前略 台湾さま。尾道より愛を込めて――価値観でつながる、コロナ時代の国際交流

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栖来 ひかり 【Profile】

コロナ渦で国際的な往来が不自由な中、これからの日台交流はどうなっていくのだろうか?空き家の再生と共に若い世代の移住者が増え、台湾との交流も盛り上がりを見せている広島県尾道市のまちづくり経験から考える。

コロナ前に1日400人が集まったマルシェ「尾道的台灣小宇宙」

「前略 台湾さま。尾道より愛を込めて。」

2020年1月19日のマルシェを知らせるフェイスブックのイベントページは、そんな言葉で始まっていた。

瀬戸内の海上交通の要所として栄え、「坂のまち」で知られる広島県尾道市。そのJR尾道駅北口を出て、住宅街の間から延びる石段をひたすら上ればたどり着く「松翠園大広間」には、赤ちゃんから杖の必要な年配の方まで、一日を通して400人を超える人々が訪れた。

広島県尾道市で開催された「尾道的小宇宙」(筆者撮影)
「尾道的台灣小宇宙」は多くの人でにぎわった(「尾道空き家再生プロジェクト」提供)

広島県尾道市で開催された「尾道的小宇宙」で販売されていた数種類のグッズ(筆者撮影)
「尾道的台灣小宇宙」で販売されていたグッズ(筆者撮影)

豆花(トウファ、タウフエ)や滷肉飯(ルーローハン、ローバープン)、胡椒餅(フージャオビン、ホーチョーピアン)に肉まん(ローバオ、バーパオ)といった台湾フードから、台湾の作家の服や小物、レトロ雑貨、ZINE(少部数で発行する自主制作の出版物)、ちょうちん絵付け体験など、さまざまな「台湾」を感じさせる30店舗が60畳ほどの会場にずらりと机を並べた。フードは早々に売り切れ続出、うれしい悲鳴が聞こえた。大人は入場料300円と有料にもかかわらず、予想をはるかに上回る大盛況となったマルシェのタイトルは「尾道的台灣小宇宙」。

主催したNPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」代表理事の豊田雅子さんが発起人となり、地元の飲食店の出店への呼び掛けや台湾からのゲストの招待、フライヤー作り、会場設営など何カ月もかけて準備を進め、愛情と丹精を込めたイベントである。その時はまさか、数カ月後に日台はおろか、日本国内で県をまたぐ移動さえ困難になるとは誰も思いもよらなかった。

NPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」代表理事の豊田雅子さん(筆者撮影)
NPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」代表理事の豊田雅子さん(「尾道空き家再生プロジェクト」提供)

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台湾在住ライター。1976年生まれ、山口県出身。京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。台湾に暮らす日日旅の如く新鮮なまなざしを持って、失われていく風景や忘れられた記憶を見つめ、掘り起こし、重層的な台湾の魅力を伝える。著書に『台湾と山口をつなぐ旅』(2017年、西日本出版社)、『時をかける台湾Y字路~記憶のワンダーランドへようこそ』(2019年、図書出版ヘウレーカ)、台日萬華鏡(2021年、玉山社)。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story

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