コロナ禍の今だからこそ注目したい台湾の公園革命——みんなで育てる公共空間

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中村 加代子 【Profile】

新型コロナウイルスの登場で、感染リスクが比較的低いとされる屋外の公園が、新しいレジャーのパートナーとなりそうだ。お隣の台湾では、近年、ユニークな公園が続々と誕生している。子どもから大人まで引きつけるその魅力は何か、また、なぜそのような公園を生み出せたのか、台湾の事例から、コロナ禍における公共空間の在り方を探る。

移行期ゆえの課題も浮上

台北市から始まった公園再生が台湾各地に波及するなか、徐々に課題も見えてきた。

台北市の公園路燈工程管理處・南港公園管理所で股長を務める許耀仁さんによれば、これまでにない新しい遊具に対して「危ない」と感じる保護者が少なくないという。

たとえば複数人で遊べる回転遊具は、大きな子の回すスピードについていけず、小さな子が振り落とされてしまうことがある。ターザンロープに至っては、そもそも正しい使い方が分からないという声もあった。こうした声には、ガイド動画を作成したり、休日に遊び方教室を開いたりして対応しているという。

新しい遊具は維持管理にも手がかかる。既製品からオーダーメードに変えたり、挑戦性の高い遊具を導入したり、使用頻度が上がったりしたことで、よりきめ細やかなメンテナンスが必要となった。

メンテナンスのため、使用が禁止された南港公園のターザンロープ。自力で体を支えられない人や、体の小さな子どもでも遊べるよう、ベルトがついている(筆者撮影)
メンテナンスのため、使用が禁止された南港公園のターザンロープ。自力で体を支えられない人や、体の小さな子どもでも遊べるよう、ベルトがついている(筆者撮影)

公園が評判になり、多くの人が押し寄せるようになると、駐車場やトイレの不足問題も起こる。先の古鐘楼公園も、オープン当初、予想をはるかに上回る人出があり、周辺に車の行列ができたため、慌てて駐車場を整備したという。

そして、誰しもを包摂する「インクルーシブ」を標榜(ひょうぼう)しながら、青少年をうまく取り込めていないことが目下の課題だ。スケートボードやパルクール、ボルダリングなど、青少年が体を動かせる設備もつくれればと考えているそうだが、台北市では今のところ実現には至っていない。

許さんは、「今はまだ過渡期。外国から入ってきたインクルーシブの概念をローカライズしながら、周囲の人たちと一緒に公園を育てていく必要がある」と語る。 

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中村 加代子NAKAMURA Kayoko経歴・執筆一覧を見る

ライター、翻訳者。東京生まれ。台湾人の母と、台湾人と日本人の間に生まれた父を持つ。谷中・根津・千駄木界隈の本好きの集まり「不忍ブックストリート」実行委員。台湾の本に関する情報を日本に発信するユニット「太台本屋tai-tai books」メンバー。訳書に『台湾レトロ氷菓店』がある。

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