台湾の日本語世代が集う友愛会――美しく正しい日本語を台湾に残したい人々の思い

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権田 猛資 【Profile】

「美しく正しい日本語を台湾に残す」ことを目指す友愛会。月に一度、台北市内で「日本語世代」の人々が集う日本語勉強会である。なぜ今なお、日本語を学び続けるのか。そこには日本語への深い愛着と切実な思いがあった。

友愛会のいま

2005年より体調を崩していた会長の陳絢暉氏は2012年12月、鬼籍に入った。同会代表には、2002年に入会し、総幹事を長く務めていた張文芳氏が2011年に就任し、現在も代表として会を取り仕切っている。張氏は定年退職後に習得したコンピューターを駆使し、90歳を超えた今も配布するテキストを作成し、毎回の司会を務めている。

現在、友愛会には約120人が在籍している。ただし、日本在住の日本人会員であったり、在籍しているものの様々な事情で月例会に出席できない会員であったりが大半で、近年、友愛会に集う人々は30人ほどである。

友愛会は11時頃に集まり、昼食をとってから始まる。まず台北在住の日本人講師の福井幸子氏が、短いエッセイや詩を朗読、会員もそれに続いて朗読する。次に台南在住の日本人講師の傳田晴久氏がその時期にあった題材や文章を用いて、四字熟語や慣用句、難しい漢字の読みなどを講義、議論する。例えば冬の時期であれば、「雪」を表す言葉を題材にし、粗目雪や細雪、粉雪の違いを議論したり、「しわす」を漢字でどう書くかを問うたりする。日本人にとってもレベルは高いが、日本語世代の会員は題材に関する補足知識を披露したりするなど、15時頃まで高度な議論が展開される。

日本人講師の伝田晴久氏の講義に耳を傾ける会員(筆者撮影)
日本人講師の傳田晴久氏の講義に耳を傾ける会員(筆者撮影)

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台湾国立政治大學大学院修士課程。1990年生まれ。主に戦後の日台関係史を研究。また、バシー海峡戦没者慰霊祭や廣枝音右衛門氏慰霊祭の事務局長を務める。

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