ニッポンの桜

【動画】函館 五稜郭:桜で彩られた薄紅色の星

旅と暮らし

・公園内に約1600本のソメイヨシノが咲き乱れる
・「桜の標準木」が設置されており、その咲き具合で函館の開花宣言が行われる
・五稜郭(ごりょうかく)タワーから「ピンクの星」が見下ろせる

戊辰戦争最後の戦闘地が花見の名所に

北海道で札幌、旭川に次いで3番目に人口が多く、観光地としても人気が高い函館市。そのシンボルといえるのが、星形の土塁を持つ「特別史跡 五稜郭跡」だ。春になると1600本の桜が咲き誇り、北海道で一、二を争う人気の花見スポットとなる。例年は4月末の開花で5月5日前後が見頃だが、2018年は4月25日に開花して28~30日頃には満開を迎えた。

五稜郭公園内の桜並木

五稜郭は、箱館(「函館」は1869年まで「箱館」と表記)御役所(奉行所)として設計され、1864(元治元)年に完成した建造物。鎖国政策を採っていた江戸幕府は、ペリー来航によって1854(嘉永7)年3月に日米和親条約を締結した。伊豆の下田と蝦夷(えぞ)地の箱館の2カ所を開港したが、函館山の麓にあった従来の奉行所では、海外諸国との交渉の場や防衛の基点として不十分であった。そのため、移転先として設計されたのが、ヨーロッパの「城郭都市」をモデルにした土塁を有する五稜郭である。しかし、完成4年後には幕府は終焉(しゅうえん)を迎える。

日本三大夜景に数えられる函館山の夜景。この麓にあった箱館奉行所が、五稜郭に移転した

五稜郭が歴史に名を残すのは、「戊辰(ぼしん)戦争最後の戦闘地」としてだ。1868(慶応4)年の江戸城の無血開城に不満を持った旧幕府軍は、江戸から北上しながら新政府軍と戦闘を繰り広げていく。その代表格が、当時の最新戦艦・開陽などを含む艦隊を率いて脱走した幕府海軍副総統・榎本武揚(たけあき)。榎本らは蝦夷地に旧幕臣を集め、北方の防衛と開拓事業にあたらせようと計画。その本拠地となったのが、占領した五稜郭だった。しかし、1869(明治2)年の箱館戦争で旧幕府軍は新政府軍に降伏し、五稜郭を引き渡した。

2010年に五稜郭公園内に復元された箱館奉行所

その後、陸軍の練兵場として利用されていたが、1914(大正3)年に函館市民の要請などによって五稜郭公園として一般開放される。同年から10年がかりで、函館毎日新聞社が1万本以上のソメイヨシノを植樹。そのおかげで、桜の名所としても親しまれるようになったという。現在は約1600本の桜が残っており、函館の開花宣言をするための標準木は五稜郭内の桜が使用されている。

堀の水面に映る「逆さ桜」

「ピンクの星」が見下ろせる五稜郭タワー

桜のトンネルをゆっくりと散歩したり、堀の水面に映る「逆さ桜」を眺めたりするのも良いが、一度は見ておきたいのが「五稜郭タワー」展望台からの絶景だ。

桜並木をめでながら五稜郭タワーへ

五稜郭タワーは、築城100周年の1964(昭和39)年に高さ60メートルの初代タワーが建造された。2006(平成18)年に初代が解体され、現在の新タワー(107メートル)がオープン。展望台は1階が86メートル、2階が90メートルの高さで、函館山や津軽海峡まで見渡せる。そして、五稜郭を見下ろせば、星形の城郭がはっきりと確認できる。

展望台からの眺望。星形が薄紅色に染まる

特に桜の季節には、郭内だけでなく堀の外側まで薄紅色に染まった「ピンクの星」が楽しめる。この時期限定で五稜郭公園内の花見電飾も実施されているので、閉館間際の夕暮れ時に展望台へ上るのも人気だ。

かつての戦場が、今や市民の憩いの場となっている

【周辺情報】

異国情緒あふれる函館の元町&ベイエリア

早くに開港された函館の観光名所には、西洋風の歴史的建造物が多い。函館山の麓にある元町のランドマーク的存在・旧函館区公会堂、開港ミュージアムやカフェがある函館市旧イギリス領事館、12世紀のゴシック建築様式を用いたカトリック元町教会などは観光客でにぎわう。

元町のシンボル・旧函館区公会堂

桜越しに見るカトリック元町教会の大鐘楼

そして近年注目されているのが、旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で一つ星を獲得した「函館港の散策」。そのベイエリアを代表する西洋風建造物が「金森赤レンガ倉庫」だ。1887(明治20)年に創業した金森倉庫が、1988(昭和63)年にショッピングモールを兼ねた総合複合施設に生まれ変わった。今では、隣接する「BAYはこだて」もモールに加わり、ショッピングや食事が楽しめるおしゃれなエリアとして人気を集めている。

夜もムードたっぷりの金森赤レンガ倉庫

DATA

五稜郭公園(国指定特別史跡 五稜郭跡)

  • 住所:北海道函館市五稜郭町44
  • アクセス:函館市電「五稜郭公園前」より徒歩15分、函館バス「五稜郭公園入口」より徒歩10
  • 開園時間:常時 ※郭内(堀の内側)4~10月=午前5時~午後7時、11~3月=午前5時~午後6時

五稜郭タワー

  • 住所:北海道函館市五稜郭町43-9
  • アクセス:函館市電「五稜郭公園前」より徒歩16分、函館バス「五稜郭公園入口」より徒歩7
  • 開園時間:4月21日~10月20日=午前8時~午後7時、10月21日~4月20日=午前9時~午後6時 ※初日の出営業など特別営業時間有り
  • 展望料金:大人900円、中高校生680円、小学生450円 ※団体割引、障害者割引有り

写真・動画撮影=laufen 克
撮影協力:五稜郭タワー

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