
王柏融、陳偉殷、宋家豪‥そして巨人を離れた陽岱鋼はどこへ?: 日本でプレーする台湾人選手たちの2022年を占う
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陽岱鋼:自らを強化してさらなる高みへ
巨人との5年契約を終えた陽岱鋼(よう・だいかん)選手は、春季キャンプ期間、台湾に戻って自主トレをすることを選択した。現時点では、どこの球団とも契約しておらず、メジャー入りを希望しているとも、台湾球界に入るとも噂されている。
5回巨人無死、陽岱鋼が右越えに先制ソロを放つ、2019年6月4日、楽天生命パーク(共同)
台湾メディアの「この5年間を振り返って」というインタビューの中で、陽は昨シーズンを「とてもやりがいのある1年だった」と語っている。 しかし、2019年に原辰徳監督が就任して以降、けがのために打撃不振となり、若手選手とのポジション争いにさらされ、出場機会は大幅に減った。その結果、2021年のシーズンは、1軍昇格以来最低の成績となった。巨人5年間の通算成績も打率.247、本塁打24本と寂しいものだった。
シーズン終了後、一時は巨人残留が伝えられたが、熟考の末、退団を決意した。台湾メディアの取材に応じた陽は、「家族や子どもの教育のことを考えて、新しい環境を求めることにした」と述べている。
陽は米国を含む他国でのプレーを排除しているわけではないようだ。2016年まで10年間所属した日本ハムファイターズ出身の大谷翔平とダルビッシュ有はメジャーリーグのトップ選手として活躍している。日本ハムは米国式のトレーニングや選手育成法をいち早く導入したチームだった。
キャリアの終盤を迎える選手にとっては、渡米して新しい知識を学ぶのも悪いことではないだろう。台湾プロ野球・味全ドラゴンズの葉君璋監督も、長年マイナーリーグで指導法を学んだ後、台湾に戻り球界の発展に貢献した。加えて、日本であれ台湾であれ、米国に行ったという経験は、キャリアに必ずプラスになるはずだ。
2022年、全てをリセットし、学びの姿勢で渡米することは、どのような形でも、陽にとって新しくかつ刺激的な経験になるだろう。またその一方で、日本に残ろうが、台湾に戻ろうが、陽にはこれまで培ったスキルや経験があるので、自身のキャリアアップになることは間違いない。
王柏融: 最強打者 決意の年
「台湾球界最強の4割バッター」として来日し、日本ハムに入団した王柏融(ワン・ボーロン)選手は、2019年の1年目のシーズンを終えた後、本領を発揮することが期待された。しかしコロナ禍に見舞われた2020年のシーズンでは、調整に追われ、本来の姿を見せることができなかった。
3回日本ハム1死、王柏融が右越えに本塁打を放つ、2021年08月28日、メットライフドーム(共同)
3年契約の最終年となった2021年のシーズン、王は9本塁打48打点と、まずまずの成績を残した。しかし、シーズン終了後、日ハムとの契約を1年延長したものの、球団は新たにレナート・ヌニエス内野手とアリスメンディ・アルカンタラ内野手を獲得したため、今シーズンは彼らと外国人枠を争うことになる。
新外国人に比べ、来日4年目の王は、日本の生活にかなり溶け込み、日本語も上達している。またここぞという時の爆発力もチーム内で評価されており、今シーズン前半、新加入の外国人打者が試合に慣れるまでの期間は、王がその実力を証明する絶好のチャンスとなるだろう。
ただし、今年は苦手とするチェンジアップを克服するための修正ができるかどうか、また台湾プロ野球屈指の好打者が日本球界の環境にも適応できるかどうかを証明する正念場の1年でもある。韓国のレジェンド、宣銅烈(ソン・ドンヨル)投手が中日ドラゴンズで活躍したときのような精神力を見せることができれば、必ずや再び輝きを放つことができるだろう。
陳偉殷:安定した投球のベテラン
阪神タイガースで活躍する陳偉殷(チェン・ウェイン)投手は、今年、技術と経験の集大成となる36歳のシーズンを迎える。2004年から11年まで中日ドラゴンズに所属、その後、メジャーリーグのオリオールズやマーリンズでも活躍し、これまでに日米通算95勝をあげた。
2020年9月の日本プロ野球復帰で注目を集めたが、ロッテマリーンズで短期間プレーした後、タイガースに移籍した21年の登板はわずか2試合、1勝に終わった。
これまで先発投手として起用されてきた陳が、ここにきて中継ぎのポジションに挑戦する可能性もある。けがの再発を防ぐことができ、また日米での豊富な経験を生かして、重要な局面で相手打者を抑えることで、チームに勝利を引き寄せる。ポーカーフェイスと安定した投球は、日本球界で再び輝くための頼もしい武器となることだろう。
吳念庭:スタメン定着へ
2021年は、吳念庭(ウー・ネンティン)選手が西武ライオンズへ入団して以来、最も活躍した年であった。130試合に出場して101安打、10本塁打、48打点の成績で、シーズン終了後の契約更改では年俸は3倍増となった。
先制打を放つ呉念庭 広島―西武2、2021年06月14日、マツダ(共同)
成長の第一の理由は、コーチングスタッフから絶大な信頼を得たことが挙げられる。2021年シーズン開幕直後に外崎修汰選手、山川穂高選手という主力が相次いで負傷。また活躍が期待された新人の若林楽人選手も負傷後は、吳は、一・二塁の守備の穴を埋めるなど、ユーティリティプレイヤーとなった。
バッティングでも開幕直後から爆発的な成長を見せ、若林の戦線離脱時には、トップバッターとして穴を埋める。高い得点圏打率を記録して、過去最高の成績でシーズンを終えた。活躍の鍵となったのは、プロ野球選手だった父・呉復連と、「アジアの大砲」と呼ばれた元巨人のスター選手・呂明賜によるシーズン前の指導によるところが大きい。
しかし、シーズン後半になると、打撃成績は下り坂となった。他チームの投手陣が徐々に癖を把握してきたことがうかがえる。加えて、戦列を離れていたレギュラー陣の復帰で先発出場も不安定になった。
今シーズンは、まず高い守備率を維持し、ランナーを置いたときのバッティングを強化することで、引き続き1軍の先発メンバーとして活躍できるだろう。
宋家豪:チームに不可欠なセットアッパー
東北楽天ゴールデンイーグルスで7年目のシーズンを迎える宋家豪(ソン・ジャーハオ)投手は、2021年に3勝3敗24ホールド7セーブと、チームに欠かせないセットアッパーとして活躍し、楽天との契約延長を獲得した。大柄な体格ながら、繊細な性格の宋は、バッターとギリギリの戦いに挑み、最後にはピンチを抑えることも少なくない。
2勝目を挙げた宋家豪 ロッテ―楽天24、2021年10月07日、ZOZOマリン(共同)
宋はその活躍で、台湾ナショナルチームの常連となり、特に日本の強打者相手に強い気迫で対峙し、ブルペンを支えるカンフル剤となっている。
また、後輩へのサポートも惜しまない。楽天のチームメイトである弱冠20歳の王彦程(ワン・イェンチェン)投手に対し、自身の経験を惜しみなく伝えている。宋も王と同じく育成選手として日本のプロ球界に入り、台湾でプレーする機会を放棄した経験を持つからだ。
この他、陽の親戚で、オリックスでプレーする張奕(ジャン・イー)投手は、2019年の「WBSC プレミア12」で大活躍したが、ここ2年間は成績がやや不安定。昨年は8試合に登板して0勝1敗、防御率13.06の成績で、シーズン後の契約更改では減俸されている。新たなシーズンでは、いかにコントロールと球質を強化し、1軍のブルペンに定着するかが最優先課題だといえよう。
2022年、プロ野球は引き続きコロナ禍の中、新たなシーズンを迎える。米大リーグのように全ての制限を取り払って観客を入れるだろうか?球場でのアルコール飲料は開放されるだろうか?これらはすべて、「コロナ後」の新たな課題だろう。日本球界の台湾人選手らは、文化風習が近い日本で、より洗練された考えや技術を身に付け、他の外国人選手とポジション争いをしなければならない。彼らの精神力も試されている。
バナー写真=陽岱鋼選手(上段左)、宋家豪選手(上段右)、吳念庭選手(下段左)、王柏融選手(下段右)