれ、すぐに選果作業に入る。葉っぱなどのごみや、大きな傷がある実を取り除いた後、サイズごとに分類していく。
紀州南高梅のサイズは、Sから4Lまでが主に流通し、4Lは直径45~48ミリメートルもの大きさになる。選果後は丁寧に水洗いし、サイズごとにタンクの中で塩漬けにする。
この塩漬けこそが、梅干しの「しょっぱさ」の理由だ。塩の濃度は梅100キログラムに対して塩20キログラムの20%が基本。塩分がそれ以下だと、梅の表面に白カビが発生しやすくなるのだ。
塩漬けされた梅からは、大量の梅酢が出てくる。日本では、米酢などの穀物酢ができる前の時代、この梅酢と塩が主な調味料だった。その配合の加減で料理の味が決まったため、「塩梅(あんばい)」は加減や程あいを表す言葉となり、現在もいろいろな場面で使われている。梅の実は1カ月以上、塩と梅酢に浸されて過ごす。そして、タンクから取り出して、3、4日の天日干しを行うと、昔ながらの白干し梅が完成する。
手作業で大切に仕上げる
自社農園を持たない梅干しメーカーは、この白干し梅を契約する梅農家から仕入れている。
その白干し梅を洗浄し、さまざまな味付けに漬け込み、包装するのが工場での作業だ。勝僖梅では、まず初めに、静菌効果のある活性水で洗浄する。
さらに殺菌効果を持つ微酸性電解水を使って、職人が手作業で最終洗浄を行いながら、傷や破れの不具合がないかを目視していく。
このチェックをクリアした梅干しだけが味付けに進む。減塩と味付けは別々に作業されることが多いのだが、勝僖梅では2つを同時に行う独自の製法で、酸味がしっかりと残ったおいしい梅干しに漬け上げている。
漬け込みの期間は約1カ月間。タンクから出して、乾燥させると調味梅干しの完成となる。目視と手作業でつぶれや傷などないかを再確認して、包装作業に移る。
袋詰め作業も人の手で慎重に行われ、さらに金属検査機で異物混入がないかを最終確認する。勝僖梅では、梅の品質に影響を与えないよう保存料を使わず、窒素ガスを充填(じゅうてん)している。そうすることで、減塩した調味梅干しでも、2年間の長期保存が可能になるという。
「南高梅は皮が薄くて果肉が柔らかいためにデリケートで、どうしても手作業の工程が多くなります。でも、契約する梅農家の方々が大切に育てた南高梅の素晴らしさを伝えるために、勝僖梅では工程を省くことなく、しっかりと丁寧な品質管理をしています」(細川明宏工場長)
取材・文=鈴木 尚人撮影=ニッポンドットコム編集部