Apple TV+「サニー」:A24が放つ異色の近未来ドラマ 出演者ジュディ・オング&國村隼が語る“ロボットと共生する時代”
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近未来の京都が舞台
ハリウッドに高学歴の俳優は決して少なくない。ハーバード大学を卒業したラシダ・ジョーンズもその1人。『スリラー』などマイケル・ジャクソンの大ヒットアルバムを手掛けたことで知られるクインシー・ジョーンズの娘で、父の半生を描いたドキュメンタリー「クインシー」(Netflixで配信)の共同監督・脚本を務め、作品はグラミー賞の最優秀音楽映画賞を獲得した。
そのラシダが、相次いで話題作を世に送り出す米制作会社A24と組み、Apple TV+から全世界配信されるドラマの製作総指揮を務めた。自身が主役を演じる物語の舞台は京都だ。町家が並ぶ小道の向こうに五重塔。観光客にもおなじみの風景とともに、銭湯やセックスショップ、さらには60年代の近代建築を代表する国立京都国際会館(大谷幸夫設計)も登場し、クールな日本のイメージ満載だ。
同会館の建物は、劇中では電子機器メーカー「イマテック」の社屋という設定。主人公スージー(ラシダ・ジョーンズ)の夫であるマサ(西島秀俊)の勤め先だ。ただしマサは回想シーンでしか登場しない。息子と旅行に出たきり消息を絶ってしまったのだ。2人を乗せた北海道行きの飛行機が墜落したという。
2人の遺体は見つかっていない。マサの母ノリコ(ジュディ・オング)は墜落機に搭乗していなかった可能性に一縷(いちる)の望みをかけ、気丈に振舞っているが、スージーは淡い期待すら抱けず、悲しみに暮れていた。そんな彼女のところへタナカユウキ(國村隼)と名乗る男が現れる。マサの同僚で、会社からの贈り物を届けに来たと話す。大きな箱の中身は「サニー」。イマテック社製の家庭用ロボットだった。
タナカによると、ロボットはマサが開発した。夫から所属先は冷蔵庫部門だと聞かされていたスージーはとまどい、マサの本当の任務について探り始める。どうやら彼のロボット開発と飛行機事故には何らかのつながりがありそうなのだ。やがて、ロボットのプログラムを書き換える「ダーク・マニュアル」の存在や、その背後に暗躍するヤクザの影が浮かび上がる。ロボット嫌いのスージーだが、サニーの力を借りて謎を解こうと動き出すのだった。
レトロな味もある新感覚ドラマ
物語が進むにつれ、マサの隠された過去が明らかになっていく。その中で重要な役回りとなるのがノリコとタナカだ。演じた2人に、まずはドラマの印象から尋ねてみた。
國村 隼 ロボットと人間が普通に日常生活を送っている近未来の話なのに、どこか懐かしい雰囲気を醸し出す摩訶(まか)不思議な世界観ですね。サスペンスあり、ダークな感じあり、ユーモアもありと、いろいろなファクターが詰まっていて、今までにない先進的なドラマのあり方を見せてくれます。
ジュディ・オング おまけに舞台は海外の方々みんなが来たがる京都でしょ。素敵な場所がたくさん出てきて、その中に近未来のロボットが登場するギャップが面白いですよね。原作の『ダーク・マニュアル』という小説の作者、コリン・オサリバンさんは秋田に住んでいて、日本のことをよく分かっていらっしゃる。面白おかしく作っていますけど、日本や日本人について、なるほどそんな視点があったか、という発見があります。
國村 次の展開がまるで読めない、そういう作品でもありますね。
ジュディ それでいて不思議じゃないの。何回か観ると、こことここがつながるんだって納得できるんじゃないかしら。雰囲気は近未来と昭和のミックスですけど、根底に流れているのは、どうやって人間が生きていくか。陰と陽があって、そのバランスがすごく面白いのね。
國村 孤独であったり、犯した過ちのつぐないであったり、人間社会にあるいろんなダークな要素を、あまり重くならないように描いていますね。
ジュディ 人生には「えっ!?」と思うことがたくさんありますでしょ。台本のページをめくって「えっ!?」という発見がたくさんあって。最後まで「えっ!?」でしたね。
―会話にユーモアが効いていて、特にジュディさん演じるノリコさんは…
ジュディ 陰陽が激しい(笑)。
國村 とっても激しい方ですからね、ノリコさんは(笑)。
ジュディ あの人、面白い人です(笑)。品格とおかしさの落差がね。私はこのところ、企業の会長とか代議士の役が多かったんですけど、本来はね、(ささやくように)コメディエンヌなのよ(笑)。まあ、楽しいことは好きですね。今回は自分からアイデアが湧き出てくるというか、いろいろ提案もして、作るのが楽しかったです。
孤独な人を支えるロボット
―國村さんは複雑な役どころで…
國村 はっきり言えるのは、物語の世界観にあるロボットやAIといったテクノロジーを職業とする人ですよね。それが主人公の旦那さん、西島くん演じるマサと同僚であるところから話はスタートして…、のちのちストーリーに深く関わっていくんですが、そこは見てのお楽しみということで…(笑)。
ジュディ そう、なぜそうなるのかっていうのがね! ひも解かれていくのが面白いんです。いろんな不思議なところがありますでしょ。ノリコに関しては、脚本にないストーリーまで自分で考えてあるので、どんな疑問にもお答えできるんですよ。今ここでは言えないけど(笑)。
―お嫁さんのスージーとやり合うのも見どころですね。
ジュディ お姑(しゅうとめ)さんとして「嫁が気に入らない」から始まっているのでね。酔ったノリコさんがサニーを相手に、「秋ナスは嫁に食わすな」という話をする場面があるでしょ。よくできた台本だなと感心したんですよ。ノリコさんの言動には、いろいろ深い理由が隠れているんです。
―ちょっとぶっきらぼうなスージーについてはいかがですか?
國村 彼女はコミュニケーションがうまくとれないキャラクターなんですが、日本に来て出会ったマサとは話ができる。そこには、外国人でありながら、心の傷を抱えた者同士という関係性があるんですね。
―その夫婦が離ればなれになってしまって…
國村 今度は間にロボットが介在し、そこに不思議な友情も生まれてくる。物語には、これからの社会で、ロボットが孤独な人間とどう共存するのか、1つの形が見えるかもしれない。人間の作ったテクノロジーが使い方次第では恐ろしいものになるとか、いろんな見方ができますよね。
ジュディ シニア時代に入りましたし、われわれはもうAIと暮らしていく未来の入口に突入していますからね。この作品では、人間をより深く知るために、ロボットの立ち位置が大切になっています。そのうちAIの力を借りずにはいられない時代も来ますので、ちょっとした心の準備にもなりますね。
失敗を恐れずチャレンジを
―これが初共演だそうですね。
ジュディ そう、お互いこんなに長くやっているのにね。
國村 ジュディさんは歌の方もお忙しいからね。僕は一方的によく知っていましたけど。
ジュディ 何をおっしゃいますか。
國村 初めてお会いした気がしなかったですね。
ジュディ そうね。今回のホン(台本)読みが初対面だったんですけど、もう会って100年のような感じがしましたね(笑)。お互いに画面で見ているから。
國村 100年も生きとったら化け物やないですか(笑)。
―「サニー」ではお二人とも流ちょうな英語を話されています。
國村 ジュディさんはバイリンガルなので、あまり苦労はしなかったと思いますけど、僕には非常にチャレンジングでしたね。
ジュディ いえいえ。國村さんがナレーションもしていらっしゃる回があって、お声がとっても素敵なんです。
―國村さんは早くからリドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』に出られて。
國村 僕にとって映画とは、世界に開かれたメディア。映画をやりたいと思った時から、外に出ていくのが普通だという感覚でしたね。ハリウッドに行って、同じ映画でもこれだけシステムが違うのかとは思いましたけど、現場でやることは一緒なんだなって。
―ジュディさんはデビューが日米合作ですね。
ジュディ パール・バックの原作を映画化した『The Big Wave(大津波)』。11歳でした。
國村 えっ!? そんな小さいときから…
ジュディ ですから現場が英語でも何の違和感もなくて。やることはどこも同じね。ただ話す言葉が違うだけ。
國村 そう、同じですよ。キャメラがあって、照明があって…。現場はどこでも一緒と思っているので、海外だからって特別なことはないですね。
―製作のA24は多様性や自由の大切さを訴える作品を次々と世に送り出しています。それが若い世代にも支持されているのですが、一方で現実はますます窮屈な世の中になっていますね。これからの時代を生きる人々に何を伝えたいですか。
國村 自分たちが若かった頃の日本って、今から思えばですけど、「右肩上がり」という言葉が普通に実感できた国でした。今やその逆で、若い人たちが希望よりも現状維持を求めていますよね。しょうがないとは思うんですけど、その中でも何とか今より良い方向に向かうような考え方をしてもらえたらいいですね。若い人だけの問題ではなく、年上のわれわれも含めた社会全体で、そこに対して何ができるんだろうって考えています。
ジュディ みなさん、失敗を恐れて、どんぐりの背比べになっちゃっているところがありますね。同じ人生を歩くなら、チャレンジをしてほしいです。もし失敗したら、それは勉強。後になってみると、楽しかったなと思えます。どんなことも肥やしになるんだから。最初から気が向かないならともかく、できそうだと思ったらやってみる。そうするとね、人生、パワーが出てきます。70、80になってからのチャレンジもいいですね。残りの人生にとって「今日が一番若い日」だと思って、ね!
取材・文:松本卓也(ニッポンドットコム)
作品情報
- 出演:ラシダ・ジョーンズ、西島 秀俊、ジョアンナ・ソトムラ、ジュディ・オング、アニー・ザ・クラムジー、YOU、國村 隼
- クリエーター/ショーランナー:ケイティ・ロビンス
- 製作総指揮:ケイティ・ロビンス、ルーシー・チェルニアク、ラヴィ・ナンダン、ジェス・ラベン、ラシダ・ジョーンズ、ナンシー・ウォン
- 監督:ルーシー・チェルニアク(1~4、6話)、デアブラ・ウォルシュ(5、8話)、コリン・バックジー(7話、10話)、長久 允(9話)
- 公式サイト:tv.apple.com/jp/show/サニー
- Apple TV+にて好評配信中!
予告編
バナー写真:2024年6月、都内で開かれた特別試写会に集まった出演者(左から)ジョアンナ・ソトムラ、アニー・ザ・クラムジー、ラシダ・ジョーンズ、西島秀俊、ジュディ・オング、國村隼とサニー(中央)画像提供 Apple TV+