明暗分かれる東南アジア、対策効果のマレーシアと苦戦するインドネシア、シンガポールーー日本人「ロックダウン」体験記

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新型コロナウイルスの脅威にさらされているのは中国と経済交流や人的往来も活発な東南アジアも例外ではない。もともと東南アジア諸国連合(ASEAN)として一体な面もある地域だが、コロナ対策ではそれぞれが独自の道を歩む。マレーシアではいち早く厳格な都市封鎖型の対策を講じて効果を上げており、生活する多くの日本人も戸惑いながら現地流の対策に適応している。

サバイバルゲーム?

「まるでハンガーゲームのようだ!」

これは、シンガポールと国境を隣接するマレーシアの都市、ジョホールバルに暮らす女性がツイッターに投稿した文言だ。ハンガーゲームとは、2012年に公開された米国のSFアクション映画で、未来の独裁国家を舞台に、テレビ中継の下で最後の一人になるまで残酷な殺し合いを繰り広げるサバイバル・ゲームの大ヒット作だ。

ジョホールバルには、日本企業も多く進出し、日本人駐在員や母子留学の日本人親子なども多く暮らす。「ハンガーゲーム」の舞台のようだとは、いささか大げさな表現にも感じられるが、彼女が投稿した動画を見ると、そうとも言い切れないことが分かる。防護服に身を包んだ顔の見えない2人の人物が、住民に配るための生活物資の入ったボックスを置いて去っていく様子が映されており、この世界の出来事とは思えない。

マレーシアの都市ジョホールバルに暮らすintan nurdiyanaさんは、活動制限令の強化地域に指定されたエリアにおける食糧配給などの光景を映画“ハンガーゲーム”に例えた

実は、彼女が住んでいるエリアは“レッドゾーン”として指定されていた地区なのだ。マレーシア保健省は、感染の危険性に応じて、レッドゾーン(41以上の陽性反応症例が出た地域)、オレンジゾーン(21から40の陽性反応)、イエローゾーン(1から20の陽性反応)、グリーンゾーン(陽性反応の症例なし)とすみ分けを行っている。地域内で患者数が40人を超えるとレッドゾーンと見なされ、政府が集中的に消毒作業を行い、監視が強化される。レッドゾーン内で、急な感染拡大が生じた際には、現在発布されている「強化された活動制限令(EMCO)」が適用され、その地域への出入りは警察と軍により完全に封鎖され、住民の外出は一切許可されない。生活必需品や食料は配給制となり、住宅から“ソーシャルディスタンス”を取って路上に置かれたものを受け取る、という徹底した厳戒態勢が敷かれるのだ。

「ハンガーゲームのよう」と表現した女性はまさにこの地区に住んでおり、その厳戒ぶりをSNSで発信したわけだが、厳戒態勢はなにもEMCOが敷かれたエリアに限ったことではない。

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