Withコロナ時代の日台修学旅行とオンライン交流

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加藤 秀彦 【Profile】

2011年の東日本大震災をきっかけに、海外の修学旅行先に台湾を選ぶ高校が増え、今では断トツの1位になっている。しかし、2020年は新型コロナウイルス禍でそのほとんどが中止。そんな中、情報通信技術を活用したさまざまな新たな取り組みが行われるようになった。

ICTを用いた日台高校生交流

ではせっかく修学旅行で広がった高校生の日台交流がこのまましぼんでしまうのかというと、そうでもないようだ。そのヒントはスーパーサイエンスハイスクール(SSH)にある。

SSHは国際的な科学技術人材の育成を目指し、先進的な理数教育や国際性を育む取り組みをする高校を文部科学省が指定。2020年度は全国で217校が指定を受けている。

2020年5月5日、立命館高校(京都府)の2年生と3年生の計70人が台湾の高雄市立高雄高級中學(高雄高校)と科学研究発表会を行った。立命館高校はSSHの活動として、高雄高校や高雄女子高校と年に数回の相互訪問をしていたが、今年はオンライン開催に切り替えた。4件の研究発表は全て英語で行われ、どれも高校生とは思えないハイレベルな発表ばかりだ。高雄高校の発表を見て、立命館高校の生徒は次のような感想を残している。

「研究の題材がとても独創的なものが多かったので、普段身近すぎて気付かないことなどにも目を向けたいと思いました!」

「遠く離れた土地でもスマホがあれば、プレゼンテーションできるということがすごいと思った」

「これから課題研究をしていく上で良い見本を見ることができて、本当に良かったです。でも、まだまだ英語で理解できない部分も多かったので、もっと頑張っていきたいと思います」

高雄高校とのオンライン交流が生徒の新しい発見や学習意欲向上に役立っているのがよく分かる。

このようなICTを用いた日本と台湾の高校生交流は、立命館高校だけでなく、他の複数のSSH指定校でも従来から行われている。

「せっかく台湾と交流するのなら、英語ではなく、台湾語や台湾華語(中国語)で交流すべきだ」という意見があるかもしれない。確かに台湾のスペシャリストを育成するのが目的なら、そのほうがいいだろう。しかしSSHの目的は国際的な科学技術人材の育成である。普通科高校生が英語と科学を用いて外国の同年代と交流する意義は大きいのだ。

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1980年名古屋市生まれ。初めての海外旅行で台湾を訪れて魅了される。2010年に日台若手交流会(名古屋拠点、台湾に2支部)を設立し代表に就任。20代30代を中心とした若い世代の日台交流に取り組む。現在は名誉会長。2018年の花蓮地震では日本で義援金を募り、1300万円を被災地に届けた。高校の台湾修学旅行研修や社会人講話講師も務める。
公式ウェブサイト:https://kato-hidehiko.asia/

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