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OTAKUの祭典—コミックマーケット90

文化

近年、来場者数は横ばいだが、それでも50万人以上が来場するコミックマーケット。国内最大、世界でも有数のOTAKUコンベンション。コミケが巨大イベントになるまでの歴史と変貌を振り返ってみた。

国内最大級のイベント『コミックマーケット90』が2016年8月12〜14日の3日間、有明・東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催された。

「コミックマーケット(通称:コミケ)」は、マンガ・アニメ・ゲームファンなどの同人誌販売、出版社・アニメスタジオ・ゲーム会社・キャラクターグッズ関連会社の限定品販売、コスプレ・イベントなどを複合的に行うOTAKUの祭典。毎年、お盆時期と年末に同人誌ジャンルごとに3日間のスケジュールで行われる。主催は、同人誌文化の継承発展を目指す「コミックマーケット準備会」という組織だ。

東京ビッグサイト・エントランスプラザのコスプレ広場の撮影会。コスプレイヤーの周りには、人だかりが。

同人誌即売会としてスタート

今年の『コミケ90』には、初日15万人、2日目17万人、最終日21万人(過去最高タイ記録)が来場し、3日間トータルでの来場者数は53万人(昨年より2万人減少)となった。東京ドーム満員で5万人。日本でのF1グランプリの過去最高来場者数が3日間で36万人ということを考えると、国内では最大のイベントだろう。

同人誌ブースは、あいかわらずの人人人人人人人人。これでもちょっとは少なくなったかな?

コミケの歴史は1975年に同人誌即売会として始まった。80年代に参加者が1万人を越えるビッグイベントとなり、81年冬から「東京モーターショー」などが行われていた晴海の東京国際見本市会場(東京ビッグサイトの前身)が会場となる。

その後も来場者数は増え80年代後半には5万〜10万人規模のイベントになった(86年冬のコミケから2日間開催となる)。

コバルト文庫「マリアさまがみてる」のマンガ同人誌を販売する2人

男の娘コスプレで同人誌を販売する人。結構カワイイ

89年夏の晴海で開催されたコミケに、実は私(筆者)は参加している。翌年から幕張メッセ(日本コンベンションセンター)に移るので、東京では最後のコミケということで、サークル参加した友人の同人誌の搬入を手伝った。当時は印刷所による搬入サービスというものが存在しなかったので、地下鉄日比谷線築地駅から勝鬨橋を渡り、延々と同人誌を積んだカートを引きずって会場まで向かった。その時の来場者数は主催者発表で10万人。一日の来場者数は5万人程度だったので、来場者と同人誌サークルの人々ともコミュニケーションが取れるような、のんびりとした雰囲気だった記憶がある(『うる星やつら』のラムちゃんのコスプレをした男女が会場を闊歩していたのを覚えている)。

漫画家の登竜門に

90年に幕張メッセに移ったコミケだが、諸事情により(販売された同人誌が、千葉県の青少年育成条例違反となり、幕張メッセが会場貸与を拒否)、また晴海で開催されることになった。80年代末からコミケ同人誌出身のプロ作家が登場し、商業マンガ雑誌の編集者もコミケを新人マンガ家発掘の場とするようになり、この頃から20万人規模のイベントとなっていく。

96年には晴海から新設された有明の東京ビッグサイトに会場を移し、来場者数は35万人以上に。続く2000年代、来場者数は40万以上になり、コミケは夏と冬の一大イベントとして不動の地位を築く。

東京ビッグサイトの拡張工事のため、いつもの駐車場スペースが使えず、コスプレイヤーも分散していた。こちらは西ホール脇の庭園

コミケの同人誌は、ファンのパロディ誌として出発し、80年代には著作権法違反の疑いが持たれていた。しかし、マンガ家と出版社は同人誌を2次制作物として黙認することによって業界全体の登竜門的な存在になることを望んだ。コミケという裾野を維持することによって、日本はマンガ大国へと成長したとも言える。

04〜05年、この時、私は某月刊マンガ雑誌の編集スタッフとしてコミケの企業ブースに参加した。当日はノベルティ・グッズを用意して配り、普段は接することのない読者とのコミュニケーションを取ることができた。しかしそんな牧歌的な時代が懐かしい。今や企業ブースも限定品販売などを行う人気スペースとなり、コミケ名物の行列を作る一角となった。

KADOKAWAの企業ブースの列は館外にも延びていた。さすが「萌え業界」トップ企業!

『魔法少女まどか☆マギカ』の制作で有名なアニメスタジオ「シャフト」の企業ブース。初日午前中にもかかわらず、完売の商品も

この雰囲気がたまらない!?

07年から、コミケはついに来場者数50万人を越えるモンスター・イベントとなった(過去最高記録は13年夏の59万人)。一日の来場者数が15万人を越えると、会場内は想像を超える人混みとなる。午前中に来場しようとすれば2時間は入場を待たなくてはならない。会場内の人混みは相当なもので、ラッシュアワーの山手線車内にも似たぎゅうぎゅう詰め状態だ。

スウェーデンから来た3人組。好きなマンガは「ベルセルク」。海外の人ってホントに「ベルセルク」好きが多い

その中にはさまざまなキャラクターになりきった多数のコスプレイヤーも混じっているから、一種独特な雰囲気だ。聖地を訪れたことで満足した表情を浮かべる海外のマニアも数多く見かけた。人波に酩酊(めいてい)しながらも、OTAKUたちの異常な熱気に包まれた、巨大な学園祭のような不思議な一体感を体験するだけでも、会場に足を運ぶ意味はあるかもしれない。

参考:コミックマーケット年表

取材・文=吉村 慎一
撮影=長坂 芳樹

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