台湾人元日本兵の戦後補償問題――積み残された人々の願いに真の「解決」を

政治・外交 社会 歴史

「日本を愛して、日本のために戦った」―太平洋戦争中、日本の統治下にあった台湾から「日本人」として出征したにもかかわらず、日本人としての補償を受けることができなかった台湾人兵士の存在をどれほどの日本人が知っているだろうか。戦後75年がたち、既に当事者の多くはこの世を去ってしまったが、日本人には歴史に向き合い続ける責任があるのではないだろうか。

ないがしろにされた台湾人元日本兵の人権や尊厳

なぜ、台湾人元日本兵やその遺族は、ここまでの仕打ちを受けなければならなかったのか。

台湾南部・高雄にある「戦争と平和記念公園主題館」を運営し、台湾籍老兵の調査・慰霊活動を行なっている高雄市關懷老兵文化協會常務理事の呉祝栄(ご・しゅくえい)氏に聞いた。 

呉氏は、この問題は日本と台湾の「二つの政府に責任がある」と指摘する。すなわち、どちらの政府も「人権を重視しなかった」という。日本政府は戦後の経済的困窮を理由に問題を放置し、その後、経済成長を成し遂げたにも関わらず、積極的に対応しようとしなかった。台湾の中華民国・国民党政府も戦後に日本から接収した財産の正当性や取り扱いが議論されることを懸念して、日華平和条約に基づく特別取極の推進には消極的であった。加えてかつての「敵」である台湾人元日本兵の問題には無関心だったのだ。

本来、守られ、尊重されるべき台湾人元日本兵の人権や尊厳は、二つの政府からないがしろにされていたわけである。

25年にわたり台湾人元日本兵らに寄り添い続けている呉祝栄氏(筆者撮影)
25年にわたり台湾人元日本兵らに寄り添い続けている呉祝栄氏(筆者撮影)

次ページ: 「台日交流センター」の設立が遺族らの最後の願い

この記事につけられたキーワード

戦争 台湾 戦後史 戦後 戦後処理 戦後補償

このシリーズの他の記事