台湾野球と日本(中)〜チアリーダーと観客が熱く盛り上がる

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台湾を旅行したことがある日本人が印象に残ったこととして挙げるのは、台湾グルメや観光スポットに加えて、“人の熱気” だ。それは台湾プロ野球も例外ではない。世界のスポーツが新型コロナに翻ろうされた2020年も平常運転の台湾野球。そこでは、チアリーダーの熱のこもった応援が花を添えていた。

人気チアリーダー・チュンチュンが感じた台湾の野球熱

台湾プロ野球でファンと一緒になって応援を盛り上げているのがチアリーダーだ。今では全球団が専属のチアチームを持っている。そのきっかけとなったのが、2004年に台湾で開催された韓国プロ野球との交流試合だ。チームに同行してやってきたチアリーダーの姿に刺激を受け、台湾でも次々と専属のチアチームを創設。台湾でも韓国プロ野球の曲を流しながら一斉に歌を歌うというにぎやかな応援方式を取り入れ、さらに台湾プロ野球独自の「熱気」あふれる応援へと発展させたのである。

チアリーダーの応援は、今では球場で最も人気のあるコンテンツの1つだ。派手なデジタルミュージックに合わせてセクシーなダンスを披露し、ファンもチアリーダーと一緒になって歌い、踊り、日頃のストレスを発散している。すっかりアイドル化していて、観客とのハイタッチやツーショット撮影などチアのファンサービスを目当てに球場にやってくる人もいるほど。試合後のコンサートを望む声もある。ただ、コロナの影響で、チアの活動もずいぶんと制限されていた。

台湾プロ野球チーム「中信兄弟」の人気チアリーダー・チュンチュン(峮峮)さんは、nippon.comの取材に対して「(観客がいるといないのとでは)全然違うものでした」と話す。

新型コロナの感染者が出始めた1月末、一度は恐怖に包まれた台湾社会だったが、3月末頃にはウイルスの流行は抑制された。4月12日、史上初の無観客試合でプロ野球が開幕し、チュンチュンさんも未知の環境に臨むことになったのだ。

4月開幕されたCPBL、最初チアリーダーは観客とのソーシャルディスタンスの確保も必要だった。(提供元:宏將多利安國際)
4月に開幕したCPBL。当初は、チアリーダーと観客とのソーシャルディスタンスの確保も必要だった。(提供元:宏將多利安國際)

「もともと、私たちは客席の方を向いてパフォーマンスをしていましたが、無観客試合となったので、選手の方に向かって応援するようになりました」

開幕直後は球場に入れるチアの人数にも制限があったという。移動中はもちろんマスク着用で、チアリーダー同士のソーシャルディスタンスの確保も必要だった。

観客の入場が解禁された後も、観客との距離を相当取らなければならなかった。台湾でのコロナの感染者数の増加が落ち着いてくるにつれて、観客数も増え、観客とチアとの距離も縮まっていった。

チュンチュンさんは「開幕直後は、球場には私たちチアと選手だけで、ジェスチャーでしかコミュニケーションを取れなかったんです。そんな中で、なんとかテンションを上げようと頑張りました」と言う。ようやくファンサービスができるようになって、改めて、「無観客試合」がいかに異様だったかを振り返っていた。

日本でも人気だったチュンチュンは、自身でも日本への旅行することが大好きだと言った。(提供元:宏將多利安國際)
日本でも人気を集めるチュンチュンは、自身でも日本への旅行することが大好きだと言った。(提供元:宏將多利安國際)

チュンチュンさんの日本ロス

チュンチュンさんは2019年12月に「週刊少年ジャンプ」でグラビアデビュー、日本でも「かわいすぎるチア」としてファンがどんどん増えている。2020年には日本での握手会が予定されていたが、コロナの影響で中止となってしまった。「日本の皆さんに直接会えず、ネットのコメントを見ているだけでは、なんだか現実感がないんです」と、残念そうに話していた。

チュンチュンさんは「哈日族(台湾の日本大好き族)」の1人だ。これまでに旅行した中でも一番好きな国は日本で、5年前に中信兄弟のチアリーダーになってからも、シーズンオフの冬には毎年、日本に旅行に来ているという。今年も2月26日から北海道旅行を予定していたが、コロナの影響で泣く泣くキャンセルしたという、「あの頃、日本もまだそこまで深刻な状況ではなかったので、本当に迷ったけれど、でも、リスクを考えると無理はできないなと思ったんです」。

いつか日本のファンと交流するため、チュンチュンさんは日本語の勉強に励んでいる。台湾で放送されている日本のバラエティ番組を見てヒアリングの練習をしているという。リアリティ番組の『テラスハウス』も、放送打ち切りになる前はよく見ていたそうだ。

すっかり日本ロスになってしまったチュンチュンさん。今、日本で一番行きたい場所を聞くと、「熊本に行ってみたい。岐阜の合掌村もいいですね。合掌村は一年を通して景色が美しく、とても幻想的だと思います」とのことだった。

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