コロナ禍の今だからこそ注目したい台湾の公園革命——みんなで育てる公共空間

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中村 加代子 【Profile】

新型コロナウイルスの登場で、感染リスクが比較的低いとされる屋外の公園が、新しいレジャーのパートナーとなりそうだ。お隣の台湾では、近年、ユニークな公園が続々と誕生している。子どもから大人まで引きつけるその魅力は何か、また、なぜそのような公園を生み出せたのか、台湾の事例から、コロナ禍における公共空間の在り方を探る。

市民の声でつくられたユニークな公園の数々

たとえば、台北市がインクルーシブ遊戯場のモデルケースと位置づける花博公園は、車椅子や義足の利用者、弱視者など、さまざまな障害を持つ人たちの意見を集めるところから始めた。それをもとに、車椅子のまま乗れるブランコ、段差のない砂場と手洗い場、点字の付いた案内板などが設けられた。

また、中央藝文公園の遊戯場をつくる際には、子どもたちを招いて、7回ものワークショップが開かれた。士林夜市に程近い前港公園は、近隣住民の声をデザインに生かすべく、オリジナルの遊具を地元メーカーにオーダーした。ひときわ目を引くシンボルツリーは、暗くなると発光する仕掛けまで付いている。

中央藝文公園のワークショップの様子。スペシャルニーズの子どもたちも参加している(筆者撮影)
中央藝文公園ではワークショップの様子をパネルにして展示。スペシャルニーズの子どもたちも参加している(筆者撮影)

それぞれの場所の文化や歴史を踏まえ、地元のアーティストらにデザインを依頼した公園もある。

周辺に自動車部品を扱う町工場が集まる建成公園は、遊具のてっぺんに工具のモチーフが飾られ、人工芝に歯車の模様が描かれた。

朝陽公園があるのは、服飾材料を売る店が多く、「ボタン街」という異名を持つ場所。また老舗のお茶問屋が集まる迪化街も近いことから、目や背中はボタン、耳は茶葉というライオン型の遊具がつくられた。遊具がその街を知るきっかけになるのが面白い。

周辺に町工場の多い建成公園のすべり台は、てっぺんに工具のモチーフが付けられている(筆者撮影)
周辺に町工場の多い建成公園のすべり台は、てっぺんに工具のモチーフが付けられている(筆者撮影)

公園の利用者は子どもだけに限らない。

南港公園は遊戯場をリニューアルする際、公園で囲碁や将棋を楽しむ人たちのための東屋(あずまや)、運動に訪れる人たちのためのジョギングコースとサイクリングコースも一緒に整備した。

また、桃園メトロ空港線をテーマにした新北市の楽活公園には、本格的なトレーニングのできる健康器具が設置され、好評を博している。

南港公園の東屋は囲碁や将棋を楽しむ人たちが集う憩いの場になっている(筆者撮影)
南港公園の東屋は囲碁や将棋を楽しむ人たちが集う憩いの場になっている(筆者撮影)

桃園メトロ空港線の車両が空を飛んでいるかのような楽活公園の遊具。中には吊り革や運転席がある(筆者撮影)
桃園メトロ空港線の車両が空を飛んでいるかのような楽活公園の遊具。中には吊り革や運転席がある(筆者撮影)

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中村 加代子NAKAMURA Kayoko経歴・執筆一覧を見る

ライター、翻訳者。東京生まれ。台湾人の母と、台湾人と日本人の間に生まれた父を持つ。谷中・根津・千駄木界隈の本好きの集まり「不忍ブックストリート」実行委員。台湾の本に関する情報を日本に発信するユニット「太台本屋tai-tai books」メンバー。訳書に『台湾レトロ氷菓店』がある。

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