「巡礼」は国境や宗教を越える―日本最古の巡礼道「西国三十三所」がスペイン「サンティアゴ巡礼路」と友好提携
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1300年続く日本遺産巡礼道×スペインの世界遺産巡礼路
西国三十三所は、滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・岐阜の2府5県に点在する33の札所(ふだしょ)寺院。巡礼道の総距離は1000kmに及ぶ。2019年に「1300年つづく日本の終活の旅~西国三十三所観音巡礼~」として、日本遺産に認定された。
718年、大和国(やまとのくに、現在の奈良県)長谷寺(はせでら)の徳道上人(とくどうしょうにん)は病で仮死状態となり、冥府で出会った閻魔(えんま)大王から、世の中の悩み苦しむ人々を救うために33の観音霊場を開くよう命じられる。これが巡礼道の起源といわれる。
当初、僧侶や修験者たちの修行の道であった西国三十三所は、時代とともに整備され、誰もが訪れることができる巡礼の道として発展。さらに、関東1都6県に「坂東(ばんどう)三十三所」、埼玉県秩父地方に「秩父三十四所」が創設され、合わせて日本百観音霊場を形成。近年の「御朱印ブーム」で女性や熟年層の観光地ともなっている。
西国三十三所の各札所の本尊は「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」。一般的には「観音(かんのん)さま」と呼ばれ、日本人が古くから親しんできた。悟りを開いて如来(にょらい)となるための修行をしている仏様で、人間に近い形をしており、33種の姿に臨機応変に変身し、困っている人の前に現れるとされる。
33の札所寺院では、「聖(しょう)観音」「十一面観音」「不空羂索(ふくうけんじゃく)観音」「千手(せんじゅ)観音」「如意輪(にょいりん)観音」「馬頭(ばとう)観音」「准胝(じゅんてい)観音」の7種の観音さまが巡礼者を出迎え、極楽浄土への通行手形とされる御朱印を入手できる。
一方、サンティアゴ巡礼路も1000年以上の歴史を持つ巡礼道。サンティアゴとはイエスの十二使徒の一人、聖ヤコブのスペイン語名。十二使徒中、最初の殉教者であり、一説によると、9世紀はじめ、星の導きにより聖ヤコブの墓が見つかり、その場所に教会を建て、カンポ(野原)とステーラ(星)を合わせてコンポステーラという地名が付けられたという。
キリスト教の三大巡礼地の一つであり、「クレデンシャル」という巡礼手帳を携え、スペイン北西部・ガリシア州の州都、サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂を目指す。「フランス人の道」「イギリス人の道」など欧州各地から巡礼路が延びており、巡礼者は年間30万人を数える。
今回友好提携を結んだのは、西国三十三所の札所と自治体などでつくる協議会とスペイン・ガリシア州。今後は、6月18日に5カ所の巡礼地(サンティアゴ、西国2カ所、坂東、秩父)をオンラインで結んで同日巡礼が催されるほか、10月にはスペインへの表敬訪問を行うなど文化交流を進めていく。
問い合わせは、日本遺産「日本の終活の旅」推進協議会 事業推進担当 観音正寺 岡村遍導 電話0748・46・2549まで。
バナー写真:西国三十三所観音霊場の第一番札所、和歌山県那智勝浦町の那智山青岸渡寺(なちさんせいがんとじ)の三重の塔と那智の大滝 提供:日本遺産「日本の終活の旅」推進協議会