海洋ごみ30トンを一掃「瀬戸内オーシャンズX」:宇和海の離島から回収作戦スタート
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押し寄せるごみから島を救え!
漂着した大量のごみに悩む愛媛県宇和島市の離島群で、上陸用舟艇やプラスチック減容機・圧縮機を活用した清掃プロジェクトが7月22日にスタート。アクセスが困難な島の先端部などで、約30トンの海洋ごみを回収した。
瀬戸内海に面した愛媛、香川、広島、岡山の4県と日本財団が連携する海洋ごみ対策事業「瀬戸内オーシャンズX」の一環。当初は2021年度から4年間の予定だったが、今年4月に27年度までの期間延長と取り組み強化を決定。ごみの回収量は年平均26トンから86トンまで引き上げた。今回の回収作業で年間目標の35%をクリアしたことになる。
掃討作戦の舞台となった県西部の宇和海(うわかい)は、瀬戸内海の西の玄関口。太平洋の潮流が枝分かれして注ぎ込み、名産のタイをはじめ海の幸に恵まれる一方、多くの漂流ごみも押し寄せる。島が多い上に、沿岸部は複雑に入り組んだリアス式海岸のため、アクセス困難な場所だらけ。ごみが滞留している地点は約560カ所に上り、総量にして軽トラック3万2000台相当だという。
日本財団の笹川陽平会長は「宇和海の漂着ごみは他県や外国から出たものがほとんどで、愛媛県は被害者。現状を聞いて、優先して取り組むべきだと感じた」と、作戦開始の場とした理由を説明。外海に近いため波が高く、作業が困難な海域だが、ここで成果を出せば活動に弾みが付くとの狙いもあった。
立ち入り困難な海岸で120人が清掃作業
清掃作業には笹川会長や愛媛県の中村時広知事をはじめ、地元漁業協同組合員、中学生を含むボランティアら120人が参加。一同は宇和島港からチャーター船に分乗し、片道30分ほどかけて沖合の戸島(とじま)へと向かった。
戸島は周囲18キロメートル、200人が暮らすブリ養殖の島。作業員を乗せた船は集落地帯を通り越し、西に突き出した長崎鼻と呼ばれる無人地帯へ。
上陸用舟艇は船首から大きなスロープを伸ばし、桟橋のない海岸でも作業用車両や人を送り込める特殊な船舶。主に軍用船となっており、ごみの回収・運搬に運用している例はほかにない。作業員を運んだ船は上陸用舟艇に接舷。スロープと即席の桟橋を伝って、海水に足を濡らすことなく海岸に降り立てた。
上陸地点には大量のごみがずらり。プラスチック製の大型フロート、ブイ、その他のごみに仕分けされていた。3日前から試験的に回収作業を進め、戸島と近隣の離島から小型船舶で運んだものだという。
一同はまず、フロートを波打ち際へとバケツリレー。大きな袋にまとめてクレーンで上陸用舟艇へと運び込む。
かさばるフロートは船に積んだプラスチック減容機で4分の1サイズに。この機械では、時間をかければ10分の1まで圧縮できるそうだ。続いてブイも同様にリレーして、船上の粉砕機で小石大にした。
残るはコンテナ、ポリタンク、ペットボトル、カップ麺の容器など、さまざまなプラスチックごみ。手分けをして回収、分別作業を進め、およそ1時間でごみは一掃された。
中村知事はきれいになった海岸を見渡しながら、「途方に暮れていたごみが、この方法で一掃できることを実感した。国の回収作業でもこの船を検討してほしい」と、感慨深げだった。
ごみ削減意識を子どもから広める
また中村知事は「ごみ発生の抑制にも努める」とし、その一環として、今回の作業では地元の中学生に参加してもらったという。「環境教育を受けた児童・生徒は親や周りの大人を巻き込んでくれる。役所の注意喚起に耳を貸さない人も、子どもの声なら届く」との狙いからだ。
実際に作業に参加した中学生たちは「レジ袋はもう使わない」「気軽に何でも捨てないように気を付けます」と、環境問題を身近に感じたようだった。
宇和海では今後3年間で、特にごみが多い107カ所の巡回回収を予定。海洋環境の保全が国際課題となる中、「瀬戸内オーシャンズX」はモデルケースとなることを目指す。
活動に手応えを感じたその帰りの航行中に、船が突然に停止するアクシデントに出くわした。漂流していた漁網のかけらがスクリューに絡まったのが原因だ。海洋ごみが景観や生物への被害だけでなく、船舶運航の安全にも影響すると身をもって知った。
取材・文・撮影(クレジットのない写真)=ニッポンドットコム編集部