ポップカルチャーは世界をめぐる

BABYMETAL世界を席巻—マーティ・フリードマンが語るその魅力

文化

ヘビーメタル出身のギタリストでありながら、J-Popをこよなく愛するマーティ・フリードマンが、BABYMETAL旋風が世界の音楽シーンに及ぼす影響を解説する。

マーティ・フリードマン MARTY Friedman

ギタリスト、プロデューサー。全米で1000万枚以上のCDを売ったヘビーメタル・バンドで10年間ギタリストを務める。J-Popに魅せられて、2003年に来日、以後、日本の音楽シーンでも活躍。ももいろクローバーZなど多くのアイドルと共演もしている。2014年にはソロアルバム『インフェルノ』(ユニバーサル)をリリースしている。

ヘビーメタル業界に活を入れる

——“ルール違反”について、もう少し具体的に説明を。

カワイイ女の子が “Gimme chocolate!!” と歌うのはルール違反。でも、大きくてタフでマッチョな男が歌わなくても、演奏が良ければ、注目を集める。そうでなければ、すぐダメになる。サウンドがいいから、好奇心を刺激され、好き嫌いを問わず、聴かずにはいられない。それを何度か繰り返す。そしていつの間にかハマっている。

ヘビーメタルは古臭いジャンルで、すでに新しさがなく 、みんなあきあきしている。BABYMETALはとても新鮮で、そのおかげヘビーメタルにまた関心が戻っている。

2年前にリリースしたソロアルバム『インフェルノ』は米国でも話題になった。(写真提供:ハウミック)

(海外での人気は)レディー・ガガが気に入って自分のツアーに参加させたことが大きな宣伝効果となって、たくさんの人がBABYMETALを見るきっかけとなった。(BABYMETALがキメのポーズで使う)フォックスサインもカワイイが、ある程度、メタルをなめているともいえる。(ヘビーメタルで使う“メロイックサイン” は)本来は悪魔のサイン、それが可愛いキツネになった。だからメタルファンがほんとに怒る。それはオイシイ。話題になる。

本格的なメタルファンでも、こっそりBABYMETALを聴いて “guilty pleasure” (後ろめたい喜び)を感じている人も多いはず。

海外で人気のJ-Popアイドルといえば、例えばきゃりーぱみゅぱみゅがいる。アメリカでは、ラップや、カントリー・ミュージックや、アメリカのアイドル歌手の歌が好きじゃないと、他に聞きたい音楽が見つからない。そんな人たちが、ぱみゅぱみゅを発見した。ハッピーでキュートな音楽だけど、単純でもない。

ぱみゅぱみゅも、BABYMETALも、今のアメリカ音楽の潮流にうんざりしている人たちにとって、まさに“This is it!” と叫びたくなる音楽だった。ただ、BABYMETALはメタルというジャンルの“おきて”を過激に破っているから、もっと衝撃的。

日本語で歌うことに意義がある

——言葉の壁をやすやすと乗り越えていることに関してはどう思いますか。

『METAL RESISTANCE』では、1曲英語で歌っている。それはそれでいいけれど、やりすぎれば “boring” になる。

彼らは日本語で歌い続けるべきだと思う。聴いた人は、日本語を知りたくなる。実際、あの子たちは何と歌っているのかと、しょっちゅう聞かれる。興味を持って日本語を勉強したいと思う人たちが出てくる。

たくさんの日本人アーティストが英語で歌ってアメリカ人にアピールしようとするけれど、うまくいかなかった。アメリカ人の悪いところは、少しでもなまりがあると拒否感を示すこと。日本では僕がちょっとなまりのある日本語で話したり、間違えたりするとキュートだと言われるのに。

でも、アメリカ人は、英国なまりでさえ、嫌がる人が多い。例外は、少年ナイフの歌のような、極端な “カタカナ英語”。面白くで、キュートだと思われる。それに、完ぺきな英語で歌ったとしても、今度は 米国の他の全ての歌手と競合することになるから、結局、個性がなくなってしまう。

日本語で歌うからこそ、好奇心も刺激するし、神秘性もある。 分からないほうが面白い。

——BABYMETALは進化し続けるでしょうか。

今回のアルバムはとにかく素晴らしい出来栄え。一つ一つの曲に多くの人が関わって、時間をかけて作っている。メジャーなヘビーメタルバンドと同じようなアルバム作りをしている。偶然大ヒットしたわけではない。“神バンド” は、海外でも人気になっている。今のように素晴らしい仕事を続けていけば、BABYMETALはさらに進化できると思う。

BABYMETALの出現で、ヘビーメタルも変わっていくと思う。例えば、カントリーをメタル風に演奏してみたりね。彼らがジャンルの拘束を解き放ってくれたことは、メタル業界のみならず、すべての音楽にとてもいい影響があると思う。BABYMETALは新たな扉を開けてくれたんだ!

(インタビュー・文 nippon.com 編集部)

バナー写真:2015年8月29・30日の英国野外フェスティバル「Reading and Leeds Festivals 2015」に参加した際のBABYMETAL (Press Association/アフロ)
▼あわせて読みたい
きゃりーぱみゅぱみゅ 越境する「カワイイ」 原宿から世界に広がるkawaiiカルチャー最前線 AKB結成10周年—音楽市場の「地殻変動」を乗り越えられるか AKB48、ももクロ、橋本環奈―ライブアイドル・ブームが映し出す消費の「世代格差」

この記事につけられたキーワード

J-POP 音楽 AKB48 きゃりーぱみゅぱみゅ

このシリーズの他の記事