アングル:途上国に「ワクチン10億回分」、新規表明ばかりでない実態
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[13日 ロイター] - 主要7カ国首脳会議(G7サミット)は声明で途上国への10億回分の新型コロナウイルスワクチン供与を打ち出したが、一部専門家によると、ここにはこれまでに既に表明された分も含まれており、途上国にもコロナワクチンを分配する国際的な取り組み「COVAX(コバックス)」への影響はやや限られる。ただ、それでもなお、重要な「救命索」であることには変わらないという。
バイデン米大統領は10日の演説で、米ファイザーとドイツのビオンテック連合のワクチン5億回分を寄付すると表明。これも今回のG7の一部だ。
約束されたワクチンの多くはCOVAXを通じて提供される。ただ、すべてが新規の表明ではないし、規模は途上国に必要な50億-60億回分に比べるとはるかに少ない。その上、ワクチンの実際の接種を難しくしかねない配布の問題も解決していない。
それでも専門家らによれば、COVAXがこれまでに世界で配布したのは8300万回分にすぎず、G7が約束した分は必要度が高い。富裕諸国が人口の何倍ものワクチンを備蓄している一方で、COVAXはワクチン確保に必死になっている。
戦略国際問題研究所(CSIS)のグローバル公衆衛生政策研究所のスティーブン・モリソン所長はG7の約束について、「現在のかなりの苦境からCOVAXを救うことになるため、極めて重要な一歩だ」と評価した。
英政府報道官によると、英国の1億回分の約束は「完全に新規」の表明。しかし、欧州連合(EU)による1億回分の約束は5月の世界保健サミットで表明されていた。米政府の約束は部分的には、COVAXに直接資金支援するこれまでの約束の再表明だ。
ホワイトハウス当局者によると、米国は既にCOVAXに20億ドルを寄付済み。バイデン政権は今年2月に、追加で20億ドルの資金提供を約束した。ただ、当局者によると、2回目の20億ドル分は、15億ドル分がさらに増額された上で、ファイザーのワクチンの購入に充てられる。
こうしたワクチンがたとえ入手され、出荷されたとしても、途上国の限られた配布インフラが接種に向けて圧倒的に不足するリスクがある。ワクチンの多くが今年末ごろに一斉に提供されると、特にそのリスクが高まる。
世界銀行は途上国がワクチンの配布・接種インフラを構築するための融資枠120億ドルを供与したが、対象の各国政府はまだ計約30億ドルしか引き出していない。
非営利の「ワン・キャンペーン」の責任者、エドウィン・イクオリア氏は「低所得国は(ワクチンで)債務が増えるのを警戒している。それが現実なのだ」と述べた。
富裕諸国がワクチン出荷をもっと迅速にする方法を見つけるべきだと主張する向きもいる。とりわけワクチン接種率の高い国々では、副反応の警戒で接種が中止されたり敬遠されたりしている米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンなどの一部で使用期限が迫っているからだ。
「国境なき医師団」の上級ワクチン政策アドバイザー、ケート・エルダー氏は「富裕諸国でのワクチン接種増加を示すグラフや接種ペースの加速を見るにつけ、そして途上国でのペースを見るにつけ、その差は強烈だ」と語り、「ワクチンは今必要とされているのだ」と強調した。
(Carl O'Donnell記者、Andrea Shalal記者、Allison Martell記者)
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