「台湾ロス」の記事が大反響、コロナの往来断絶で喪失感を共有

暮らし 社会

野嶋 剛 【Profile】

nippon.comの繁体字版が7月10日に発信した「好想快點去臺灣!日本哈臺族的『台灣ロス』」 の記事が、記録的なアクセス数を計上し、台湾・民進党政権の林佳龍氏や鄭文燦氏ら有力政治家が相次いで言及するなど、大きな反響を呼んだ。新型コロナウイルスによって相互交流が制約される日台間で、お互い「ロス」を悲しむ気持ちが高まっており、記事がその人々の心情と捉えた形だ。

台湾の動画を提供

台湾の日本人社会にも、台湾ロスの記事の反響は広がった。台湾在住の日本人が運営する「台湾チャレンジ」というユーチューブチャンネルでは、今回の記事を受けてと思われる動画を配信した。タイトルは「台湾ロスの方へ 台湾で待っています」。台湾各地の風景や名所、グルメの様子をおよそ7分間の映像にまとめて紹介し、日本の台湾ロスの人々を癒そうとしてくれている。

管理人の言葉として「台湾ロスの方へ、宝島台湾の動画をお届けします。いつになるかわかりませんが、また安全に海外旅行ができるようになったら、ぜひ台湾に遊びに来てくださいね。台湾で待っています。飛行機に乗ることが電車やバスに乗るようなとても身軽なことだったあの頃。天佑台灣。天佑日本。いつでもすぐに行けると思っていたあの頃。ある日突然飛行機は飛ばなくなり、恋人、家族、友達、大切な人々と突然会えなくなった。おいしいモノたち。観光もできなくなった。懐かしいあの風景。台湾は変わらずあなた方を待っています。この現実を受け止めることができず、心の中にぽっかりと空いた空洞をいまだに埋めることができない。いつの日にかまた自由に空を飛び、お互いの国に行き来できる日が来ることを心から願う」と書かれている。

一方、台湾の側にも逆に「日本ロス」の声はネット上にあふれている。今回の記事に対する書き込みでも「日本の温泉、ラーメンが恋しい。今年は紅葉を見られないだろうな」「北海道に毎年スキーに行っているけれど、今年は無理だろうか」などの悲しみのコメントがあった。台湾で哈日族という言葉の創始者である哈日杏子さんはフェイスブックに「日本に行きたいよ(好想去日本)」というイラストを載せている。

哈日杏子さん提供
哈日杏子さん提供

次ページ: 台湾でも深刻な日本ロス

この記事につけられたキーワード

観光 台湾 旅行 新型コロナウイルス

野嶋 剛NOJIMA Tsuyoshi経歴・執筆一覧を見る

ジャーナリスト。大東文化大学教授。1968年生まれ。上智大学新聞学科卒。在学中に、香港中文大学、台湾師範大学に留学する。92年、朝日新聞社入社。入社後は、中国アモイ大学に留学。シンガポール支局長、台北支局長、国際編集部次長などを歴任。「朝日新聞中文網」立ち上げ人兼元編集長。2016年4月からフリーに。現代中華圏に関する政治や文化に関する報道だけでなく、歴史問題での徹底した取材で知られる。著書に『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『故宮物語』(勉誠出版)、『台湾はなぜ新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)『香港とは何か』(ちくま新書)『蒋介石を救った帝国軍人 台湾軍事顧問団・白団の真相』(ちくま文庫)『新中国論 台湾・香港と習近平体制』(平凡社新書)など。オフィシャルウェブサイト:野嶋 剛

このシリーズの他の記事