台湾の日本語世代が集う友愛会――美しく正しい日本語を台湾に残したい人々の思い

社会 暮らし 歴史 言語

権田 猛資 【Profile】

「美しく正しい日本語を台湾に残す」ことを目指す友愛会。月に一度、台北市内で「日本語世代」の人々が集う日本語勉強会である。なぜ今なお、日本語を学び続けるのか。そこには日本語への深い愛着と切実な思いがあった。

直面する課題

友愛会を立ち上げた陳絢暉氏らは友愛会の責務として後継世代の育成を掲げていたが、その課題は依然として存在している。現実の問題として、日本統治時代に初等・中等教育で日本語教育を受けた世代はすでに80歳後半から90歳以上となり、日本語世代の友愛会会員も減少傾向にある。すなわち「美しく正しい日本語」を使いこなせる人々は確実に減っている。

終戦時に初等教育機関である国民学校に在学していたある日本語世代の会員は、「自身の中途半端な日本語をもっと勉強したい」と友愛会に参加する理由を話してくれた。日本語の乱れを憂いていた陳氏ら大正・昭和初期生まれ世代と、終戦時に初等教育を受けていた世代では、同じ日本語世代であっても「母語」としての日本語に抱く思いは異なり、日本語力の程度にも差があると言える。

また戦後の1954年生まれの会員である頼耀宏氏は友愛会の内容について「日本語世代の日本語は難しく、聞いてだいたい分かるが、話すことはできない」という。独学で習得した日本語を磨くために友愛会に参加している頼氏にとって「美しく正しい日本語を台湾に残す」という友愛会の主旨については理解しにくいだろう。

張文芳氏は後継世代の育成の必要を痛感しているというが、現状着手できない難しさがあるという。つまり「美しく正しい日本語」の学習に注力しすぎると、終戦時にはまだ幼かった世代の会員や頼氏ら戦後生まれの会員にとって難しすぎてしまうという問題である。

現在、代表を務める張文芳氏。2015年、友愛会での取り組みをはじめ、長年の日台交流への功績が評価され旭日双光章を受賞した(筆者撮影)
現在、代表を務める張文芳氏。2015年、友愛会での取り組みをはじめ、長年の日台交流への功績が評価され旭日双光章を受賞した(筆者撮影)

次ページ: 友愛会のこれから

この記事につけられたキーワード

台湾 日本語 日本統治時代 日本語世代

権田 猛資GONDA Takeshi経歴・執筆一覧を見る

台湾国立政治大學大学院修士課程。1990年生まれ。主に戦後の日台関係史を研究。また、バシー海峡戦没者慰霊祭や廣枝音右衛門氏慰霊祭の事務局長を務める。

このシリーズの他の記事