早く台湾に行きたい!新型コロナで日本の台湾ファン「哈台族」に台湾ロスの危機

暮らし 国際交流

新型コロナウイルスの世界的な流行により、現在、各国間の往来が制限されている。台湾でも外国からの入国はほとんど緩和されておらず、日本と長期にわたり自由な往来ができていない状況だ。そのため、これまで定期的に台湾旅行を楽しんでいた台湾ファンの間に「台湾ロス」が広がっている。

台湾の民俗文化と先住民族文化の魅力

ここ数年の安村さんの旅は、どんどん地方へ足を伸ばし、どんどん深みにはまっていっている。あるとき彼女はドキュメンタリー映画『台湾萬歳』の酒井充子監督と共に台湾本島の南東沖に浮かぶ離島・蘭嶼(らんしょ)を訪れた。蘭嶼は先住民族のタオ族が暮らす島だ。台湾東海岸の緑がかった青い海と満天の星空を見た安村さんは「ここはこの世の天国だ」と感じたそうだ。その旅で出会ったタオ族の青年はとても美しかった。安村さんは、ジェリー・イェンにちょっと申し訳なくなるくらいその青年に見とれてしまったという。安村さんは思い切って、一緒に写真を撮ってもらえないかお願いしたそうだ。するとタオ族の青年は快く応じてくれた。彼が安村さんの目を引いた理由は、何もそのルックスだけではないだろう。生まれて30年、一度も台北に行ったことがないという青年の純朴さではないだろうか。

また、安村さんはタクシーをチャーターして台湾最南端の県・屏東県にある秘境「霧台郷」へ行ったことがある。目的は、石を平たく切り取って重ねた「石板屋」という伝統的な先住民族の家屋を見に行くことだ。集落には石板屋のほかに美しい教会もあった。後に安村さんは教会と台湾先住民族の関係を研究することになる。

台湾最南端の県・屏東県にある「霧台郷」の教会(安村美佐子さん提供)
台湾最南端の県・屏東県にある「霧台郷」の教会(安村美佐子さん提供)

それまで安村さんが知っていた台湾の先住民族と言えば魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督による『セデック・バレ』くらいだった。だが安村さんは先住民族に関する資料や文献を読んで以来、先住民族が培ってきた文化・精神に強い関心を持つようになったのだ。安村さんは片倉佳史さんの妻で作家の片倉真理さんと共にサイシャット族の祭り「矮霊祭(パスタアイ / こびと祭り)」に参加したことがある。祭りでは3日連続で踊り続ける。パスタアイが終わると、一同は列車に乗って南の島のリゾート地「小琉球」へ「焼王船」の儀式を見に行く。 焼王船とは、屏東県の東港で行われる奇祭のクライマックスで行われる儀式で、船を燃やし「王爺」という神を天に送り返すというものである。パスタアイは2年に一度、 焼王船は3年に一度執り行われる。この年は2つの祭りが同じ年に行われるタイミングだったのだ。安村さんは2020年10月のパスタアイにも参加したいと話していた。

新型コロナウイルスの影響により安村さんの台湾への旅は止まったままだ。彼女が最近よくすることは、雑誌の台湾特集を見て、「脳内台湾旅行」をすることである。ミスタードーナツで販売されている「台湾果茶」を飲み、台湾のものが売っていないかセブン・イレブンを物色し、スーパーで台湾産の果物を探す。こうして「台湾ロス」の心を慰めているのである。

東京新宿の台湾料理レストランで料理を味わう安村美佐子さん(筆者撮影)
東京新宿の台湾料理レストランで料理を味わう安村美佐子さん(筆者撮影)

バナー写真=日本のスーパーマーケットで見掛けた台湾パイナップルを、うれしそうに教えてくれる安村美佐子さん(筆者撮影)

この記事につけられたキーワード

台湾 旅行 新型コロナウイルス 哈台族 哈日族

このシリーズの他の記事