早く台湾に行きたい!新型コロナで日本の台湾ファン「哈台族」に台湾ロスの危機

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新型コロナウイルスの世界的な流行により、現在、各国間の往来が制限されている。台湾でも外国からの入国はほとんど緩和されておらず、日本と長期にわたり自由な往来ができていない状況だ。そのため、これまで定期的に台湾旅行を楽しんでいた台湾ファンの間に「台湾ロス」が広がっている。

アイドルと台湾人の笑顔で元気をチャージ

実は、安村さんはベテラン哈台族であるほかに、「台湾アイドルの追っかけ」という顏も持つ。彼女はアジアに旋風を巻き起こしたアイドルグループF4のメンバーであるジェリー・イェン(言承旭)の大ファンなのだ。きっかけは、2001年の訪台時にホテルでたまたま台湾版・花より男子こと『流星花園』のドラマを見たこと。安村さんは、まだ言葉はよく分からなかったというが、すぐに劇中に登場するF4の面々に魅了されてしまった。この『流星花園』は2003年に日本でもリリースされた。改めて日本語字幕で『流星花園』を見たと安村さんは、すっかり同作に夢中になり、何度もレンタルDVDを借りたそうだ。そのはまりぶりは、レンタルDVD店のスタッフから「もう買ってしまった方が安くつきますよ」と言われるほどだったという。

当時、日本では韓流ドラマ『冬のソナタ』が流行していた。日本のマダムたちが「ヨン様」ことペ・ヨンジュンに熱狂していた頃だ。安村さんはそんな世の中の流れとは別に、『流星花園』に出演するジェリー・イェンに夢中になっていった。『流星花園』を通し、F4は日本でも人気が出てきたが、意外なことに安村さんはファンクラブには入っていなかった。ファンクラブがあることを知らなかったのだ。しかし、ある日、安村さんはたまたま新聞でジェリー・イェンの来日情報を知る。出勤前だったが、安村さんはすぐに電話をして、幸運にも横浜で行われるイベントのチケットを購入することができたのだった。

安村さんはこう振り返る。会場でジェリー本人を見たとき、心から「地球上にこんなに素敵な人がいるなんて」と思ったそうだ。こうやって、安村さんはまた新たな「アイドルの追っかけ」という沼にはまっていった。ジェリーのファンクラブや応援団に加入し、台湾にまでジェリーを追いかけに行くようになったのである。安村さんは強調する。こうなったのも元をたどれば、あの初めての台湾で受けた親切のおかげだ、と。

今でこそ2011年の東日本大震災の際、台湾から日本へ多額の義援金が送られたことを多くの日本人は知っている。だが、当初はメディアも日本政府もそのことに触れることはほとんどなかった。安村さんは、日本で大きく報道される前に台湾からの義援金のニュースを知り感動していたという。

そんな中、百貨店の高島屋は、海外の店舗を通して各国による被災地支援に対する感謝広告を出していた。だが、高島屋の台湾の店舗では感謝広告が実施されなかったというのだ。当時、横浜高島屋で働いていた安村さんは、すぐに部長に抗議しに行ったそうだ。そこで判明したのは、部長は台湾から義援金が送られたことを知らなかったということだった。

日本人の「世界最大の義援金を送った台湾へ感謝の気持ちを示そう」という動きは、民間から始まった。日本人有志が立ち上げた「謝謝台湾計画」では、台湾の新聞に感謝広告を出すためにSNSで寄付が募られ、台湾の主要2紙に「ありがとう、台湾」と記載された広告が掲載された。安村さんはその広告を印刷してポスターにし、台北のランドマークタワー「台北101」に向かったそうだ。台北101で行われていた時計展のPRのためにジェリー・イェンが来場していたのだ。安村さんら日本のファンはポスターを取り出し、ジェリーに向かって上層階から振って見せたのである。彼女らの存在に気付いたジェリーは、手をあげてサムズアップをして見せた。その一連の様子はメディアのカメラにとらえられ、新聞とテレビで紹介された。

「ありがとう、台湾」と記載された広告を印刷して作られたポスター(安村美佐子さん提供)
「ありがとう、台湾」と記載された広告を印刷して作られたポスター(安村美佐子さん提供)

実は、2001年に安村さんは離婚を経験している。「この年になっての離婚は気落ちするものでしょう」と安村さんは話す。しかし、台湾とジェリー・イェンがいれば彼女は元気なのだという。安村さんにとって台湾人とジェリー・イェンの笑顔が最大の救いなのだ。考え方を変えれば、離婚したことで自由な時間を得たとも言える。自由に台湾に行ける。安村さんは台湾への独自の旅行計画を立て始めた。そんな風に頑張る自分の姿を見ると、安村さんは以前より自分のことを好きになった気がしたという。

ジェリー・イェン(言承旭)の大ファンでもある安村美佐子さん。台湾メディアに登場したこともある(安村美佐子さん提供)
ジェリー・イェン(言承旭)の大ファンでもある安村美佐子さん。台湾メディアに登場したこともある(安村美佐子さん提供)

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