GWは石垣島の星空を満喫(ただし家で!): 天文台が南十字星モニターを公開

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沖縄県石垣市にある石垣島天文台がホームページ上で「南十字星モニター」を公開し、全国の天文ファンらの人気を博している。同天文台から撮影した南十字星をほぼリアルタイムに観察できるもの。南十字星のインターネット中継は全国初の試みだ。ちょうどこれから5月が見頃となる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて外出自粛が続く中、今年のゴールデンウイークは自宅で南国の星に癒されてはいかがだろうか。

南十字星観測に最適な八重山地方

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも登場する南十字星。正式名称は「みなみじゅうじ座」で、4つの星が十字状に星座を成している。国際天文学連合が定める88星座の中で最も小さいが、南半球では大航海時代より天の南極を探す手がかりとして重要な存在で、オーストラリアやニュージーランド、ブラジルなどの国旗にも描かれている。

ただ、赤緯マイナス63度と天球上の低い位置にあるため、日本で南十字星が見られるのは、北緯27度より南の石垣島を含む八重山諸島などに限られる。中でも、前勢岳(まえせだけ)の山頂に立つ石垣島天文台は、絶好の観測ポイントだ。

市街地の夜景と南十字星(南十字星を分かりやすく表示するために点線を追加している)
朝焼けに浮かぶ南十字星(南十字星を分かりやすく表示するために点線を追加している)

2006年に開設した石垣島天文台は、自然科学研究機構国立天文台、石垣市、石垣市教育委員会、NPO法人八重山星の会、沖縄県立石垣青少年の家、琉球大学の6者の連携によって運営される新しいタイプの天文台。九州・沖縄では最大の口径105センチの光学・赤外線反射式望遠鏡「むりかぶし(※1)望遠鏡」を備え、太陽系天体などの観測研究を行う一方、施設見学、天体観望会などの広報普及活動にも力を入れている。

国内最大級200インチのスクリーンで宇宙を立体的に見ることができる4D2U(4次元デジタル宇宙)シアターが家族連れに人気だが、「南十字星モニター」も「もっと多くの人に南十字星の魅力を知ってもらいたい」との願いで発案された。

南十字星を観光資源に町おこし

「石垣市では昨年、全国の自治体に先駆けて『市の星』を制定しましたが、それも南十字星。南十字星は市民に広く親しまれているだけでなく、旅行者からも『憧れの星が国内で見られる』と脚光を浴び、観光資源としても注目されています。ところが、実際鑑賞するにあたってはクリアしなければならない問題がありまして……」と語るのは、国立天文台の特任研究員で石垣島天文台の施設責任者を務める花山秀和さん。

「というのも、一般の人にとっては、そもそも星がある位置を見つけるのが難しいのです。南十字星の4つの星すべてが見えるのは12月頃~6月頃で、その頃は南の空の水平線の上、高度約9度の範囲に現れますが、周りに目印になる星がありません。また、一番下のα星は水平線スレスレにあるため、障害物があると見えませんし、高度が低いところは雲や霧がかかりやすく、すっきり晴れた時でないとなかなか見えません。では、どうすれば南十字星をもっと身近に感じてもらえるか。いろいろ考えた末、天文台のベランダにカメラを常設し、24時間インターネット中継することを思いつきました」

ハイテク天文台の“手作り感”が魅力

予算がないため、カメラやレンズ、サーバーとなるパソコンなどの機材はすべて同天文台の“お古”。唯一かかったコストは、カメラを支えるステンレスの台を購入した1万円。まさに手作り感満載だ。

「お金をかけなくとも、寄せ集めの機材でも、アイデアと情熱さえあれば、南十字星のことをより広く知ってもらえる。そして天文ファンにも喜んでもらえる」。花山さんの思いは通じた。1月に公開を始めて100日間でアクセス数は10万件。1日平均1000件と予想以上のアクセスがあるという。

人気の理由は、ファン目線に立ったサイト運営。総合情報的なサイトを目指し、たとえば南十字星の毎日の南中時刻(天体が真南を通過し最も高い位置に昇る時刻)も表示している。

「南中時刻の前後1時間くらいが見頃です。ちなみに5月は午後9時~10時。出入・南中時刻は1日約4分早くなるため、6月中旬以降は日の入りより前に南中し、徐々に見えなくなります。逆に12月下旬以降は、日の出より前に南中し、徐々に見えるようになります」

これまで100日間で実際に南十字星が見えたのは15日。15%の確率だが、過去2週間分の動画をまとめたものも公開するなど、ファンの期待に応えるよう努めている。

「サイトの内容は、できるだけ多くの人の意見を取り入れて少しずつ充実させています。写真を撮りたい人には撮影条件が分かるように、南十字星を見に訪れたい人には観察計画が立てやすいよう工夫しています」

南十字星の見頃は12月頃~6月頃。それでは7月以降はどうするのか。花山さんにはアイデアがある。それは「天の川モニター」への“転向”だ。

石垣島天文台の上空を流れる天の川
石垣島天文台の上空を流れる天の川 ©NAOJ

「石垣島では21個ある一等星の全部を見ることができ、全88星座のうち71まで完全な姿で見ることができます。観測できる星の数は日本一ともいわれますが、天の川の景観も国内屈指。緯度の関係で本土よりも太くて濃い部分が見え、しかも街明かりが少ないためクオリティーの高い光の帯が楽しめます」

4月13日、ついに石垣島にも新型コロナウイルス感染者が確認され、同天文台も当分の間、閉館となった。

「ゴールデンウイーク中に、4D2Uシアターや天体観望会を楽しんで頂けないのは残念ですが、南十字星モニターでは、ケンタウルス座のα星やβ星など東京では見られない一等星や市街の夜景、昼間は美しい海も楽しめます。少しでもリラックスしてもらうことができたら嬉しいです」と花山さんは話している。

日中は青い海と空に思いをはせて深呼吸!
日中は青い海と空に思いをはせて深呼吸!

※詳細は、公式ホームページを参照。

バナー写真 : 南十字星(バナー、文中写真いずれも国立天文台提供)

(※1) ^ 漢字では「群か星」。八重山地方の方言でプレアデス星団(スバル)のこと

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