情報BOX:ミャンマー武装勢力「カレン民族同盟」とは 国軍との対立激化
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[27日 ロイター] - ミャンマー国軍は27日、タイ国境付近にある少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)が拠点としている村やその周辺へ空爆を行った。KNUが、2月1日の国軍によるクーデター以降最も激しい戦闘を展開したことに対する動きだ。
KNUは、自陣営の兵士がサルウィン川西岸の軍基地を制圧したと明かした。
タイ政府は人道的支援の用意はあるが、ミャンマー国軍とKNUの対立については中立を守ると強調している。
◎KNUとは何か
タイ国境付近のカイン(カレン)州で生活する少数民族、カレン族を代表する政治武装組織。KNUの目標は、カレン族の自決権を獲得することだ。カレン族は、ベルギーにほぼ匹敵する広さで人口約160万人のカレン州では多数派を占める民族。1948年のミャンマー独立後の政治体制から疎外されたため、KNUは翌年から反政府活動を展開。主な不満の1つは、多数派のビルマ族がミャンマーの国政と軍を支配している点にある。
◎流血の歴史
KNUとその軍事部門のカレン民族解放軍(KNLA)は歴史的に、ミャンマー国軍にとって最大の敵対勢力の1つ。
人権活動家らは、ミャンマー国軍兵士がカレン族に対して行った殺人、村落への放火、強制労働、拷問、組織的な強姦といった残虐行為を非難してきた。国軍側も、カレン族のゲリラ活動で多大な人員の損害を被っている。
2011年のミャンマー民政移管に伴う幅広い改革により、KNUは全土停戦合意文書(NCA)の署名に参加。連邦制国家に向けた第一歩と受け止められたが、今回のクーデターで今後の合意実現が不透明になった。
◎衝突再燃
クーデター発生によって、少数民族の間で国軍への不信感や疑念が一層強まっている。KNUは国軍がカイン州で領域を拡大していると指摘し、停戦は終わったと述べるとともに、主に都市部に広がっている民主派の国軍に対する抗議行動への支援を宣言した。
国軍は先月、KNUが実効支配する地域に対して20年ぶりの空爆を実施した。KNUの戦闘部隊が国軍兵士10人を殺害したことへの報復だ。KNUは、国軍の各拠点への攻撃を続け、補給ルートを遮断しようとしており、国軍側との散発的な衝突や空爆につながっている。
◎大同団結
ミャンマーの民主派は、国軍を共通の敵とする「大同団結」の輪に、KNUや他の少数民族武装勢力を取り込もうとしている。
民主派が新たに結成した「国民統一政府(NUG)」の望みは、これらの反政府武装勢力が国軍を打ち負かして解体した後で、「連邦軍」になってくれることだ。KNUは、実効支配地域における民主派の活動を、治安部隊が手を出せないよう保護している。別の武装勢力である北部カチン州のカチン独立軍(KIA)や西部ラカイン州のアラカン軍も、反国軍で連携することに前向きだ。
◎タイへの脱出
最近数週間で何千人ものカレン族が国境を越えてタイに逃げ出した。KNUはタイ政府に、国軍との戦闘が激化した場合、逃れてきた市民を以前のように保護してほしいと要望している。
タイは27日、国境で避難所や食料、医薬品、水などを提供するとともに、市民が望むならより安全な場所に移送すると表明した。
これまでタイは、人権団体などから人道支援の義務を積極的に果たしていないと批判されていた。ただ戦闘が続くようなら、膨大な難民受け入れの負担に直面することになる。
◎国軍打倒後にも問題
少数民族の武装勢力側は兵力が相対的に少ない上に、火器は乏しく、空軍も持っていない。それでも国軍は複数の戦線を形成せざるを得ず、相当な消耗を強いられる可能性がある。
しかし戦闘が長期化して多くの人命が失われることで、武装勢力側は人的・物的な資源が枯渇するか、内部の権力闘争や分裂、外国の介入といった試練にさらされるだろう。
実際に国軍は、ミャンマーを支配してきた49年間にわたって「分割して統治する」戦術を練り上げてきただけに、敵対勢力を弱めるために自らさまざまな取引を結ぶかもしれない。
たとえ抵抗運動によって国軍を敗北させたとしても、政権移行作業においていくつもの問題が出てきてもおかしくない。
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