ニュースで振り返る2024年の日本

社会

甚大な被害をもたらした能登半島地震が元日の夕方に発生した2024年。9月の自民党総裁選を経て石破茂新首相が誕生したが、自民、公明両党は裏金批判の高まりから衆院選で惨敗した。日本被団協がノーベル平和賞を受賞。世の中はドジャース・大谷翔平の大活躍に熱狂した。

【政治】

自民党の政治資金パーティー収入を巡る裏金問題は、党が4月に安倍派と二階派の議員ら39人の処分を決定。塩谷立・元文科相と世耕弘成・前参院幹事長の2人が離党勧告となった。5年間の不記載が最も多かった二階俊博元幹事長は次回衆院選に立候補しない考えを表明したことを踏まえ、処分されなかった。

自民党と岸田内閣の支持率は低迷を続け、岸田文雄首相は8月14日に党総裁選不出馬を表明した。9月の総裁選には過去最多の9人が立候補。石破茂・元党幹事長が、決選投票で高市早苗・経済安全保障担当相を破り、第28代総裁に選ばれた。

自民党総裁室の椅子に座る石破茂新総裁=2024年9月27日、東京・永田町の同党本部(時事)
自民党総裁室の椅子に座る石破茂新総裁=2024年9月27日、東京・永田町の同党本部(時事)

石破氏は10月1日、首相に就任。8日後の9日に衆議院を解散した。10月27日に衆院選が投開票され、自民が191議席、公明が24議席で改選前から計64議席を失い、与党勢力は過半数に届かず惨敗した。野党の立憲民主党は50議席増やして148議席、国民民主党は4倍増の28議席と躍進した。

石破政権は少数与党政権として、主に国民民主党と政策協議に入り、「年収103万円の壁」を見直すことで合意。12月17日に一般会計総額13兆9000億円の補正予算が成立した。

政治資金規正法の改正で、自民党は12月16日、立憲など野党側が提出した政策活動費を全面廃止する改正案に賛成することで合意した、企業。団体献金の禁止については24年度末までに結論を出すことで野党側と一致し、先送りした。政治改革関連法案は24日、可決・成立した。

野党勢力でも、党トップの交代が相次いだ。共産党は田村智子氏が党委員長に就任。立憲民主党は9月の党代表選で、野田佳彦・元首相が選出された。公明党は9月山口那津男代表が退任し、石井啓一氏にバトンタッチしたが、直後の衆院選で落選し、斉藤鉄夫国交相が新代表となった。日本維新の会は馬場伸幸代表が衆院選の敗北を受けて退任し、12月の代表選で吉村洋文・大阪府知事が新代表に選ばれた。

7月の東京都知事選は小池百合子氏が3選を果たし、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が165万票を獲得して2位に。政党の支援を受けず、ネットを駆使した活動が大量得票につながり、「石丸現象」と呼ばれた。パワハラ問題で失職した斎藤元彦氏が出直し選挙で再選された11月の兵庫県知事選などでも、同様の現象があった。

【外交】

岸田首相は4月、国賓待遇で米国を公式訪問。バイデン大統領との首脳会談では防衛分野を中心に連携深化の方針を打ち出し、「揺るがぬ日米同盟」をアピールした。米国では、フィリピンのマルコス大統領とともに初めての日米比首脳会談が行われ、対中国に向けた安保・経済連携強化を確認した。

ホワイトハウスでの日米比首脳会談に臨むバイデン米大統領(中央)と岸田文雄首相(右)、フィリピンのマルコス大統領(左)=2024年4月11日(AFP=時事)
ホワイトハウスでの日米比首脳会談に臨むバイデン米大統領(中央)と岸田文雄首相(右)、フィリピンのマルコス大統領(左)=2024年4月11日(AFP=時事)

5月27日、4年半ぶりとなる日本、中国、韓国の3カ国首脳会談がソウルで開催され、少子高齢化対策や経済・貿易など6分野での実務連携を盛り込んだ共同宣言を採択した。

日中両政府は9月、中国による日本産水産物の輸入を段階的に再開する調整に入ることで合意した。東京電力福島第一原発処理水のモニタリング体制を拡充することで、日本が国際原子力機関(IAEA)と合意したことを踏まえての動き。石破茂首相は11月、訪問先のペルーで習近平・中国国家主席と初会談し、共通利益に向けて協力する「戦略的互恵関係」の推進を確認した。

【経済】

内閣府は2月、2023年のGDP速報値を発表。名目で591兆4820億円、ドル換算で4兆2106億ドルとなりドイツ(4兆4561億ドル)に抜かれて世界4位に転落した。

日本銀行は3月の政策決定会合で、「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」とし、マイナス金利政策解除を決めた。7月には国債の買い入れの減額方針を決め、政策金利である短期金利の誘導目標を「0~0.1%程度」から「0.25%程度」に引き上げることを決めた。

日銀は7月、20年ぶりとなる新紙幣の発行を始めた。肖像は1万円札が渋沢栄一、5千円札が津田梅子、千円札が北里柴三郎。

連合が7月3日に発表した2023年春闘の最終集計結果によると、平均賃上げ率は5.10%で、1991年以来33年ぶりに5%を超える高水準となった。前年比では1.52ポイントの上昇。中小組合(組合員300人未満)の平均賃上げ率は4.45%。前年を1.22ポイント上回った。

2024年1~10月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合)の上昇率は前年比2%台で推移。実質賃金は依然、前年比でマイナスの月が目立った。

外国為替市場の円相場は、年初の1ドル=140円台からじりじりと円安が進み、4月末には1990年4月以来34年ぶりに1ドル=160円台をつけた。財務省は4月下旬から5月下旬までの1か月余りの間に、総額9兆7000億円余り、6月下旬から7月下旬までに5兆5000億円余りを投じて、市場介入を実施した。11月から12月にかけては、1ドル=150円台で推移。

東京株式市場は、日経平均が年明け3万3000円台の水準で始まり、7月には史上最高値の4万2000円台まで上昇した。8月5日は終値が「ブラックマンデー」の下げ幅(3836円48銭)を超える4000円以上も暴落。翌日は急反発するという大荒れの局面があった。11月から12月にかけては3万8000円台から3万9000円台で推移。

史上最大の下げ幅となる4451円28銭安で終了した日経平均株価の終値を示すモニター=8月5日午後、東京都中央区(時事)
史上最大の下げ幅となる4451円28銭安で終了した日経平均株価の終値を示すモニター=8月5日午後、東京都中央区(時事)

【産業】

半導体の受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は2月、熊本県菊陽町に建設した日本国内初の工場で開所式を行った。同工場は年内稼働の予定。隣接地に第2工場の建設も決まり、25年3月までに着工予定。

米USスチールは4月の臨時株主総会で、日本製鉄による141億ドル(約2兆1600億円)規模の買収計画の受け入れを可決。一方、全米鉄鋼労働組合が反対声明を出すなど、米国内で反発が広がった。米政府の対米外国投資委員会が、安全保障上のリスクに関する審査を進めたが、結論をバイデン大統領の判断に一任することとなった。

トヨタ自動車が5月、2024年3月期決算を発表。本業のもうけを示す営業利益が5兆3529億円と、日本企業で初めて5兆円を超えた。ハイブリッド車の販売好調に加え、円安が追い風となった。

日産自動車は11月、世界の生産能力を20%削減し、全体の1割弱に当たる9000人規模の人員削減計画を発表した。米国や中国で競合メーカーとの販売競争が激化し、採算が悪化したことが要因。提携先である三菱自動車の持ち株34%のうち10%を売却する。

ホンダと日産自動車が12月、経営統合に向け協議入り。将来的に三菱自動車が合流することも検討する。3社が統合すれば販売台数が800万台を超え、世界3位の自動車メーカーとなる。

【社会・スポーツ】

1月1日夕、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生。同県輪島市と志賀(しか)町で震度7を観測した。日本海沿岸の広範囲に津波が襲来し、各地で土砂災害と火災、液状化、家屋倒壊、道路など交通網の寸断が発生し、甚大な被害をもたらした。石川、新潟、富山3県での死者は11月現在、447人(うち関連死220人)。9月21日から23日にかけては能登半島を豪雨が遅い、河川の氾濫や土砂災害で15人が死亡した。

能登半島地震による火災が発生し、煙が上がる石川県輪島市の市街地=2024年1月2日(時事)
能登半島地震による火災が発生し、煙が上がる石川県輪島市の市街地=2024年1月2日(時事)

小林製薬が製造した紅麹を原料としたサプリメントを摂取した消費者が、体調を崩す事案が相次いでいることが3月に発覚。サプリとの関連が疑われる死亡例も指摘された。厚生労働省は9月、原料から検出された青カビ由来の「プベルル酸」が腎障害を引き起こしていたと発表した。小林製薬は7月、臨時取締役会で小林一雅会長と小林章浩社長の引責辞任を決めた。

最高裁大法廷は7月3日、旧優生保護法の下で障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが国に損害賠償を求めた裁判で、旧法を違憲とし賠償を命じる判決を出した。15人の裁判官全員一致の判断。

宮崎県沖を震源とする最大震度6弱の地震(マグニチュード7.1)が8月8日に発生。気象庁は初の南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を発表。15日に解除されたが、夏休みの行楽や旅行の人出に影響が出た。

パリ五輪(7月26日~8月11日)で、日本選手団は金20、銀12、銅13のメダルを獲得。メダルの総数で、海外で開かれた五輪として過去最多を更新した。陸上女子やり投げの北口榛花選手は今大会、フィールド種目では日本女子選手で初のメダルとなる金メダルを獲得した。

8月に地震や台風が重なり、また新米への端境期にあたったことなどが要因となり、8月中旬から9月下旬にかけて都市部のスーパーなどでコメが品薄となった。価格も高騰し、23年には5キロ2000円台だった小売価格が、3000円台で高止まりしている。

東京電力は8月、福島第1原発事故で溶け落ちた燃料デブリの試験的取り出し作業に着手。11月7日、作業を完了し、0.7グラムのデブリを回収したと発表した。

回収装置で取り出され、専用容器に収納されるデブリ(東京電力提供、時事)
回収装置で取り出され、専用容器に収納されるデブリ(東京電力提供、時事)

静岡地裁が9月26日、1966年に発生した強盗殺人事件で80年に死刑が確定した袴田巌さんの再審裁判で、袴田さんに無罪判決を言い渡し、捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)を認定した。畝本直美検事総長は10月8日、控訴断念を表明し、9日に無罪が確定した。

再審無罪判決確定を受け、袴田巌さん(右中央)に謝罪する静岡地検の山田英夫検事正(左)=2024年11月27日、浜松市内(時事)
再審無罪判決確定を受け、袴田巌さん(右中央)に謝罪する静岡地検の山田英夫検事正(左)=2024年11月27日、浜松市内(時事)

ノルウェーのノーベル委員会は10月11日、2024年の平和賞に日本被団協を選んだと発表。核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきたことを授賞理由に挙げた。授賞式は12月10日にオスロであり、田中熙巳(てるみ)代表委員は受賞演説で「人類が核兵器で自滅することのないよう」「核兵器をなくしていくためにどうしたらいいか、世界中のみなさんで共に話し合い、求めていただきたい」と訴えた。

米大リーグ(MLB)のプロ野球選手、大谷翔平は24年シーズン、ナ・リーグの強豪ロサンゼルス・ドジャースに移籍。右ひじの手術から復帰し、指名打者に専念した。MLB初の「1シーズン50本塁打、50盗塁」を達成し、本塁打王と打点王の2冠を獲得した。ドジャースはワールドシリーズを制覇し、自身は2年連続3度目の最優秀選手(MVP)を受賞。大谷の活躍に日本中が沸いた。

【科学技術】

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型無人探査機・SLIM(スリム)が1月20日、月面に着陸した。月面着陸に成功したのは日本初で、旧ソ連、米国、中国、インドに次いで5カ国目。SLIMは目標としていた誤差100メートル精度のピンポイント着陸を達成、観測機器の分光カメラによる月面撮影や、搭載していた小型探査ロボットによる機体撮影にも初めて成功した。

【文化】

宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』が1月、米ゴールデングローブ賞のアニメ映画賞を受賞。2月には米アニー賞のキャラクター・アニメーション賞と絵コンテ賞を受賞した。

3月、第96回米アカデミー賞で、「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)が視覚効果賞、「君たちはどう生きるか」(宮崎駿監督)が長編アニメーション賞を受賞した。

米テレビ界の最高栄誉とされる第76回エミー賞が9月15日発表。「SHOGUN 将軍」が作品賞など18部門を受賞。プロデュースと主演の真田広之さん自身も主演男優賞を獲得した。

バナー写真:ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表委員の(右から)箕牧智之さん、田中重光さん、田中熙巳さん=2024年12月10日、ノルウェー・オスロ(時事)

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