Withコロナ時代の日台修学旅行とオンライン交流

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加藤 秀彦 【Profile】

2011年の東日本大震災をきっかけに、海外の修学旅行先に台湾を選ぶ高校が増え、今では断トツの1位になっている。しかし、2020年は新型コロナウイルス禍でそのほとんどが中止。そんな中、情報通信技術を活用したさまざまな新たな取り組みが行われるようになった。

発展する日台交流と新型コロナ

国交がない日本と台湾の交流は、長い間民間の手で支えられてきた。2000年代初頭の頃までは、日本統治時代に日本語教育を受けた「日本語世代」の台湾人が熱心な交流の担い手だった。

一方で、若い世代の関心は低く、日本語世代の高齢化で、将来の日台交流を支える人材がいなくなるのではないかと危惧されていた。実際に、筆者の周りでも、台湾に関心を持つ人は皆無だった。

そんな状況を変えたのが2011年の東日本大震災だ。台湾から200億円を超える義援金が送られた。日本が苦しい状況の時に温かい支援の手を差し伸べてくれた台湾に対し、感謝の気持ちを表す日本人が幅広い世代で現れたのだ。例えば台北では毎年3月に「謝謝台湾日台・心の絆イベント」が台湾在住の日本人留学生が中心になって開催されている。

また、修学旅行で台湾を訪れる高校が増え、それをきっかけに台湾に関心を持つ高校生も増えている。

このように日台交流に関わる若い世代が増加傾向にある中、新型コロナウイルスがそれにブレーキをかけてしまった。両国の往来ができなくなったからだ。

台湾ロスの記事で紹介されているように、台湾ロスに苦しんでいる台湾好きは多い。

一方、修学旅行で台湾を訪れる予定だった学校関係者は複雑な気持ちのようだ。学校の友人と一緒に行く台湾修学旅行は、受験や就職前の貴重な楽しみの一つで、一生の思い出づくりの場になっただろう。それが中止になって肩を落としている人もいれば、コロナを抑え込んでいる台湾国内はともかく、不特定多数が利用する空港や飛行機での感染を恐れる人からは中止やむなしの声もある。

高校生の台湾修学旅行

近年、海外修学旅行を実施している高校が訪問国として台湾を選ぶケースが増えている。

(公財)全国修学旅行研究協会の調査によると、新型インフルエンザの世界的流行の影響で旅行者数が激減した2009年を除き、台湾の訪問者数は右肩上がりだ。そして2015年度以降、台湾は訪問者数ナンバーワンを維持していて、2018年度には5万9729人になった。これは海外修学旅行を経験する高校生の4人に1人が台湾を訪問したことになり、2番目に多いオーストラリアに2倍近い差をつけている。

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加藤 秀彦KATŌ Hidehiko経歴・執筆一覧を見る

1980年名古屋市生まれ。初めての海外旅行で台湾を訪れて魅了される。2010年に日台若手交流会(名古屋拠点、台湾に2支部)を設立し代表に就任。20代30代を中心とした若い世代の日台交流に取り組む。現在は名誉会長。2018年の花蓮地震では日本で義援金を募り、1300万円を被災地に届けた。高校の台湾修学旅行研修や社会人講話講師も務める。
公式ウェブサイト:https://kato-hidehiko.asia/

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