小池都知事の「通信簿」と2期目の展望(上):選挙は圧勝するも、職員からは低評価

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得票数366万票、都知事選歴代2位の記録で圧勝した小池百合子氏(68)の2期目は新型コロナウイルス感染症との闘いが続く。しかし、都民からは絶大な支持を集める一方、都職員のアンケート調査では歴代知事と比べ小池知事の評価は低い。この調査を行った東京の自治体専門紙「都政新報」の後藤貴智編集長にアンケート結果の分析と小池都政の2期目の展望を聞いた。

後藤 貴智 GOTO Takanori

「都政新報」編集長。1972年、茨城県生まれ。法政大学社会学部卒業。出版社勤務を経て、2004年に都政新報社入社。東京都・区市町村が取り組む政策などを対象にした自治体専門紙「都政新報」編集部、16年から同紙編集長。

コロナの感染拡大に左右される2期目 

「小池知事の圧勝は“想定内”のものでした。主要政党が独自候補の擁立を見送り、コロナ問題で都民は行政の継続を望んだから」と後藤氏は分析する。前回は対立候補を推した自民、公明両党からも、今回は実質支援を得たことで、大量得票は容易に予測できた。

2期目の主な優先課題は、①「コロナ対策」、②延期となった五輪・パラリンピックの開催、③大幅な税収減が確実な中での「財政運営」―である。再選直後からコロナ感染者が再び急増し、小池知事がかねてから指摘していた「夜の街」だけでは収まらない市中感染の広がりを見せた。上記の三課題を含め、小池都政2期目は「コロナ問題」の推移に左右されると言っても過言ではない。

「感染爆発 重大局面」。1期目の最終盤で起きたパンデミック(感染症の世界的大流行)で、しばらく動静が目立たなかった小池知事の出番が急増した。休業要請に応じる店などへの支援金は、都庁内で慎重な意見もあり、国も消極的だったが、小池知事が「東京の経済を守るため」と決断した。また、強い言葉で危機を呼びかけ、都民に自粛、「ステイホーム」を求める知事の姿は、感染者の減少につながったとして、大方の評価を得たようだ。

小池知事は2期目の公約として、アメリカの感染症対策の中心となっているCDC(疾病対策センター)を意識して、「東京版CDC」の創設を掲げた。ここを拠点に、検査体制・医療提供体制の充実・強化、病院・医療従事者へのサポートの推進、薬の開発支援などを進めるという。

インタビューに応じる「都政新報」の後藤貴智編集長
東京・虎ノ門のnippon.comでインタビューに応じる「都政新報」の後藤貴智編集長

五輪開催の姿勢を貫ぬくも、課題は山積

来年に延期となった五輪・パラリンピック(以下、五輪)の開催問題は、今回の知事選で各候補の意見が一番分かれた。対立候補が中止や再延期を主張する中で、小池知事は簡素化を進めながらも開催の姿勢を変えなかった。

「五輪を中止、再延期した場合、都はどれくらいの負担が増えるのか。その対策はどうするのか、という問題点を語れる対立候補はいなかった。都民の多くはこれまで準備してきたものを、なしにすると言われても納得できなかった。今、都が五輪中止を決めれば、負の遺産のみになってしまうので、開催を前提とした小池知事の主張は理解されたのだと思う」と後藤氏。

五輪問題も「コロナ」にすべてがかかっている。世界中から選手、観客を迎える大会なので、仮に日本が収束したとしても、開催が可能になるわけではない。新薬、ワクチンの開発は間に合うのか。パンデミックは収まっているのか。開催できたとしても、開・閉会式の簡素化、会場の観客数はどうするのか。1年延期のコスト増はどれくらいに抑えられるのか。都、五輪組織委員会、国の負担割合はどうなるのか。感染症対策はどこまでやるのか。来年3月には国内を回る聖火リレーが始まるが、課題は山積している。

都の貯金が激減、厳しさを増す財政運営

小池都政の1期目は潤沢な税収に恵まれ、都の貯金に当たる「財政調整基金」は9000億円を超えていた。しかし、コロナ対策で基金のほとんどを取り崩し、2020年度の残高は800億円程度となる見通しだ。さらに、コロナ禍による税収減は1兆円を超えるとみられる。2期目の小池都政はこうした厳しい財政状況の中で大きな課題に取り組まなければならない。

「本当に都の財政が苦しくなった時、かつて石原慎太郎知事が都の財政危機の際に、シルバーパス(高齢者の無料乗車)を有料化したような、都民が痛みを伴う政策の断行を含め、強力なリーダーシップを発揮できるか、問われる時がくるかもしれない」

もし、五輪を成功させれば、将来の「総理候補」として「小池待望論」が出てくる可能性もあるだろう。小池都知事は再選直後に報道陣から「国政への転身はしないか」と質問されると、「今、当選確実をいただいたばかりだ」とかわした。

小池知事は前回の2016年に初当選し、その翌年、新党「希望の党」を立ち上げ、衆院選に挑んだことがある。代表の小池知事本人は都政専念を理由に出馬せず、また民進党からの全員受け入れを否定して、一部リベラル派を「排除」するとした自らの発言が災いし、選挙戦は惨敗。代表を辞任した。こうした経緯から、今回も2期目冒頭から国政転身のうわさが浮上したわけだ。

2017年7月、都知事選初当選後、初登庁し、花束を受け取る小池百合子新都知事
2016年7月、都知事選当選後、初登庁し、花束を受け取る小池新都知事(時事)

都職員の知事評価は平均46.4点

外部からは高い評価を受けている小池知事だが、その下で働く都職員は知事をどう見ているのか。後藤氏が編集長を務める「都政新報」は2017年に行った小池都知事就任1年目のアンケートに続き、2019年末、小池都政1期目についてアンケートを行った(※1)。その意外な結果が今年1月、同紙で発表された。

100点満点で職員の採点は平均46.4点。同紙のこれまでの職員調査では、石原都知事の1期目は71.1点、批判を浴びた3期目でも48.2点。舛添要一前都知事の1期目前半が63.6点だったので、小池知事の評価はかなり低い。「落第点」「合格点は与えられない」とした職員は計64.6%と3分の2を占めた。

「小池知事は1年目の調査(2017年7月実施)が46.6点だった。国政進出に失敗した後は、都政に軸足を置き、待機児童や受動喫煙防止の問題で実績を上げたので、私は職員の評価が10ポイントは上がるだろうと予測していたが、意外にも0.2ポイント下げた」と後藤氏。

「小池さんには前二代の知事(猪瀬直樹氏、舛添要一氏)のようなスキャンダルもないのに、なぜ、職員評価が低空飛行のままなのか。それは国政進出の動きや、築地市場の移転問題で見られたパフォーマンスの過多など、小池知事に対する不信感が消えていないためと思われる。政策の問題ではなく、知事本人のキャラクターに問題があるらしい」

小池知事の実像に迫るものが、このアンケート結果にはあるようだ。次回は都職員の声を紹介し、検証する。

バナー写真:2020年7月の東京都知事選で366万票を獲得し、再選を決め、花束を贈られる小池百合子氏(時事)

(※1) ^ 今回のアンケートは昨年11~12月、「都政新報」購読者の都職員を中心に800人を無作為抽出して実施。うち223人が回答

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