“戦闘服”のコンセプトは「折り紙」―日本の伝統手芸に祈りを込め、悲願のベスト8を目指すサッカーW杯日本代表

スポーツ

熱戦が続くサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会。ドイツ、スペインを撃破して決勝トーナメント進出を果たした日本代表は、「ORIGAMI(折り紙)」をコンセプトにしたユニホームで悲願のベスト8入りを目指す。

ORIGAMIは「歓喜をもたらす祈りの象徴」

およそ3年ぶりにデザインが一新されたサッカー日本代表のユニホーム。9月23日にドイツで行われた米国代表との国際親善試合から使用されている。

デザインの基本概念は「ORIGAMI(折り紙)」。

2002年に韓国と共同開催したW杯日韓大会で、決勝終了後、会場の横浜国際総合競技場(現・日産スタジアム)で勝者を祝い270万羽の折り鶴が空に舞い上がった。このエピソードに着想を得て、折り紙を勝利と歓喜をもたらす祈りの象徴とした。

さらに、「山あり、谷あり」の歴史を経て進化を続けてきた日本代表の軌跡に、折り紙の「山折り・谷折り」を重ね合わせている。

アディダスジャパンが手掛けたサッカー日本代表2022ユニホーム(ホーム用)。男女ともデザインは同じ
アディダスジャパンが手掛けたサッカー日本代表2022ユニホーム(ホーム用)。男女ともデザインは同じ

ホーム用ユニホームは青を基調に、前面に折り紙のグラフィックデザイン―折り線や展開図―が施されている。従来と異なるのが日の丸の位置。これまでは左胸のエンブレムの上に配していたが、今回は背面上部。「“国を背負う”と同時に、“サポーターの応援が背中を押す”というメッセージを込めた」とアディダスジャパン広報は説明する。

また、試合をテレビやスマートフォンなどで見る際の視認性を考慮して、背番号は黄色となっている。

首の内側部分の赤いパネルは、2011年にカタールでアジア王者となった際に着用していたユニホームから採用。「再びカタールで歓喜の瞬間を!」との願いを込めた
首の内側部分の赤いパネルは、2011年にカタールでアジア王者となった際に着用していたユニホームから採用。「再びカタールで歓喜の瞬間を!」との願いを込めた

一方、アウェー用はシャツが白、パンツは初めて黒が用いられた。こちらもホーム用と同様、折り紙をコンセプトに考案されたグラフィックが袖部分を中心に描かれ、さらに青と赤を重ねることで立体的な印象を与える「アナグリフ」という手法が用いられている。

折り紙が幾層にも重なって見えるアウェー用ユニホーム
折り紙が幾層にも重なって見えるアウェー用ユニホーム

“新戦闘服”の印象について、日本代表の南野拓実選手は「日本代表のブルーのユニホームを着て戦うことは、選手にとっての誇り。今回も『これを着て戦うぞ!』と思わせてくれるデザインです」とコメント。

浅野拓磨選手は「高校生の頃、OBの方に託された千羽鶴を持って全国大会に向かった思い出があります。願いや祈りが込められた折り紙には力があると思うので、その力を身にまとって戦いたい。これまでの伝統や日本代表が重ねてきたすべてを背負って、泥臭くても全力でプレーして、勝利に貢献したい」と意気込む。

南野拓実選手
南野拓実選手

ユニホームで振り返るW杯日本代表

そのユニホームカラーから「SAMURAI BLUE(侍ブルー)」と呼ばれる日本代表。W杯に初出場した1998年フランス大会では、アシックスがユニホームを手掛けたが、1999年にアディダスが日本サッカー協会とサプライヤー契約を締結して以降、日韓大会からは全ての大会で同社がサプライヤーを務めている。

アシックスが手掛けた1998年モデル(W杯フランス大会用)を着てプレーする中田英寿選手。両袖にあしらった炎の柄が印象的で「炎モデル」とも称される。不動明王が背負う炎「迦楼羅炎(かるらえん)」をモチーフにしている 共同
アシックスが手掛けた1998年モデル(W杯フランス大会用)を着てプレーする中田英寿選手。両袖にあしらった炎の柄が印象的で「炎モデル」とも称される。不動明王が背負う炎「迦楼羅炎(かるらえん)」をモチーフにしている 共同

【2002年日韓大会】(ベスト16)

コンセプト:富士山

シンプルなデザインで日本の美を表現。左右の首元から両袖口にかけて走る赤のパイピングは、湖面に映る「逆さ富士」をイメージしたもの。

2002年日韓大会 「富士山」
2002年日韓大会 「富士山」

【2006年ドイツ大会】(1次リーグ敗退)

コンセプト:刃文

日本代表のキャッチフレーズに決まった「SAMURAI BLUE」にちなみ、 日本の伝統と技術の象徴である「日本刀」をイメージ。刀身に見られる波模様の「刃文(はもん)」をモチーフに、ジャパンブルーの美しい海に囲まれた国土から、淡いブルーの空(世界)へ高く羽ばたく姿を表現した。

2006年ドイツ大会「刃文」
2006年ドイツ大会「刃文」

【2010年南アフリカ大会】(ベスト16)

コンセプト:革命に導く羽

岡田武史監督が目標に掲げたW杯ベスト4を実現するため、「革命に導く羽」をデザインのテーマに掲げた。シャツの前身頃に、日本サッカー界のシンボル「八咫烏(やたがらす)」をイメージした羽をあしらっている。胸元の赤い四角も印象的。機能の異なる2タイプが用意され、プレースタイルやピッチ状態などに応じて選手が選択できた。

2010年南アフリカ大会「革命に導く羽」
2010年南アフリカ大会「革命に導く羽」

【2014年ブラジル大会】(1次リーグ敗退)

コンセプト:円陣

選手とサポーターがひとつになって戦うため、「円陣」をコンセプトにデザイン。背面に施されたネオンカラー(蛍光色)の一本線は、代表選手やサポーターが円陣を組んだ際、ひとつの大きな輪となるように配置されている。エンブレムを中心に広がる左胸の11本のラインは、円陣を組んだ後、戦いに向けてピッチへと広がる選手たちを表現。

2014年ブラジル大会「円陣」
2014年ブラジル大会「円陣」

【2018 ロシア大会】(ベスト16)

コンセプト:勝色

ジャパンブルーの原点に立ち返り、「勝色」を意味する日本の伝統色、深く濃い藍色をベースカラーに採用。「刺し子柄」に、日本サッカーの歴史を築いてきた選手やスタッ フ、サポーターたちの想いを紡ぎ、ロシア大会へ挑むというメッセージを込めている。Vネック部分には、侍の着物の前あわせ部分にインスパイアされた、日の丸の赤を表現する「ビクトリーレッド」を配した。

2018年ロシア大会「勝色」
2018年ロシア大会「勝色」

【番外編その1】

前回ロシア大会では、海外でも人気の熊本県のPRキャラクター「くまモン」にも、日本サッカー協会から特製の代表ユニホームが贈られた。ちなみに、55番はくまモンのツイッターのユーザー名から取ったもの。

贈呈された日本代表のユニホームを着たくまモンと、熊本県サッカー協会関係者ら(2018年5月17日、熊本市・熊本県庁) 時事
贈呈された日本代表のユニホームを着たくまモンと、熊本県サッカー協会関係者ら(2018年5月17日、熊本市・熊本県庁) 時事

【番外編その2】

アディダスジャパンでは、W杯本大会用以外にも日本代表ユニホームを制作しており、斬新なデザインや機能を提供し続けてきた。

例えば、2020-21年ユニホームは「日本晴れ(ニッポンバレ」がコンセプト。それぞれの選手やサポーターたちが、それぞれの地点で見てきた空が一つにつながり、雲一つない“日本晴れ”に向かっていく様子を、5色の青を用いた“スカイコラージュ”で表現。背面は明るく鮮やかなスカイブルー一色となっている。

浮世絵から着想を得たデザインとして話題となった「日本晴れ」。東京五輪でも着用された
浮世絵から着想を得たデザインとして話題となった「日本晴れ」。東京五輪でも着用された

バナー写真:「ORIGAMI」ユニホームを着て、米国との国際親善試合に臨む日本代表先発イレブン(2022年9月23日、ドイツ・デュッセルドルフ)時事

文:ニッポンドットコム編集部

画像提供:アディダスジャパン

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