G20財務相、地政学的緊張など監視 中ロが声明の表現抑制

ジャカルタでの17─18日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で作成された声明の草稿を巡り、ロシアと中国が表現を弱めるよう要請し、地政学的緊張が世界経済の見通しを曇らせているとの言及の前にあった「現在の」という表現を削除した。複数の関係筋が明らかにした。インドネシアで撮影(2022年 ロイター)
ジャカルタでの17─18日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で作成された声明の草稿を巡り、ロシアと中国が表現を弱めるよう要請し、地政学的緊張が世界経済の見通しを曇らせているとの言及の前にあった「現在の」という表現を削除した。複数の関係筋が明らかにした。インドネシアで撮影(2022年 ロイター)

[ジャカルタ/東京/ワシントン 18日 ロイター] - 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が18日、ジャカルタで開催され、2日間の討議を経て閉幕した。採択した共同声明の文言を巡り、ロシアと中国が世界経済に対する地政学的リスクに関する表現を弱めるよう要請。草案にあった「現在の」緊張という表現が削除された。

会議はオンライン、対面の両方の形式で実施された。関係者によると、今回の会合は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した2020年以降で最も緊迫した雰囲気に包まれたという。また、貧困国の債務再編や炭素価格の設定などの問題に関する文言を巡っても意見の相違があり、討議が長期化した。

ロイターが入手した草案では、G20は「(現在の)地政学的緊張から生じるものを含む」リスクを監視すると書かれていたが、共同声明では「われわれはまた、発生中の地政学的緊張やマクロ経済、金融の脆弱性によるリスクを含め主要なグローバルリスクを引き続き監視する」と記された。

関係者によると、ロシアと中国が緊張を巡る文言に異議を唱えたという。

このあいまいな表現は、主要7カ国(G7)の財務相が14日発表した共同声明とは大きく異なる。ロシアがウクライナに侵攻すれば、「大規模な」経済的影響に直面することになると表現していた。ロシア、中国はともにG7のメンバーではない。

<債務再編の停滞>

今回の会議では、G20の債務再編の枠組みが停滞していることを巡る意見の相違も目立った。

最終的な共同声明では、再建を求める貧困国に対する債務返済の即時停止と一部の中所得国への支援拡大という国際通貨基金(IMF)および世界銀行の提案に賛同することはできなかった。

代わりに枠組みを「適時かつ秩序だった方法で連携して実施するための取り組みを強化することへのコミットメントを再確認する」としたが、具体的な内容は示されなかった。

これに先立ち、関係者は二国間公的債務で世界最大の債権国となっている中国が、全面的な債務削減を受け入れるという考えに難色を示したと述べた。

世界銀行のマルパス総裁はG20財務相・中央銀行総裁会議後に行われたミュンヘン安全保障会議で、G20が発展途上国で増大する債務超過への対応を「前進させる手段を特定できていない」ことを懸念していると述べた。

<信頼性への疑問>

インドネシアのスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相は、気候変動対策としての炭素に価格を付けることへの支持に慎重な国があることや、パンデミックで債務負担が悪化した低所得国をどう支援するかが最も難しいテーマになっていると指摘。「G20の評判と信頼性にも関わる」と述べた。

このほか、共同声明では「パンデミックによる影響に対処するため、引き続き全ての利用可能な政策手段を用いる」とした一方、「マクロ経済政策の余地がより狭く、不均等となる可能性が高まっている」と警告した。

物価面については「供給の混乱や需給のミスマッチ、エネルギー価格を含めたコモディティ価格の上昇は、多くの国々においてインフレ圧力の高まりにも寄与し、世界経済の見通しに潜在的なリスクをもたらしている」とした。

さらに「中央銀行は、政策スタンスに関する明確なコミュニケーションにコミットすることを継続しつつ、必要なところにおいては、物価の安定を確保するため、それぞれのマンデートに沿って行動する」とした。

また、国際法人税の新ルールを2023年に発効させるべく取り組む方針も示した。

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