建立900年 特別展「中尊寺金色堂」東京国立博物館で1月23日から―中央壇上の国宝仏像11体すべてを初めて寺外でそろって展示

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中尊寺金色堂(岩手県平泉町)の建立900年を記念して、建立900年 特別展「中尊寺金色堂」が東京・上野公園の東京国立博物館で1月23日~4月14日に開催される。金色堂内の中央壇に安置される国宝の仏像11体すべてがそろって寺外で公開されるのは初めて。さらに、8KCG画像データを駆使して大型ディスプレイ上に原寸大の金色堂を再現する。

奥州藤原氏の栄華を今に伝える

国宝・中尊寺金色堂(ちゅうそんじこんじきどう)は、平安時代後期の1124年、陸奥国府の豪族・藤原清衡(きよひら)が建立した仏堂。京の藤原北家の流れをくむ清衡は、豊かに産出する砂金をもとに京文化の摂取に努め、続く基衡(もとひら)、秀衡(ひでひら)の三代で、平泉に荘厳華麗な文化の花が開く。

三代当主・秀衡は、平家討伐の立役者・源義経の庇護者としても知られ、兄・頼朝と対立し平泉に落ち延びた義経をかくまう。だが、秀衡の死後、当主となった泰衡(やすひら)は父の遺言に背いて義経を襲撃、自害に追い込む。

お家存続のため、頼朝の圧力に屈し義経を裏切った泰衡だったが、結局は、頼朝自ら率いる大軍の攻撃により奥州藤原氏は滅び、その栄華はおよそ100年で幕を閉じた。

金色堂は、京都・宇治の平等院鳳凰堂(びょうどういんほうおうどう)と並ぶ平安時代の浄土教建築の代表例とされ、東北地方に現存する最古の建造物。1951年に国宝建造物第1号の指定を受け、その他3000点以上もの宝物が国宝・国重要文化財に指定されている。

建物の内外を金色に飾り、螺鈿蒔絵(らでんまきえ)の漆工技法による装飾が施された絢爛豪華な姿は、まさに「この世の極楽浄土」を具現している。

奥州藤原氏の栄華を伝える一方で、金色堂は彼らが今なお眠る聖地。2011年に世界遺産に登録された「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」の5つの構成要素の一つでもある。

中尊寺風景・冬(金色堂覆堂) 写真提供:中尊寺

国宝 中尊寺金色堂外観 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵

中央壇上の国宝仏像11体がそろい踏み

金色堂は西を背に東を向いて建てられている。堂内には3つの須弥壇(しゅみだん=本尊を安置する場所)が設けられ、それぞれの内部に置かれた棺には、奥州藤原氏四代の遺体が納められている。このうち最も重要な中央壇に藤原清衡が眠ると考えられている。

本展では、これら中央壇の壇上に安置される11体の国宝すべてを展示する(※バナー写真参照)。中央壇の仏像がそろって寺外で公開されるのは史上初となる。

阿弥陀三尊像

これら11体の仏像の中で、定印(じょういん)を結ぶ(両手をへその下で重ねる)阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)を中心に、前方左右に観音菩薩立像(かんのんぼさつりゅうぞう)と勢至菩薩立像(せいしぼさつりゅうぞう)が並ぶ。全身皆金色(かいこんじき)の三尊であり、ふっくらとした頬を持ち、穏やかで優美な表現が特徴だ。

この三尊像は当初より中央壇に安置されていた可能性が高いとされる。清衡が創建した時の像であるならば、当時の京都の一流仏師による像と遜色のない仏像が、はるか遠くの奥州に伝えられていたことになり、平泉の文化水準の高さをうかがい知ることになる。

国宝 阿弥陀三尊像 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵

地蔵菩薩像&二天像

阿弥陀三尊の両脇に3体ずつ安置されるのが地蔵菩薩立像。阿弥陀三尊と六地蔵のセットは、六道輪廻(ろくどうりんね=前世の良い行いの結果としては楽を、悪い行いの結果としては苦しみを来世で受ける)からの救済を願う当時の往生思想を体現したものと考えられる。

このほか、大きく腰をひねり手を振り上げるなど躍動感にあふれ、鎌倉様式を先取りした先駆的感覚が特徴の持国天(じこくてん)・増長天(ぞうじょうてん)の「二天像」や、極楽浄土に住むという人頭鳥身の迦陵頻伽(かりょうびんが)を表した「華鬘(けまん)」なども展示する。

(左)国宝 増長天立像 (右)国宝 持国天立像 平安時代・12世紀 岩手・中尊寺金色院蔵

デジタル技術で「この世の浄土」を間近に

本展では、金色堂や壇上の仏像など堂内空間の8K画像データを活用した超高精細CG (8KCG)により、幅約7m×高さ約4mの大型ディスプレイ上に、原寸大の金色堂を再現する。

8KCG映像パースイメージ ©NHK

これはNHKと東京国立博物館が共同開発したデジタルアーカイブの手法で、実物を写し取るかのように、外観、堂内装飾、仏像のすべてを網羅的に記録。具体的には、8Kを超える解像度の静止画像(9504×6336ピクセル)を1万枚以上撮影し、フォトグラメトリ技術(さまざまな角度から撮影した写真をもとに立体的なCGを作る技術)を使って3DCGを制作。また、3Dスキャナーを用いて金色堂や仏像を計測し、実物の形状を限りなく正確に表したという。

金色堂は、現地ではガラスケースの外から拝観するしかない。だが、本展ではテクノロジーの力により、来館者は「この世の浄土」を間近に鑑賞でき、金色堂の魅力を再発見することができる。

文:ニッポンドットコム編集部
バナー写真:国宝 中尊寺金色堂(中央壇・部分)

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