大河ドラマ「光る君へ」の舞台へ―滋賀県おすすめの紫式部&源氏物語ゆかりのスポットを巡る

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NHK大河ドラマ「光る君へ」の放送開始に合わせて1月29日、滋賀県大津市の石山寺の境内に、ドラマの世界観を楽しめる「光る君へ びわ湖大津 大河ドラマ館」がオープンした。また、同月23日にはJR東海道本線・山陽本線、米原(まいばら)駅~上郡(かみごおり)駅間でラッピング列車「びわこおおつ 紫式部とれいん」の運行がスタート。滋賀県内には、紫式部や源氏物語ゆかりの地が数多く存在する。

紫式部が『源氏物語』の構想を練った石山寺

世界最古の長編小説ともいわれ、千年の時を超えて読み継がれる『源氏物語』。その作者・紫式部を主人公とする大河ドラマ「光る君へ」の放送が始まり、舞台となる宇治や嵯峨野を訪ねる観光客が増えている。だが、紫式部ゆかりの地は京都ばかりではない。隣県の滋賀にも琵琶湖や比叡山の周辺を中心に点在する。そこで、滋賀県観光振興局おすすめのスポットをいくつか紹介してみると──。

■石山寺(大津市)

本堂、多宝塔をはじめ、経典聖教類、仏像、絵巻など多くの国宝、国重要文化財を保有する石山寺。その名の通り、世界的にも珍しい巨大な硅灰石(けいかいせき、国の天然記念物)の上に立ち、奈良時代後期に聖武天皇の発願により開かれた。平安時代には貴族や文学者らが盛んに「石山詣(もうで)」を行った。

一条天皇の中宮(皇后)である藤原彰子(しょうし)から新たな物語の執筆を命じられた紫式部は、執筆祈願のため石山寺に7日間こもったとされる。本堂内にある「源氏の間」は、紫式部が『源氏物語』を起筆した部屋と伝えられる。

源頼朝の寄進と伝えられ、下層裏面にある墨書により1194年に建立されたことが判明している石山寺の多宝塔(国宝)。建築年代が明確なものでは最古の多宝塔となる 写真提供:滋賀県
源頼朝の寄進と伝えられ、下層裏面にある墨書により1194年に建立されたことが判明している石山寺の多宝塔(国宝)。建築年代が明確なものでは最古の多宝塔となる 写真提供:滋賀県

本堂の一角にある「源氏の間」。『源氏物語』を執筆中の紫式部像が置かれている 写真提供:滋賀県
本堂の一角にある「源氏の間」。『源氏物語』を執筆中の紫式部像が置かれている 写真提供:滋賀県

境内の明王院にオープンした「光る君へ びわ湖大津 大河ドラマ館」では、出演者やスタッフへのインタビューやメイキング映像などを4Kシアターで上映。ドラマに登場する衣装や小道具も展示し、平安文化と女性文学者たちの“息吹”が伝わるよう趣向を凝らしている。2025年1月31日まで。

「大河ドラマ館」の会場となる石山寺明王院 写真提供:滋賀県
「大河ドラマ館」の会場となる石山寺明王院 写真提供:滋賀県

また、世尊院では「源氏物語 恋するもののあはれ展」を同時開催。イラストレーター・日菜乃による描き下ろしイラストや、音楽アーティスト「あたらよ」によるオリジナル楽曲で、源氏物語の「恋」の世界を色・香り・花で現代的に表現する。

『源氏物語 恋するもののあはれ展』キービジュアル 写真提供:滋賀県
『源氏物語 恋するもののあはれ展』キービジュアル 写真提供:滋賀県

【アクセス】京阪電鉄石山坂本線石山寺駅から徒歩10分、JR東海道本線(琵琶湖線)石山駅からバス10分の石山寺山門前下車すぐ

光源氏と空蝉(うつせみ)がすれ違った「逢坂(おうさか)の関」

■逢坂の関(大津市)

京の都の東の出口に位置し、古来交通の要所として栄えた逢坂の関。源氏物語では、石山寺へ参詣する光源氏と、常陸国から都に帰って来た空蝉が偶然すれ違う、再会のシーンで登場する。

山城国と近江国の国境となっていた関所「逢坂の関」 写真提供:滋賀県
山城国と近江国の国境となっていた関所「逢坂の関」 写真提供:滋賀県

【アクセス】京阪電鉄京津線大谷駅から徒歩3分、JR東海道線(琵琶湖線)大津駅から徒歩15分

■白鬚(しらひげ)神社(高島市)

「近江の厳島(いつくしま)」とも呼ばれる近江最古の大社。社名の通り、延命長寿・長生きの神様として知られる。 996年、紫式部の父・藤原為時は越前守を任じられ、紫式部は父と共に琵琶湖の西岸をたどり越前へと向かう。途中、三尾(みお)崎でいったん上陸し、一夜を明かした。

三尾崎は、白鬚神社付近と考えられており、神社の境内には、紫式部が漁をする人々の網を引く見慣れぬ光景に、都の生活を恋しく思い出して詠んだ、「三尾の海に 網引く民の てまもなく 立ち居につけて 都恋しも」の歌碑が建てられている。

湖中に朱塗りの大鳥居があり、国道161号線をはさんで白鬚神社の社殿が立つ 写真提供:滋賀県
湖中に朱塗りの大鳥居があり、国道161号線をはさんで白鬚神社の社殿が立つ 写真提供:滋賀県

【アクセス】JR湖西線近江高島駅から徒歩40分

■あやめ浜(野洲市)

琵琶湖の東岸、琵琶湖大橋の少し北にある公園「あやめ浜」には、遠くの沖島(近江八幡市)を望んで、紫式部が湖面の穏やかさを詠んだとされる「おいつ島 島守る神や いさむらん 波もさわがぬ 童部(わらわべ)の浦」の歌碑が建てられている。

琵琶湖の東に浮かぶ沖島。日本で唯一の湖の有人島 写真提供:滋賀県
琵琶湖の東に浮かぶ沖島。日本で唯一の湖の有人島 写真提供:滋賀県

【アクセス】JR東海道本線(琵琶湖線)野洲駅からバス30分のあやめ浜下車すぐ

道長が奉納した菩薩像が秘伝として伝わる三井(みい)寺

■三井寺(大津市)

1200年余の歴史を持つ、天台寺門派の総本山。紫式部の叔父・康延(こうえん)と異母兄弟の定暹(じょうせん)は、三井寺の僧侶だった。父の為時も古稀を過ぎて三井寺に出家したという。また、藤原道長からの信仰も厚く、道長が奉納した弥勒菩薩(みろくぼさつ)が秘仏として伝わっている。7月31日まで「紫式部関係文書特別展」が開催されており、寺門伝法灌頂血脈譜、源氏物語湖月抄など三井寺所蔵の紫式部に関する品6点を初公開。

琵琶湖南西の長等山中腹に広大な敷地を有する三井寺。正式名称は「長等山園城寺(おんじょうじ)」。西国三十三所観音零場の第14番札所であり、近江八景「三井の晩鐘」、桜の名所としても知られる 写真提供:滋賀県
琵琶湖南西の長等山中腹に広大な敷地を有する三井寺。正式名称は「長等山園城寺(おんじょうじ)」。西国三十三所観音零場の第14番札所であり、近江八景「三井の晩鐘」、桜の名所としても知られる 写真提供:滋賀県

【アクセス】京阪電鉄石山坂本線三井寺駅から徒歩7分、JR東海道本線(琵琶湖線)大津駅・JR湖西線大津京駅から車で10分

このほかにも、滋賀県内には以下のような紫式部ゆかりの地が点在している。

■打出浜(大津市)

紫式部が父の赴任に伴い越前(福井県武生市)へ旅立ったとされる琵琶湖畔の浜辺

■融(とおる)神社(大津市)

寛平年間(889年~898年)創建。光源氏のモデルとされる源融(みなもとのとおる)が祀られている

■比叡山延暦寺 横川中堂・恵心(えしん)堂(大津市)

『源氏物語』の53帖「手習」と54帖「夢浮橋」の舞台。最後のヒロイン・浮舟の人生と深くかかわる横川の僧都(そうず)が修行している場所で、恵心僧都源信と源氏物語の石碑がある

■比叡山延暦寺 法華堂(大津市)

4帖「夕顔」の舞台。夕顔の死を悼んだ光源氏が四十九日の法要を行った場所として登場

■比叡山延暦寺 慈眼堂(大津市)

天台宗の最高位である歴代の天台座主の墓のほか、清少納言や紫式部の供養塔がある

■塩津神社(長浜市)

紫式部が参拝し、旅の安全を祈願したとされる琵琶湖北岸にある神社

■三上山(野洲市)

「打ち出でて 三上の山を ながむれば 雪こそなけれ ふじのあけぼの」と紫式部も歌にした流麗な姿の独立峰。「近江富士」とも呼ばれる

■礒崎神社周辺(米原市)

「磯がくれ 同じ心に 田鶴ぞ鳴く 汝が思ひ出づる 人や誰ぞも」―紫式部が越前から京に戻る際、琵琶湖と鶴を見て心境を詠んだ地域

ラッピング列車「びわこおおつ 紫式部とれいん」

平安時代、貴族や文学者らに人気のあった、京の都から大津の石山寺に詣でる「石山詣」の様子や、石山寺から満月を眺める紫式部の姿をイメージしたラッピング列車。大津市と大津市大河ドラマ「光る君へ」活用推進協議会、JR西日本が共同で企画した。

車内では、いにしえの人々が詠んだ和歌や、詠われてきた大津の美しい景色、知られざる平安と大津の物語などを紹介している。運行期間は3年程度の予定で、1編成6両の225系車両に導入。東海道本線・山陽本線米原~上郡間(琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線)で快速・普通列車として毎日運行される。

ラッピング列車の外観デザイン(イメージ) 画像提供:大津市
ラッピング列車の外観デザイン(イメージ) 画像提供:大津市

ラッピング列車の内装イメージ  写真提供:大津市
ラッピング列車の内装イメージ  写真提供:大津市

文:ニッポンドットコム編集部

バナー写真:紫式部が参籠し『源氏物語』の構想を練ったという伝承が残る滋賀県大津市の石山寺。「大河ドラマ館」は同寺の境内に設置されている 写真提供:滋賀県

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