山梨県、富士山オーバーツーリズム対策に本腰:7月から吉田ルートで通行料2000円徴収

地域 環境・自然・生物

富士山は2013年にユネスコの世界文化遺産に登録されて以来、訪日観光客にも人気のスポットに。山梨県側の五合目の来訪者数は、12年の231万人からコロナ禍前の19年には506万人にまで増えた。一方でマナー違反や危険行為も増え、オーバーツーリズムの弊害が指摘されている。

富士登山の歴史で初の試み

山梨県は、約900年前に富士山登拝が始まってから初となる入山規制に乗り出す。山開きを7月1日に控え、吉田ルート五合目にゲートを設置。通行は午前3時から午後4時までに制限、1日最大4000人までとする(山小屋宿泊者は除く)。

富士スバルラインからの眺め
富士スバルラインからの眺め

五合目は開山前でも観光バスが行列
五合目は開山前でも観光バスが行列

ゲート通過には2000円の通行料が必要となり、富士登山オフィシャルサイトで日付指定で事前決済できる。受付開始から1カ月弱で申し込みは2万人超。予約なしで現地で支払うこともできるが、SNS「X」の同アカウント上で随時更新する当日の通行人数を確認しておこう。

注意が必要なのは、往路は静岡県側から登った人も、吉田ルートで下山する場合は入山料がかかること。集めた通行料は通訳サポートや安全誘導に充てる。

6月19日にはゲート通過の予行演習を公開。日本語を話せない外国人の対応や、軽装登山者への指導といったシミュレーションを実施した。

通訳も配備して、外国人ツーリストに安全登山を呼び掛ける
通訳も配備して、外国人ツーリストに安全登山を呼び掛ける

軽装の人には防寒着や雨具等をレンタルするように指導
軽装の人には防寒着や雨具等をレンタルするように指導

首都圏からのアクセスがよく、整備された吉田ルートは山頂を目指す4ルートの中で最も人気が高く、富士登山者の6割が利用する。2023年には13万7236人とコロナ禍前に迫ってきた。しかし、登山道の大渋滞や、夜通し休憩を挟まずご来光を目指す「弾丸登山」が問題となっている。そこで県は24年3月、登山規制に向けた条例を制定した。

長崎知事もゲート通行を体験。事前決済しておけば、QRコードでスムーズに通行証のアームリストを交付される
長崎知事もゲート通行を体験。事前決済しておけば、QRコードでスムーズに通行証のアームリストを交付される

通行料とは別に富士山保全協力金1000円を支払うと、オリジナルの富士ヒノキ木札ストラップがもらえる
通行料とは別に富士山保全協力金1000円を支払うと、オリジナルの富士ヒノキ木札ストラップがもらえる

現地を訪れた長崎幸太郎知事は「国内外全ての登山者に豊かな時間を過ごしてもらうため」と規制に理解を求めた。県は訪日客に向けて、海外メディアや大使館、旅行サイトを通じて情報発信している。

富士山の「収容力に見合った来訪者の適正化」は、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)から与えられた世界遺産登録の条件。本施策を「オーバーツーリズム対策の“解”。全国のモデルケースにしたい」(長崎知事)と、世界に向けた公約実現への第一歩を踏み出した。今シーズンは仮設ゲートで運用し、成果と課題を踏まえて来年度からの常設化を目指す。

登山者にGPS端末を配布して人流データの分析も実施
登山者にGPS端末を配布して人流データの分析も実施

取材・文・撮影=ニッポンドットコム編集部

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