秋野豊博士が殉死した山岳の国—ボボゾダ駐日タジキスタン大使 インタビュー

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旧ソ連から独立した中央アジア5か国。よく知られるざるユーラシア大陸の国々を紹介する第一弾。ヘレニズム文化形成の地であるタジキスタンは仏法を通じて日本にもつながる。駐日大使にインタビューした。

ボボゾダ・グロムジョン・ジュラ BOBOZODA Gulomjon Jura

1957年生まれ。タジク国立大学経済学部卒。経済博士。1980~1990年タジク国立大学大学院にて財政学教授。財務省副大臣、大統領経済顧問、経済発展及び貿易省大臣、国税財源管理省大臣を歴任し、2009年より在日タジキスタン共和国特命全権大使。タジキスタン名誉賞、国家労働者功労勲章を授賞。

膨大な水資源でエコ・クリーンを実現

——日本の経済関係はどのような状況ですか?

タジキスタンは、領土の93%がパミール山脈、天山山脈、アライ山脈からなる山岳地帯、7%は渓谷で、鉱物資源が非常に豊かな国です。

ファン山脈 この山脈の最高峰とされるチンタルガ峰は標高5494メートル

ソ連時代は、鉱物資源産地のごく一部が開発されただけで、鉱物資源は未来の世代のために残されています。

タジキスタンの持つポテンシャルは無尽蔵で、膨大な水力発電エネルギーがあります。最近のデータによれば、1年当たりの発電可能量は5270億kWh(※3)ですが、年間200億kWhしか発電していません。タジキスタンのポテンシャルの5%しか使っていないことになります。タジキスタンは、アフガニスタンとパキスタンと送電線の敷設に関する協定に調印しました。

地球温暖化防止の観点からも、このプロジェクトは大きな貢献をします。数百万トンの石炭やガスの代わりに、エコ・クリーンな山岳地帯の川のエネルギーを使うのですから。

鉱物資源では、日本企業に、今まで行われてきた資源探査を継承し、鉱床の開発にも参入してもらえればと考えております。タジキスタンには、通信や先端技術に必要とされるレア・アース(※4)の鉱床があります。日本の資本、資源開発に携わる日本企業に進出してもらいたいと願っています。

上海協力機構の2014年サミットを開催

——対外協力関係は、上海協力機構(SCO)の枠内で活発に実現しているようですね。

タジキスタンは、上海協力機構(SCO)(※5)の前身となった上海ファイブの一つです。SCOは、中国と国境を接する5か国、中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンによって設立されました。

上海協力機構(SCO)のサミットは、2014年9月に首都ドゥシャンベで開催され、今後のSCOの活動の方向性を定義づける一連の重要な書類に調印しました。サミットには、SCOの加盟国の国家元首だけではなく、モンゴル、アフガニスタン、イラン、パキスタン、インドその他の国々の代表も結集しました。

仏教を通じた日本との文化共有

——日本との文化交流は?

タジキスタンと日本の交流は、非常に長い歴史を持っております。仏法は、北インドから、アフガニスタン、そしてタジキスタンを含む中央アジアを通って中国へと続く、偉大なるシルクロードを経由して、日本に伝来しました。

2012年、ミホミュージアム(滋賀県甲賀市)で行われた展覧会に、タジキスタン国立考古学博物館などから、数世紀前の中央アジアからの出土品が多く出品されました。日本と中央アジア、タジキスタンは、古き昔から、仏教の歴史と関連した多くの文化的遺産を共有する国だと痛感ました。現在、日本の考古学者が、古代仏教遺産の研究のために調査訪問しています。

——最近、ドゥシャンベに日本から桜が寄贈されましたね。

日本の外務省のサポートがなければ、桜の木を無事にタジキスタンに運ぶことはできなかったでしょう。桜は美しい日本の象徴であり、タジキスタンに桜の庭園を造りたいと思っておりました。桜の木の一部は、一般市民に公開されている植物園に植樹されました。また、タジキスタンにも美しい花を咲かせる木が沢山あります。タジキスタンの象徴である杏子の木を徳島県に寄贈し、県知事と一緒に植樹しました。文化交流の象徴としてです。徳島県との交流は長く続いています。

(※3) ^ キロワットアワー (kilowatt hour) 1キロワットの電力を1時間消費もしくは発電したときの電力量

(※4) ^ 蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠

(※5) ^ 中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンの6か国による対テロを主な目的とする多国間協力組織

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