Withコロナ時代の日台修学旅行とオンライン交流

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加藤 秀彦 【Profile】

2011年の東日本大震災をきっかけに、海外の修学旅行先に台湾を選ぶ高校が増え、今では断トツの1位になっている。しかし、2020年は新型コロナウイルス禍でそのほとんどが中止。そんな中、情報通信技術を活用したさまざまな新たな取り組みが行われるようになった。

現地学校との交流

筆者は台湾を修学旅行先に選んだ学校から講演を依頼されることがある。修学旅行で印象に残ったことを聞くと、現地の学校との交流を挙げる生徒が多い。秋田県のノースアジア大学明桜高校も観光に加えて姉妹校である淡水高級商工職業学校の訪問も旅程に組み込んだ。生徒からは「海外の人と交流する楽しさ、大切さに気付いた」との感想が聞かれた。

現地の大学生とグループで街歩きをするプログラムを実施した学校では、生徒は事前に簡単な中国語会話を勉強し、身振り手振りも交えて意思疎通できたことに感動したという。同じグループで行動した台湾人大学生は日本語を専攻し、英語も日本語も使いこなすトワイリンガルだった。それに刺激を受けて、「もっと英語も中国語も勉強して、もう一度、台湾に行きたい」と語る高校生もいた。

このように、修学旅行がきっかけになって台湾に興味を持ち、留学を決める高校生も少なくない。修学旅行が中止となったことで、今後の日台交流に関わる若い人材を失うことにもつながりかねない。

早期中止決定の意外な理由

台湾への修学旅行を実施しているいくつかの高校を取材したところ、全ての学校が本年度の修学旅行を中止、もしくは秋以降に延期を決定している。ここで気になったのは、中止を決めた学校は何か代替措置を考えているのだろうか、ということだ。コロナ流行をきっかけに今年は遠隔授業が一挙に普及した。現地訪問がかなわなくとも、オンラインツールを利用した台湾の学校との交流は可能だが、残念ながら、取材した限りではこうした取り組みをしている学校はなかった。

修学旅行の中止は必ずしも感染リスクを避けるためだけではない。ある学校は長期の休校の影響で約100時間授業時間が不足しており、夏休みの短縮だけでは追い付かず、修学旅行を断念したのだという。出発前の準備や帰国後の振り返りも含めるとまとまった授業時間が確保できるのだという。

規定の授業時間を満たす必要があるにしろ、修学旅行を楽しみにしていた生徒のことを思えば、学校にとっても苦渋の決断だった。

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1980年名古屋市生まれ。初めての海外旅行で台湾を訪れて魅了される。2010年に日台若手交流会(名古屋拠点、台湾に2支部)を設立し代表に就任。20代30代を中心とした若い世代の日台交流に取り組む。現在は名誉会長。2018年の花蓮地震では日本で義援金を募り、1300万円を被災地に届けた。高校の台湾修学旅行研修や社会人講話講師も務める。
公式ウェブサイト:https://kato-hidehiko.asia/

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