「光る君へ 越前 大河ドラマ館」福井県越前市にオープン:紫式部が生涯でただ一度、都を離れて暮らした地

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NHK大河ドラマ『光る君へ』の放送に合わせ、主人公の紫式部が生涯でただ一度、都を離れて暮らした福井県越前市に、「しきぶきぶんミュージアム」がオープンした。メインコンテンツとなる「光る君へ 越前 大河ドラマ館」では、ドラマの撮影で使用された衣装の展示やオリジナル動画などを通して、紫式部の越前での暮らしに思いをはせることができる。

紫式部が青年期に過ごした越前・武生

紫式部は生涯で一度だけ京都を離れて暮らしたことがある。そこは越前国の中心として国府が置かれた武生(たけふ)、現在の福井県越前市である。越前国司(越前守)に任じられた父・藤原為時に付き添い、996年頃に訪れ、1年余りを過ごしたといわれる。

紫式部の正確な生没年は分かっていないが、近年の研究では、970年代に生まれたとされる。武生での暮らしは彼女の青年期にあたり、雄大な自然や風景、1500年の歴史を持つ「越前和紙」との出会い、さまざまな面で都と異なる越前での経験は、その後の創作活動に大きな影響を与えたといわれ、『源氏物語』にも武生の地名が登場する。

越前市内には、紫式部をしのんでつくられた広さ1万9000平方メートルもの「紫式部公園」がある。平安時代の貴族の住居を模した、全国でも珍しい寝殿造りの庭園で、式部が歌に詠んだ日野山を借景に、釣殿(つりどの)、池、築山が配され、金箔で仕上げられた十二単(じゅうにひとえ)姿の紫式部像が立つ。また、同公園に隣接して、紫式部と越前市のかかわりを紹介する「紫式部と国府資料館」(愛称・紫ゆかりの館)が2021年4月に開館している。

平安時代の趣を今に伝える「紫式部公園」。JR武生駅から白山行き福鉄バス「紫式部公園口」下車(写真提供:福井県観光連盟)
平安時代の趣を今に伝える「紫式部公園」。JR武生駅から白山行き福鉄バス「紫式部公園口」下車(写真提供:福井県観光連盟)

高さ約3メートルの紫式部像。春は園内を彩る桜との共演が見事(写真提供:福井県観光連盟)
高さ約3メートルの紫式部像。春は園内を彩る桜との共演が見事(写真提供:福井県観光連盟)

「紫式部と国府資料館」では、式部が越前での暮らしを原動力に『源氏物語』を著すまでをアニメーション映像などで絵巻物風に紹介している(写真提供:福井県観光連盟)
「紫式部と国府資料館」では、式部が越前での暮らしを原動力に『源氏物語』を著すまでをアニメーション映像などで絵巻物風に紹介している(写真提供:福井県観光連盟)

為時の居室を再現したフォトスポットも

「しきぶきぶんミュージアム」は、越前市の情報発信、文化振興などに取り組む官民組織「紫式部プロジェクト推進協議会」(会長:山田賢一・越前市長)が、武生中央公園・屋内催事場に2月23日にオープン。12月30日まで開設している。

メインコンテンツとなる大河ドラマ館のほか、越前の文化や歴史を紹介する「越前歴史展示」や、ドラマ公式グッズや越前和紙の雑貨、福井土産の定番・羽二重(はぶたえ)餅、越前そばなど約450アイテムが並ぶ「お土産処  光る越前SHOP」がある。福井県内に大河ドラマ館ができたのは初めてで、オープン前日には、紫式部を演じる吉高由里子さんと、式部の父・藤原為時役の岸谷五朗さんが見学に訪れた。

館内には、2人が撮影で実際に着用した平安衣装が登場。まひろ(紫式部)が父に内緒で行っていた代筆仕事のシーンで使用された恋文の木簡など、小道具も展示されている。出演者の等身大パネルや、為時の居室を再現したコーナーなど、来館者が記念撮影できるフォトスポットも用意されている。

為時の居室を再現したコーナーで写真撮影をする吉高由里子さんと岸谷五朗さん(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)
為時の居室を再現したコーナーで写真撮影をする吉高由里子さんと岸谷五朗さん(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)

出演者の等身大パネルや人物相関図も展示(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)
出演者の等身大パネルや人物相関図も展示(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)

「4Kシアター」では、当館でしか見られないオリジナル動画を披露。吉高さんや岸谷さん、脚本を手掛けた大石静さんのインタビューを交えながら、ドラマのストーリーを深掘りし、式部の気持ちの変化に迫る。さらに、越前国府の国庁の所在地とされ、現在、発掘調査が進められている本興寺など、越前市内に点在する式部ゆかりの地を紹介するビデオも上映する。

本興寺の紅梅の木。紫式部が998年、父・藤原為時とともに京都へ帰る際、同寺に梅を植えたと伝えられる。式部が植えた梅は白梅だったが、式部の没後、娘の賢子が母をしのんで紅梅を植え、現在の紅梅は4代目という。JR武生駅から徒歩10分(写真提供:福井県観光連盟)
本興寺の紅梅の木。紫式部が998年、父・藤原為時とともに京都へ帰る際、同寺に梅を植えたと伝えられる。式部が植えた梅は白梅だったが、式部の没後、娘の賢子が母をしのんで紅梅を植え、現在の紅梅は4代目という。JR武生駅から徒歩10分(写真提供:福井県観光連盟)

幻想空間で式部の思考を体感

一方、「越前歴史展示」での見どころは、AIを用いて紫式部の心と頭の中を疑似体験するインスタレーション(空間展示)。

無数の帯状の越前和紙が垂らされた洞窟状のゾーンを抜けると、全面鏡張りの小部屋に入り、そこには『源氏物語』や式部の和歌から抽出した単語の造形が吊るされている。空間内のモニターには、それらの単語からAIで生成された映像が流れ、式部が越前の自然や風土から受けた創作のインスピレーションを体感することができる。

「越前歴史展示」に設けられた越前和紙の洞窟(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)
「越前歴史展示」に設けられた越前和紙の洞窟(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)

紫式部の創造力を鏡とAIで表現した空間展示「想創庵」(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)
紫式部の創造力を鏡とAIで表現した空間展示「想創庵」(写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会)

【光る君へ 越前 大河ドラマ館 概要】

  • 開催期間:2024年2月23日~12月30日
  • 開催時間:9時~17時(最終入場16時30分)
  • 休館日:無休
  • 住所:福井県越前市高瀬2丁目27-7-1 武生中央公園屋内催事場「しきぶきぶんミュージアム」内
  • アクセス:JR武生駅からシャトルバス運行

文:ニッポンドットコム編集部

バナー写真:紫式部を演じる吉高由里子さんが撮影で着用した衣装や、式部の父・藤原為時の居室を再現した「光る君へ 越前 大河ドラマ館」の館内光景 写真提供:紫式部プロジェクト推進協議会

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