絶望の過去を持つ国ルワンダの強さ――コロナ禍で見えてきたもの

国際

ルワンダというと、1994年の大虐殺(50万~100万人の国民が犠牲になったジェノサイド=大量殺戮)の記憶も残る一方、最近ではICT(情報通信技術)産業で発展する「アフリカのシンガポール」というイメージも強いかもしれない。実際はまだまだ貧困層が多数派を占めるが、新型コロナ禍で人々の暮らしはどう変わったか。ルワンダに子連れ移住して5年の日本人女性が外国人として現地で暮らす傍ら、自身が経営する飲食店で働くルワンダ人との関わりを通してコロナ禍で見えてきたものとは。

厳重な警戒態勢の中、通勤するスタッフの奮闘

外出禁止令が発令されると、この警官たちが非常に厳格に取り締まりを行う。当店のスタッフは外出が許可されている“essential service(生活必需サービス)”従事者に該当するが、それでも徒歩で通勤中、何度も呼び止められた。
社員証を見せたり、コックの制服を見せたり、あの手この手と使いながら、また、時には迂回(うかい)しながら2時間以上も歩いて、なんとか店にたどり着くような日もあったし、たどり着けないこともあった。

彼らには、くれぐれも決して無理はしないようにと念を押していた。なぜなら、普段から警察と軍は絶対的な存在だからだ。実際、警官の取り締まりを受けた際に歯向かった若者が警官に射殺されたという報道もあったほどだ。

徒歩通勤で警察の規制を受けながらも、出勤できているスタッフはまだラッキーな方だ。普段バスを乗り継いで来るようなスタッフはさすがに出勤ができない。
外出禁止令の条項にさらっと「全員“work from home”」と盛り込まれていたが、そもそもリモートワークが機能するような職に就けているルワンダ人が全体の何パーセントいるのだろうか。

日々、お客さんを乗せて日銭を稼いでいるようなバイタクの運転手や、そうしたバイタクに乗って買い出しに行き、それを売って得た薄い利鞘(りざや)で日々生活しているような人々が大多数であり、彼らが突然、困窮する状況になったのは想像に難くない。

その頃の日本はまだ緊急事態宣言が出る前で、リモートワークが推奨されていたものの、多くの人がまだ満員電車に乗って通勤しているような状況。日本の物流やインフラは、一度外から見てみると、奇跡としか言いようがないほど完璧だが、なぜかスーパーでは買い占めが起きている。ルワンダとは何もかもが違う。

ルワンダではそもそも買い占めができるお金を普段から持っていない人がほとんど。外出できないとストレスがたまる、という次元ではなく、日銭が止まって今日明日、自分と家族が食べる物に困る人が珍しくない状況なのだ。それでも国民はじっと耐え、政府の方針が出たら従う。それ以外の選択肢もない。

取り締まり中の警察。4月からは、タブレット端末で事前外出許可申請をチェックする体制に(筆者撮影)
取り締まり中の警察。4月からは、タブレット端末で事前外出許可申請をチェックする体制に(筆者撮影)

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