ポップカルチャーは世界をめぐる

翼と日本漫画文化が世界中で愛される理由

文化

岩本 義弘 【Profile】

日本のサッカーブームに火をつけ、世界各国でアニメ放映され、数多くのサッカー選手に影響を与えた『キャプテン翼』。原作者の高橋陽一氏に、翼くんの誕生秘話や日本ポップカルチャーの人気の秘密を聞いた。

日本の漫画・アニメが世界中で愛されるわけとは

——『キャプテン翼』は、日本を飛び出し、世界中の人々に愛されています。同様に、多くの日本の漫画・アニメが、世界中でファンの心をつかんでいます。なぜ、日本の漫画文化は、世界中の人々に愛されるのでしょうか。

「大きな理由の一つとして、質の高いストーリー漫画が育つ環境があるからだと思います。ストーリー漫画というのは、おそらく手塚先生のものが世界で初めての作品だと思うんですが、日本で誕生したストーリー漫画が、漫画雑誌という発表の場を得たことで大きく進化したと思っています。最初は月刊誌だったものが、いつしか週刊誌となり、漫画家は毎週20ページ前後を描き続けることになりました。多くの漫画週刊誌が生まれ、それが受け入れられたことが、この文化の確立につながったと思います。それこそ、『週刊少年ジャンプ』の全盛期は毎号500万部以上を発行していたわけで、それだけの人が漫画を読めば、読者の中から漫画を描きたいと思う人も生まれてくる。このシステムは、おそらく日本独自のものでしょうし、この環境があったからこそ高い質の漫画・アニメを生み出せたんじゃないでしょうか」

——そのシステムによって、競技人口が増え、より注目される舞台、言うなればビッグゲームを数多く経験できる環境を手に入れたわけですね。

「そうだと思います。そして、日本中の人々に漫画文化が理解されたことによって、日本人として生まれてくること自体が、漫画家になる上で非常に有利だという環境を生み出しました。現在のサッカーの世界では、スペイン人として生まれてくれば、すでに世界最高峰のリーグであるリーガ・エスパニョーラが存在していて、高いレベルの育成システムもでき上がっている。それと同じように、日本では、週刊漫画誌が数多く存在していて、描こうと思えば、小学生の頃から本格的に漫画を描き始めることができる。これは他の国にはない環境です。同様にアニメに関しても、日本は非常に恵まれた環境が整っているということは、間違いないですね」

僕自身、翼の夢であるW杯優勝を見たい!


数々のシリーズを経て、今でも成長を続ける翼くん。最新刊は『キャプテン翼 海外激闘編 EN LA LIGA 第5巻』(集英社)。(C)高橋陽一/集英社

——最後に、『キャプテン翼』が今後、どういった展開で進んでいくのか、教えてください。

「日本をW杯で優勝させて、世界一のサッカー選手になる」。この翼の夢は、子どもの頃から変わっていません。ですから、その夢に向かって進んでいくことになりますね。ちなみに、翼は今、ようやくバルセロナでの1年目のシーズンを終えようとしているところなので、まずはそこを描ききって、その後、並行してストーリーを進めている五輪の話を描き、そして、最後はW杯を目指せればなと」

——まだまだ、先は長いですね。

「本当に長いです(苦笑)。僕自身、僕が生きてるうちに、漫画を描けるうちに、翼の夢であるW杯優勝を見たいと思っています。体力と気力の続く限り、頑張っていきたいです」

撮影=松田 忠雄

 

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岩本 義弘IWAMOTO Yoshihiro経歴・執筆一覧を見る

1972年7月24日、東京都出身。編集者、サッカー解説者。株式会社フロムワン専務取締役。多ジャンルでの編集経験を経て、『ワールドサッカーキング』、『Jリーグサッカーキング』、『UEFAチャンピオンズリーグ公式マガジンChampions日本版』など、サッカー誌の編集長、編集局長を歴任。スカパー!セリエA中継を中心にサッカー解説者としても活躍中。

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