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30年にわたる勇者たちの冒険を体感!「ドラゴンクエストミュージアム」

文化

シリーズ10作品を数える人気ゲームソフト「ドラゴンクエスト」。その発売30年を記念して、「ドラゴンクエストミュージアム」が開催されている。

社会現象を巻き起こし、大人も魅了したドラクエ

「ドラゴンクエスト」(ドラクエ)は、1986年に任天堂「ファミリーコンピュータ」用のゲームカセットとして、エニックス(現スクウェア・エニックス)からシリーズ第一作が発売された。翌87年の「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」と合わせて約390万本の大ヒットとなり、88年には「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」が約380万本の売り上げを記録。発売前日にはユーザーが家電量販店に徹夜で並ぶという社会現象が起こるほどのブームで、家庭用テレビゲーム機の元祖・ファミコン(84年発売)の普及をけん引するソフトとなった。

日本でドラクエがロールプレーイングゲーム(RPG)、さらにはゲーム全体の代名詞といえるまでになった要因には、ゲームをしなかった(知らなかった)層への浸透がある。それまでのゲームは「スペースインベーダー」(タイトー)、「ゼビウス」(ナムコ[現バンダイナムコ])、「スーパーマリオブラザース」(任天堂)など、シューティングやアクションゲームが中心。ある程度の反射神経が必要で、プレーヤーは男の子と若い男性が中心だった。一方、画面に表示されるテキストを中心に物語が進行し、コマンドを選択しながら40~50時間かけてクリアするというドラクエのスタイルは、女性や大人をも魅了した。

物語上、プレーヤーは主人公の「勇者」となって、(II以降は他のキャラクターとパーティーを組んで)旅をしながらモンスターを倒すことによって経験値とお金を得て、装備をそろえる。そして塔に登り、地下迷宮をさまよい、村々で情報を集めて謎を解き、最終的には強敵である「ラスボス」(ラストボス)を倒すことでゲームクリアになる。

「ドラゴンクエスト」(初代)ゲームカセットのパッケージ

色濃い漫画文化の影響

RPGは米国の「ウイザードリィ」が先鞭(せんべん)をつけたが、ドラクエが基本フォーマットを完成させた。特筆すべきは、漫画雑誌の編集者・ライターだった堀井雄二が中心となって構築されたシナリオだ。例えば「ロト三部作」と呼ばれるドラクエI~IIIのストーリーはつながっており、時代的な順番はIII→I→IIとなっている。こうした緻密なシナリオの積み重ねで物語を紡いでいくスタイルは、その後、日本のゲームのスタンダードとなった。

キャラクターデザインは、当時「ドラゴンボール」が大ヒット中の漫画家・鳥山明。過酷な雑誌連載スケジュールの合間を縫っての仕事だったが、彼が生み出したスライムなどの魅力的なモンスターは日本の代表的キャラクターにまでなっている。

日本独自の漫画文化の影響は色濃く、止まった絵での表現やドットでの作画であっても、プレーヤーが想像力によって技術的な欠陥を補うという考え方にも日本人は違和感がなかった(初代ファミコンは8ビット。色数も少なければ、絵も動かない。画面上のキャラも荒いドット画で、鳥山明が描くパッケージのイラストから想像するしかなかった)。

音楽担当のすぎやまこういちは、アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」のテーマ、ガロの「学生街の喫茶店」、ヴィレッジシンガーズ「亜麻色の髪の乙女」などのヒット曲を作ってきた作曲家。ドラクエオープニングの序曲はあまりに印象が強く、そのフレーズを聴くだけで胸が熱くなる人も多いはずだ。

常に日本のゲームの中心的存在

その後もドラクエシリーズは「スーパーファミコン」(任天堂)、「プレイステーション」「プレイステーション2」(ともにソニー)、「ニンテンドーDS」「Wii(ウィー)」(ともに任天堂)で発売され、それぞれのハードの売り上げを左右するほどのキラーソフトとなった。シリーズ累計は6400万本以上で、ギネス記録には「日本で最も長く続いているRPG」として認定されている。最新作「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」は、「プレイステーション4」と「ニンテンドー3DS」向けに2017年5月までに発売予定で、任天堂が開発中の新型ゲーム機「NX」への対応も検討されている。

今回のイベントは、ドラクエ30年の歴史というよりゲーム史そのものの展示ともいえる。この30年で日本はゲームという産業を興し、その大国となったが、その歴史の中心には常にドラクエがいた。

とにかく、会場の音楽・アートボード・ジオラマなどの全ての展示物がドラクエをプレーしたことのある者には懐かしい。と同時に、ドラクエは生きたコンテンツでもあるから、30年の時を経て、世代・性別に関係なく楽しめる展覧会になっている。

「ドラゴンクエストミュージアム」フォトギャラリー

ドラクエIからの歴代勇者の肖像に出迎えられながら入り口へ

会場冒頭に並べられる全10作のパッケージ展示から、素晴らしい。「スーファミのパッケージ(右)って、デカかったんだなァ!」と喫驚する

I~IIIに登場する勇者ロトの装備(よろい、つるぎ、たて、かぶと)。鍛冶職人が人間の寸法に合わせて制作した

ゲームのさまざまな場面を描いた絵画を展示する「ロト伝説の画廊」のコーナー。アレフガルドから竜王の城を臨む

各場面の絵の下には、実際のゲーム画像が並べられる。今となっては考えられないが、これに近い妄想はしてたような気もする…

IIに登場する「ロンダルキアの三悪魔」のウォールアート。ウ~ム、苦労したした!

IV~VIに登場する天空城のモデルアート

海洋堂制作のジオラマは、忘れかけていた「あの」ゲーム場面を思い起こさせるとともに、当時の自分を思い出すことに

スライムナイト(右手前)って、もっと大きかった印象があるのだが…

Vでビアンカとフローラのどちらかを花嫁に選ぶことを迫られる勇者。でも、後ろにある宝箱がやっぱり気になる?

最終形に変形するIVのラスボス、デズピサロ。最初にプレーしたときはブッたまげたなァ!

写真では見えないが、通路の奥にあった、取れなかった宝箱には何が入っていたんだろう? ミミックだったりして!?

体験型アトラクションが多いVII~Xの展示

「伝説の始まり」コーナーの鳥山明のイラスト原画展示は貴重な資料。左端のIIIのパッケージイラスト、保存状態ちょっと悪いなァ…

こちらは竜王などモンスターの原画

堀井雄二による画面指示書も展示。やっぱり方眼紙なんだ!

すぎやまこういちの楽譜も読める人には楽しめる。へんなテンポで、アウフタクト満載! 会場に音楽が流れているから、それに合わせて読んでみよう

ミュージアム内にはカフェが設けられていて、「スライムのプチカレー」(中央手前)、「スノーモンのフルーツかき氷」(右後ろ)などが食べられる

出口付近にはオリジナルグッズを販売するコーナーも

最後にシミジミと良かったファンアート・コンテスト作品展示。プロ並みの技術の人から、小学生の作品まで、やっぱりドラクエはみんなに愛されているんだなァと感じさせてくれた。モンスターへの愛憎たっぷり!

スライムを手に載せた巨人ゴーレムを描いた作品でファンアート・コンテストのグランプリを取ったジジさん(中央・左)。7月21日に行われた式典で「ドラクエ生みの親」の堀井氏(右)から表彰を受けた

IVに登場する「モンバーバラの踊り子」マーニャのダンスを再現するコンテストも実施された。式典では、優勝したまっしろさん(中央)が副賞の衣装に身を包み、踊りを披露した

(左から)狩野英孝さん、宮澤エマさん、でんぱ組.incの夢眠ねむさん、堀井氏、TKOの木本武宏さんと木下隆行さんが東京会場オープニングのテープカットを行った

バナー写真:貴重な資料が展示された「伝説の始まり」コーナー。これを見るためだけでも、来場する価値はある
※記事中の写真は全て東京開催時の展示物

取材・文=吉村 慎一
撮影=土師野 幸徳(ニッポンドットコム編集部)

「ドラゴンクエストミュージアム」開催概要

【大阪・枚方】
会期:2016年10月9日(日)~2017年1月9日(月・祝)(休業日あり)
場所:ひらかたパーク イベントホール(大阪府枚方市枚方公園町)
開催時間: ひらかたパークの開園時間内
料金:一般・大学生 2800円、中学・高校生 2200円、4歳~小学生 1500円(ひらかたパーク入園料を含む)
公式ウェブサイト: https://dqmuseum.jp/
ひらかたパークウェブサイト:http://www.hirakatapark.co.jp/

【東京・渋谷】(開催終了)
会期:2016年7月24日(土)~9月12日(月)
場所:渋谷ヒカリエ9階「ヒカリエホール」(東京都渋谷区渋谷2-21-1)
開催時間: 午前10時~午後6時(午前10時~11時は、各日定員制の「朝チケット」購入者のみ入場可)
料金:一般・大学生 2800円、中学・高校生 2200円、4歳~小学生 1500円

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